にんにん

んー陰キャからの恋愛小説だと思います。

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最近の記事

負け癖

 新チームの始動は良好で、守備が安定しているため強豪チームに一歩も引かず、よい雰囲気だと思われた。監督がどう思っているかは分からなかったが。  守備はシャットアウトしているもののなかなか点が取れず勝ち切れない引き分けの試合がしばらく続いた。そんなある日、私は事故に遭い、しばらく離脱を余儀なくされた。  私のいないチームは無惨なほどに守備が崩壊して全く勝てなくなった。  私が復帰すると守備がまた安定したものの攻撃は相変わらずさっぱりだった。今で言うボランチの役割をしていた私

    • 新チーム始動

       中学2年になり3年が卒業すると否が応でも新チームのレギュラーとして試合に出るようになった。ポジションはセンターバックだったが‥‥。攻めの組み立てが出来ないけど一対一が強かったからなのだろう。ちなみに最近のサッカー漫画を見るとどうも左サイドハーフに適性があったみたいだ。  新チームには全く期待できるような要素もなく、まともなレギュラーがあまりいなかった。部員が多くてもなかなか人材が集まることは難しいようだ。半分が1年生だった。守備は左サイドの1年生をフォローしながらという形で

      • 西日本大会

         選抜騒動があったりしてぐだぐだしていたが、小学生として最後の思い出作り大会に実は出ることになっていた。もっと早く言えよ。ちなみに3年前は優勝した。上の世代だから知らん…とはならない。もうU-15の試合に出てるから。しかしメンバーがかなり落ちているので優勝するのはなかなかタフそうだ。  予算がないので当日朝5時に出発し、着いたらすぐ試合というよく考えたら無茶苦茶な日程だった。決勝まで勝ち残る前提で泊まりの予定となっていた。  休憩を挟んで朝9時に着いたが、試合は11時からだっ

        • 失望

           初日からいきなり飛ばしてしまったわけだが、先輩受けは良かったようで、レギュラー練習に混ぜてもらえるようになった。しかしこのチームはきれいに役割分担がされており、どうも自分の居場所はないんじゃないかという気がしてならなかった。ほぼ全てのプレーに約束事があり、それをみんなで忠実に守って運用している感じだった。個人の技術はそこまででもない感がした(から無理やりゴールに捩じ込む技術に驚いたのかな)が、集団としてのまとまったプレーはだいぶ洗練されていた。そして全く興味がなくて知らなか

          中学入学

           中学校に入学し、トレーニングパートナーがキャプテンをしていたサッカー部に入った。一応、存在はうっすらと知られていたようだ。  「よし、じゃあ1年生は球拾い!」 初めて入るまともなサッカー部。右も左もわからず知り合いもいないため、郷にいれば郷に従え。ボールボーイ生活が始まった。クラブのU-15で普通に試合をしていたことを誰も知らない。卒業したキャプテンよりも上手いことはまともな練習に参加することがないので誰も気づきようもなかった。  陸上部の女の子に話しかけられておしゃべりし

          しくじり

           まっさらな新天地。私のことは誰も知らない(それもどうかとは思うが)。しかしそこでは部活に入らなければならなかった。野球をやりたいがお金がかかる。バスケットボールも得意だったが陽キャでないといけない気がして気が引けるし最近やってない。テニスをしたいけどたぶんラケットを買ってもらえない。陸上部はちょっと興味がない。  「そういえばなんかスポーツやってた?」 あー、サッカーかな…と言った途端に  「よし、それじゃサッカー部に一緒に行こう」 なんと彼はサッカー部だった。  まあな

          メンタル

           選抜からの追放劇はやはりどこか心に引っ掛かるものがあった。何よりも自分が必要とされない、監督やコーチ全員から腫れ物のように扱われていることが気になった。全国大会は惨敗したらしい。参加した子からはエースがいなくて点が取れなかった、セカンドボールを拾えるやつがいなかったと後々まで文句を言われたが、私は拒否された方である。  様々な行事を経て、新チームに移行することをみんな意識し始めた。そうなると私の存在はすっかり浮いてしまい、何をするにも手加減をしなくてはならなくなった。特にボ

          追放

           選抜チームに推薦され、全国大会優勝を達成するべく夏休みに練習会が開かれた。すでにU-15に合流していたため、モチベーションはあまりわかなかった。  私としては推薦者に気を遣って終止無難なプレーを心がけた。特に可もなく不可もなくやれたと思っていた。 初日が終わり、帰り支度をしていたのだが監督が帰ってこない。勝手に解散することはできないので1時間以上もまっていたが、それは他のチームの子も同様だった。  みんなの体がすっかり冷えた頃に憤然とした表情で監督は帰ってきて、みんなで

