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「変態=脱皮」

前回のポストの続きになります。

料理を教わっていた女性と入れ替わりで、他の居酒屋で働いていた男性(=以後Tさん)がお店に来てくれました。

前回のポストにも書きましたが、僕が本格的なイタリアンを作って提供する事が難しいと判断し、店名も変えて「和を中心とした居酒屋」へ業態変更。

ソースなどは作れる状態でしたので、残すもの、アレンジを加えるものなどを選別しメニューの再構築を行いました。

業務変更の目的!?

内装などはそのままで、女性のお客様が多かった為、出来るだけ「オシャレ感」は残す様なメニュー構成を検討していきました。

Tさんに「どんなメニューを加えたら良いですかね?ちょっと考えてみて下さい。居酒屋料理といっても、女性も多いので女性が喜ぶ感じを残しつつ」とお願いした後日・・・

Tさん「考えましたよ!」

僕「何ですか(ワクワク)」

そこには、

鮭とキノコとアルミホイルと味噌とバターが用意されていました。

・・・「鮭のチャンチャン焼きです♪」

・・・・・・・・。

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・・・・・・・・。

「オ、オシャレ〜!?」

時間も無かった為、鮭のチャンチャン焼きはとりあえず保留し、店名や看板の変更を行い、業態変更を進めます。

今回の業態変更も目的を一度整理すると

①自分の作る料理の限界を感じ「居酒屋」さんをより意識したお店作りをする
(イタリアンの食事中心オーダーではなく、お酒の注文を今までよりも増やす)
②女性のお客様が多かった為、普段「フラっと」来てくれる男性のお客さん層の獲得
(でも、既存の女性も楽しませられるメニュー作りは重要)
③ユニフォームの変更
(洋食っぽいサロン姿から居酒屋の前掛けスタイルへ変更)
④お店自身の再出発

こんな感じですが、一番の目的は④の「再出発」でした。

いざ!リニューアルオープン

イタリアン時代から使用していたソース(自家製のコロッケなどに使用)やピザ生地(和風のピザに変更)などは僕が仕込みを担当し、その他諸々はTさんへ仕込みをお願いしました。

メニュー自体も、他のお店には無いメニューを作り上げていました。「作れそうだけど、家庭では作れない」「ん?これどんな味?」をコンセプトに、メニューを見て、楽しめる要素を詰め込んでいましたので、僕自身お客さんの反応が楽しみでした。

リニューアル後、お客さんの数も増え、手応えは中々でした。居酒屋色を濃くしたこともあり、男性のお客様の来店も増えたのですが・・・

男性(40代以上の方)って・・・

カウンター好きなんですよね。というより、一人で落ち着いてカウンターで一人酒が出来る席が無かったのです。ベッドタウンにお店がありましたので、「仕事帰りに最寄り駅のお店で軽く一杯」利用が難しいお店の作りでした。

厨房も見えないお店だったので、OPENキッチン風の作りでカウンターが出来ないか。

地下のお店で、ホールにはダクト(厨房用の換気扇)が付いていなかったので、煙が出ない「無煙ロースター」という、ガスの焼き台を購入。カウンターを造作し、お客さんの前で調理が出来る環境を整えました。

イメージは炉端焼きに近いですかね。

その当時勢いのあった「魚串」(焼き鳥の様に魚を串に刺したもの。一口で食べられるので、色々な種類の焼魚を楽しめる)を中心に干物・野菜をロースターで焼く。

Yさんには既存の厨房で、焼き物以外のメニューの調理をお願いしました。

「人は簡単には変われない」

このポストで書いた様に、接客に苦しみ、握った事も無い包丁を握り「素人料理人」を始めた僕が「カウンター」に立つ事になったのですが・・・

「人は簡単には変われない」

この言葉は間違いがないと思います。

カウンターに一人しかお客様が居ない時、料理を作っている時は良いのですが、何も無く沈黙が訪れると・・・

カウンターから離れ

ホールや厨房をウロウロ

お客さんを残して「無人カウンター状態」

「元気に振る舞わなきゃ」「何か話さなきゃ」「料理美味しいかな」「なんか気まずいな・・・」

どんどん妄想が膨らみ「もうこの状況無理!!」ってカウンターから逃げました。

何の為に業態変更したの?もう辞めてしまえ。

当時の僕に言いたい言葉です。

何をやっても同じ事の繰り返し。そこに「ココロの成長」はありませんでした。

「酒は純米 燗ならなお良し」

これも今思えばですが、お店に何もなかったのかと振り返ると「武器」は無数にありました。
「料理人のレシピ」
「地域の他のお店には負けない内装」「こだわりのお酒」

お酒に関して、僕がお取引頂いたのは、大学生時代にアルバイトでお世話になった店長さんからのご紹介で、本厚木にある酒屋さんでした。

上記のポストでも書きましたが、飲食店の店長同様、酒屋の店主さんもお酒に関しての「愛」を沢山感じました。

飲食店の店長とは、深夜営業後によくお酒を飲みに行っていました。

深夜2時から飲み始め、ビールをチェイサーに、二人で「お酒談義」をしながら日本酒を毎回一升飲み、お店に帰って寝る。

店長のお店はチェーン店のだったのですが、店長はメニューに無いお酒を個人で仕入れ、独自の「日本酒」営業で、コアな日本酒ファンを獲得。チェーン店全体でも、アルコール売上NO.1となっていました。

