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転倒恐怖症と運動イメージの関係

▼ 文献情報 と 抄録和訳

転倒恐怖症の高齢者では、歩行の運動イメージに欠損が見られる

Sakurai R, Fujiwara Y, Yasunaga M, Suzuki H, Sakuma N, Imanaka K, Montero-Odasso M. Older Adults with Fear of Falling Show Deficits in Motor Imagery of Gait. J Nutr Health Aging. 2017;21(6):721-726.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的]
転倒恐怖症(FoF)の基礎的なメカニズムを理解することは、潜在的な治療法を広げることにつながる可能性がある。運動パフォーマンスの本質を考えると、運動実行の計画段階の低下がFoFの発現に関連している可能性がある。本研究の目的は、歩行に関連した運動イメージ(MI)を用いて、FoF患者の運動実行における計画・予測精度を評価することである。

[方法]
設定:日本国内の3つの保健所。
参加者:地域在住の高齢者283名を募集し、FoFの有無でFoF群(n=178)と非FoF群(n=107)に層別化した。
測定:参加者は、TUG(Timed Up and Go)テストのイメージと実行タスクの両方についてテストを受けた。まず、被験者に試行をイメージさせ(iTUG)、それにかかる時間を推定させ、次に実際の試行を実行させた(aTUG)。iTUGとaTUGの差(ΔTUG)を算出した。

[結果]
FoF群ではaTUGが有意に遅かったが、iTUGの時間は両群でほぼ同じであり、FoF群では有意に過大評価する結果となった。調整ロジスティック回帰分析の結果、ΔTUGの増加(=過大評価傾向)はFoFと有意に関連した(OR = 1.05; 95% CI = 1.02-1.10)。また、屋外に出る頻度が低いこともFoFと関連していた(OR 2.95; 95% CI: 1.16-7.44)。

[結論]
FoFを有する高齢者は、運動計画の障害を反映して、自分のTUGパフォーマンスを過大評価する。身体能力の過大評価は、この集団における転倒の高リスクの追加的説明となり得る。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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✅日本国内においても、「転倒恐怖感」に関する研究が最近増えている。

整形外科疾患入院患者の歩行獲得早期におけるFalls Efficacy Scale-International(FES-I)の信頼性および転倒恐怖感予測精度に関する検討 (jst.go.jp)

臨床上問題だと感じることは、療法士と患者さんとの感覚の不一致が生じることである。つまり、療法士はバランス評価や歩行評価の結果から、歩行の安定性はある程度担保されていると感じているのに、患者さん自身の転倒恐怖感がかなり強いケースが一定数認める、ということである。
今回の論文は、こうした”不一致”を認めるケースに関して、運動イメージがその要因に一つであることを示唆している。しかも、運動イメージの評価もかなり簡便だ。この”iTUG"に関しては以前にも紹介している。

運動イメージを当たり前のように定期評価する時代も近いかもしれない。

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