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『幕末の青嵐』

数ある新選組を題材に扱った時代小説の中でも、最もおすすめの一冊。

近藤勇が試衛館(天然理心流道場)の4代目師範の時代から、池田屋事件や大政奉還を経て、土方歳三が戦死したと言われる箱館五稜郭の防衛戦(戊辰戦争の最後の戦場)までを描いた小説となります。

■本書のここがおもしろい

時代小説では通例、主人公たる史人にフォーカスし、主人公目線でストーリー展開されていきますが、本書はその主人公が章ごとに変わっていきます。

ある時は近藤勇の視点、またある時は斎藤一・藤堂平助等の隊士、そして時には敵方であった清河八郎等々、様々な史人の視点で物語は進んでいきます。
これがかなりおもしろい。
片側だけでなく、やる側/やられる側、双方の視点が書かれているのです。

かつ本書は、視点が変わりながらも時系を遡ることがないため、とても読みやすい。
(「遡って◯◯年」とか「一方その頃」というのがなく、常に時間軸が先に進んでいる。)

■総論的な主人公は土方歳三

主人公がころころ変わるとは言え、物語は一本筋が通っていて、読んでいて一貫性があります。
それはきっと、物語の中で常に「土方歳三」がキーマンとして扱われているからだと思います。

敵方/味方問わず、物語の中では常に土方歳三の一挙手一投足が取り上げられます。
特にエピローグは、さながら司馬遼太郎さんの「燃えよ剣」の如く。
土方歳三ファンも必見の一冊です。

■最後に

本書は、物語として大変おもしろいのは言うまでもなく、時系列がはっきりしてて、かつ視点が多岐に渡るので、幕末の歴史変遷を理解するのにも大いに役に立ちます。
(若干史実と異なる点もありますが、そこは小説ということで…)

全体の構成は、司馬遼太郎さんの「関ヶ原」に似ているかなと思います。
石田三成をベースに家康をはじめ、各地の藩主の目線でストーリーが展開される辺りが特に。
(あの書籍も1600年前後の歴史を理解するのにとても役に立ちます)

ぜひ読んでみては。

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