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認知症患者に対する身体拘束

▼ 文献情報 と 抄録和訳

認知症患者に対する身体拘束の増加 -新型コロナウイルス禍での変化-

Okuno T, Itoshima H, Shin JH, Morishita T, Kunisawa S, Imanaka Y. Physical restraint of dementia patients in acute care hospitals during the COVID-19 pandemic: A cohort analysis in Japan. PLoS One. 2021 Nov 22;16(11):e0260446.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

✅ 研究者のコメント
身体拘束の実施は必要な場面も多いが、倫理的側面や患者への臨床的なデメリットがあることも事実である。コロナ患者を受け入れている病院では医療スタッフが相応の身体的精神的負担を強いられているため、患者ケアへの影響が起こりえる可能性は大いにあると考えられる。

[はじめに]
コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、世界中の医療スタッフ、特にCOVID-19陽性患者が入院している病院のスタッフに、かつてない困難をもたらした。日本政府がCOVID-19の病院制限を発表したことで、身体拘束の増加など、病院でのケアにいくつかの制限が生じ、認知症高齢者のケアにも影響を及ぼす可能性がある。しかし、COVID-19パンデミック時の身体拘束具使用の影響を実証的に検証した研究は少ない。本研究では、パンデミックに伴う規制の変更が、急性期病院に入院している認知症高齢者の身体拘束の使用に与える影響を評価することを目的とした。

[方法]
2019年1月6日から2020年7月4日の間に急性期病院で認知症ケアを受けた高齢患者(64歳以上)のデータを抽出した。COVID-19陽性患者を受け入れている病院に入院しているかどうかで、患者を2群に分けた。2週間間隔で傾向を比較するために記述統計を算出し、身体拘束の使用の変化を検証するために断続的時系列分析を行った。

[結果]
COVID-19陽性患者を受け入れた病院では、政府発表後に入院患者1,000人あたりの身体拘束を受けた患者数が増加し,発表後73週目から74週目にかけて入院患者1,000人あたり501.4人の発生率が最大となった。さらに、COVID-19陽性の患者を受け入れた病院では、認知症高齢者に対する身体拘束の使用が有意に増加していた(p=0.004)。身の回りの世話を必要とする高齢の認知症患者は、COVID-19パンデミックの間、身体拘束具の使用が有意に増加した。

[結論]
認知症患者に対する身体拘束の増加の原因とメカニズムを理解することは、将来の同様の状況に対してより効果的なケアプロトコルを設計するのに役立つ。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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✅とても難しい問題であると思う。この結果はきっと、”業務量の増加”や”人員不足”も影響しているだろうから、COVID-19パンデミックに限らず生じることも考えられる。さらに、入院患者であるため何かしら転倒リスクがある場合が多い。病院側の責任も加味されるため、問題はさらに複雑になる。

一方で、知っている方も多いかもしれないが、『Alzheimer’s Village』といわれる取り組みがある。以下のサイトを読んで頂きたい。

https://ideasforgood.jp/2018/09/03/nord-architects-alzheimers-village/

もちろん上記のデザインを病院にそのまま持ち込むことは、現状難しいだろう。ただやはりポイントは、”地域全体で認知症患者を支える”ということではないだろうか。その、”支える”タイミングは、患者が退院した時ではなくて、入院中から、何かしらアプローチができれば、いいのではないかと思う。

何度もいうように難しい問題ではあるし、私のように”なんちゃって研究者”でない優秀な方々がこうした問題に真剣に取り組んでいる。もちろん私たち自身がアクティブにできることはした方が良いし、上記のような取り組みに対して、”批判的”でなく、”協力的”な態度で関わっていくことが重要と思われる。

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今回紹介した論文は下記のサイトでも取り上げられています。

【プレスリリース】認知症患者に対する身体拘束の増加 -新型コロナウイルス禍での変化- | 日本の研究.com (research-er.jp)

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医療従事者と研究活動における道徳感についても記事にしていますので良かったら読んで頂けると嬉しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。

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