見出し画像

『茗荷谷の猫』

9つの短編からなる短編集。

江戸時代〜昭和30年代の時間軸の中で、歴史に名を馳せたわけでもない、著名人でもない、(普通の)人々のエピソードが描かれています。

どれも不思議な世界観のお話で、結末がハッキリしないものもあり、一見すると掴みどころのない内容のものもありますが、これがまた面白い。

本書は、物語の起承転結を楽しむと言うよりも、描写や表現・世界観を楽しむという読み方がおすすめ。

短編集によくある「各エピソードの登場人物が直接的に繋がって、最後に総まとめ!どんでん返し!」みたいなこともありません。
が、、、
それぞれのエピソードが、緩やかに繋がっていて、あるエピソードの登場人物の痕跡や消息が、突如別のエピソードの中に染み込んできたりもして、癖になるような展開が待ち受けています。

すごく緻密に計算された作品なのだと思います。
(これ、ドラマ化か短編映画化したら絶対面白いと思います!)


目次
1.染井の桜(巣鴨染井)
2.黒焼道話(品川)
3.茗荷谷の猫(茗荷谷町)
4.仲之町の大入道(市谷仲之町)
5.隠れる(本郷菊坂)
6.庄助さん(浅草)
7.ぽけっとの、深く(池袋)
8.てのひら(池之橋)
9.スペインタイルの家(千駄ヶ谷)

※カッコの中に地名が書いてありますが、これは各エピソードの舞台となる場所で、実際の名所や坂名等が登場します。


個人的には、『隠れる』の世界観がとても面白く、『庄助さん』『てのひら』に切なさを覚えました。

ちなみに著者 木内昇さんの書籍では、『幕末の青嵐』もかなりオススメです。

こちらも、章ごとに主人公が変わる形式になっていて、個人的に時代小説としては新感覚でした。


「茗荷谷の猫」
独特の世界観をぜひ楽しんでみては。

この記事が参加している募集

読書感想文

わたしの本棚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?