          ダメ出し

           サッカー経験中学までで、全国大会出場者の多数いるチームに入れてもらって活動をしていた。骨折の影響はさすがに大きく、セカンドボールには最初にタッチできるもののなかなか得点を奪うことができずスタメンから外れていた。チームはかなり強かった。  常に何となくふわっときて、すずーっと行って、ドスンと決めてきたので自分では全く修正が利かない。いけたかと思うとゴールポストに当たっていた。そしてセカンドボールは触れるのだがパスがなかなかもらえない。  ある日の試合は後半からの出場で、ボ

          認知

           春に新人戦があったものの初心者で試合がうまくいかないチームはバラバラであり、参加したのが10人だった。特別に1人借りて試合にオープン参加していいことにしてもらった。借りられたのはエース間違いなしの隣の学校の1個上のMFの清水さんだった。  私はCFのポジションで、ツートップのような形になった。だいたいの試合の流れは頭に入ってくるのだが、その人の位置情報が微妙にズレるのである。気をつかうところもあり連携がなかなかうまくいかなかった。  「おーい、お前ももう立派に県を代表するエ

          変化

           前回の試合で得た体験は何かを変えた。ガンダム世代なら、ニュータイプと出会った時みたいな感じとしか形容し難い。言葉ではうまくあらわせない。  試合の展開がどういうわけか頭に入るようになり、動きがスムーズになったところで6年生が抜けた。5年生は本当に初心者しかおらず、なかなかチームの形ができるのに苦労しそうだった。  そんな中で新しい感覚が目覚めた。私は体のことを知るのも重要だと思っていたため図鑑や本などを図書館で借りて読むことにした。一通り読み終えた頃には体のつながりが意識

          リベンジ

           さて、転勤でレギュラーが抜けたり監督が変わって戦術がバラバラなまま全国に行き、流石にそのままで全国の強豪とは渡り合えなかったが秋には何とかチームは立て直され、リベンジをしようということになり、遠征に出かけた。  相手もその辺りはよく練習をしており、一進一退の攻防が続いてたが、我々のチームの連携がスムーズで2-1でリードしたまま後半戦に突入した。そこで事件は起こった。  味方のセンターバックがボールに向かったところで突然、アニメのように一瞬、辺りが真っ暗になった。  (来る…

          全国大会

           4年生でレギュラーとなり、初めての全国大会に行った。しかしそれが最初で最後の大会となった。  当時は11人制だったので現在とはかなり事情が違っている。  監督がいなかったのが、4月から昔サッカーをやっていたという人が監督をやってくれることになった。新チームになるとレギュラーのFWとして私は起用されるようになった。もちろん、チームを引っ張っていく立場ではなく序列としては真ん中からやや下くらいだった。持久力がチームで2位だったのとフィジカルコンタクトは1番強かったため抜擢され

          8歳年上の女性だった(3)

           秋の夕暮れ、どっぷり暮れるようになるのは早かった。比較的穏やかで暖かい天気が続いたが、17時のアナウンスが流れる頃にはすっかり暗い。ドラマのような出来事から、少し現実に近づいたのだけど、まだまだ遠いお話のように感じられた。  今とは違い、気軽なメールやメッセージアプリもなかった時代。連絡はそんなにできないし、夜に実家に電話をするのは勇気が必要だった。講義と実習が終わるとお姉さんの仕事は終わって携帯の電波は届かない。それならばと最初にお出かけしてから次の週の土曜日にまた電話を

          8歳年上の女性だった(3)

          8歳年上の女性だった(2)

           秋になると必修で大変な講義も特になく、しばらくの間は体を動かすだけで日々が過ぎていった。穏やかな天気が続いて朝の空気は肺に痛いほど吸い込まれてくる。  そんなある日、午前の講義が終わってご飯を食べに部屋に戻ると1通の封筒が届いた。A子、とあった。誰だろう?と一瞬おもったが、あ!と不意に体のリズムが高鳴っていった。あの子だ。  封筒を開けると、中にはお金が入っていた。それと2枚の手紙が。お礼をするのでお電話待ってます!と書いてある。書いてあるのだが•••。どうするべきだろう。

          8歳年上の女性だった(2)

          8歳年上の女性だった(1)

           暑い夏が過ぎ、秋になる。簡単にいうけどそこまで大変だったんだ。夏休みを目一杯使った試験という闘いを終え、敗北を思い知った。夏。お盆も過ぎても虚無に満ちていた。家族が、どこにもいない。この思いを抱えきれないまま、今年も1人でまた大学に戻るのだ。もう少し秋は待ってくれてもいいはずだ。  早い終電を迎えた電車はもう席も埋まって座るところはない。本数が少ないだけあってここだけ山手線のようだ。真っ暗な窓に映る光が徐々に減っていき人の営みが遠のいていく。トンネルを抜ければきっとそこはも

          8歳年上の女性だった(1)