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ちょっと思い出しただけ

ミルクレープはミルミル間に僕の口に吸い込まれていった。
確かさっきまでの僕は、大事に大事に時間をかけてチビチビ食べようと決意したはずだ。まぁそんな日もあるさ。
残ったのはたっぷりのアイスコーヒー。気持ち新たにした僕はアイスコーヒーはチビチビ飲みながら本を読んでは窓の外を眺めて人並みを眺める。
駅前には流れるヒト。ヘッドホンをして自分時間を楽しむヒト。待ち合わせをしているヒトとヒト。横には僕と同じように外を眺めるヒト。


映画を観たくなった。ふと思った。”ヒト”のことを撮った映画を観たいと。

映画館で何がやってるか調べる。今の気分の僕に対して訴えかけてくるものはなぜかなかった。まぁそんな日もあるさ。家でNetflixかAmazonPrimeでも観よう。

日が暮れる前、僕はオリジン弁当でお惣菜だけ買い込んで早めに家に帰ることにした。家の冷蔵庫には缶ビールが2缶スタンバイしてくれていることを僕は知っていたからだ。ビールとカラアゲと映画と土曜日の夜のスタートだ。


『ちょっと思い出しただけ』という邦画を観た。
池松壮亮さん、伊藤沙莉さん(役名は忘れちゃった)の自然体のこの感じ。
うんうん。これこれ。“ヒト”のことを撮った映画が観たかったのだ。

僕もちょっと思い出してみることにした。
5年前、あと人と飲み歩いたあの街。待ち合わせしたあの居酒屋。ドライブで行ったご飯屋さん。思い出すのはヒト起点で、浸った、どっぷりと。

それでもイマに戻ってくる。どんなに思い出しても戻れやしない。ちょっと思い出しただけ。

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