酒屋の店主さんは、皆さんでも一度は聞いたり、飲んだりした事がある様な「有名な地酒」はあえて扱っていませんでした。

販売すれば、お店自身の売上は当然上がるのですが、売上よりも自分のポリシーを大切にされている方でした。「渋く」「カッコ良い」人柄が、お酒を飲んでいる時も滲み出ている方でした。

「華やかな香りの飲みやすい日本酒」が近年好まれていますが、「お燗でちびちびと。飲み疲れない。じわーっと身体に染み込むお酒」

二人に共通していたのは、「純米酒」を愛するということ。

「酒は純米 燗ならなお良し」

醸造アルコールを添加していない、「米・米麹・水」によって作られた純米酒を、手に持つと火傷をする程に熱い日本酒ではなく、人肌よりも少し温かい「ぬる燗」で飲む事により、口当たりが柔らかくなり、ふんわりとした甘みが口に広がり、お酒に合う料理の幅も広がる。

お酒の吸収も柔らかくなり、白湯と一緒に飲むと悪酔いしにくくなります。

醸造アルコールの歴史は江戸時代からと言われていますが、近年では太平洋戦争戦後の「米不足」に起因していると言われています。

少ない米のお酒に醸造アルコールを加える事で、沢山の量のお酒を作る事が可能となるからです。その他にも、品質の安定をさせること、スッキリとした味わいに仕上げることなどの効果がありますが、「米と米麹と水で作られる日本酒本来の姿」に魅せられた方達でした。

有名な誰しも知っているお酒よりも、「蔵元」との繋がりを大切に、蔵元を思い浮かべながらお酒を教えてくれる、本当にスゴイ酒屋さんにお酒を卸して頂いていました。

それなのに・・・

そういった良さや武器を伝える術を知らなかったんです・・・

言葉を羅列した「日本酒メニュー」を作ってはいたのですが、「思いを伝え切る力」が伴いませんでした。

日本酒好きには、「ここの地酒が好き」とある程度、固まった考え方をしている方がいらっしゃいます。その考えを覆す程の価値を提供出来て、初めて「イイね!」と言って貰えるのです。

日々の努力で知識を蓄え、その努力で得た自信から出る「言葉」の力が二人には遠く及ばなかったのです。動物が生育過程を通して繰り返す「変態」(脱皮)をし成長して行く様に、二人も「お酒」を通じて日々成長を繰り返し、姿を変えて行っているのだと思います。

変態を繰り返して「伝えること」

今も共通して言える事なのですが、商品を売るには「伝える方法」に尽きるのだと思います。

僕個人としては「伝えること」が苦手な事は何回もポストしてきていますが、飲食時代も今のアパレルの仕事に関しても「伝え方」が難しいと本当に思います。(飲食時代は人間性に大きな問題があったと思いますが・・・)

僕の会社で働く皆さんは、父の会社でブランドへの卸しをずっと生業として来ました。

顧客は企業であった為、今一般のお客さんへ自分達の商品を「伝えること」に戸惑いを感じています。

このnote・インスタなどを通じて、少しでも「Path Code」を知って頂ける様に活動をしていますが、まだまだ未熟な所ばかりです。

僕たちは服作りに関しては「プロ」です。生地に関しても、全国の産地でオリジナル生地を作る事も出来ますし、海外の生地を買い付ける事も出来ます。縫製に関しては、国内でもトップクラスの技術を持つ縫製工場で作る事が出来ます。

オールアイテムに対応が可能で、誇れるデザイナーもいます。

負けない自信はあるのに、中々「世に出ること」が叶わないのが現実です。

「そんな簡単に叶うはずがない」

それは十分に承知しています。

その為に、「僕たちらしさ」「僕たちにしか出来ないこと」を深く深く掘り下げて、「伝える努力」と「正しい伝え方」を見つけること。

なんでも出来るけど、「僕たちの本当の価値」を僕たち自身で考え、貫いていくこと。

それが出来るようになるためにも、

居酒屋時代の店長や酒屋の店主さんの様に日々「変態」(=脱皮)をして、ステージを一歩一歩上げて行く成長を目指して行きたいと思います。

いよいよ最終章へ

また話が脱線しましたが、「無人カウンター」の状況から、お店はいよいよ閉店に向かって行きます。

最後になると思いますが、「飲食時代」編最終章を次回ポストします。

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