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【parkERsの課外授業vol.2】 〜檜原村から学ぶ人と自然の関わり方〜

こんにちは!parkERsブランドコミュニケーション室の森です。

先日こんな記事を書きました。

今では観光地になっている表参道の明治神宮は、実は100年前の人々がつくった実験の場でした。

今回はplants culture caravan 野外版vol.2に参加し、明治神宮の森と檜原村の森を比較して感じたことをご紹介します。

plants culture caravanとは
parkERs プランツコーディネート室のメンバーが、リレー方式で毎月配信している連載コラムのこと。(https://gardenstory.jp/27205
人と植物の間に築かれてきた文化を未来に伝えるという思いのもと、さまざまな考えを綴っています。


檜原村(ひのはらむら)って?

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「檜原村は東京都の西の方に存在する、島を除く東京都唯一の「村」です。」(檜原村観光協会のHP引用)

西多摩地域にあり、parkERsのオフィス(表参道)からは電車で1時間40分くらいでした。電車で移動中、10分ほど仕事のメールを打っていてふと顔をあげると窓に映る風景がガラッと変わっていたのが印象的でした。

今回森をご案内いただいたのは東京チェンソーズさん。檜原村に事務所を構え、森の一部を管理されています。


明治神宮の森 と 檜原村の森 の特徴は?

東京にある2つの森の特徴を見ていきましょう。

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明治神宮の森:もともとは人工林だが今では人の手を介さず自然の森と同じ生き方をしている。

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檜原村の森:自然の森として誕生し、今では人の手が加わることで間伐材を生み出している

ここでわかるのは人が介在するタイミングが違うということです。

明治神宮の森は、人が森を作った。檜原村の森をはじめとする全国にある多くの森は、森があって人の手が加わった。なのでどちらも人の手が、かつてもしくは現在、加えられたということをお伝えしておきます。

この記事では全国の間伐材を生み出す森の中でも、檜原村の森を例に比較していきます。同じ東京に存在する2つの森ですが、この特徴からどのような違いがあるのでしょうか?


檜原村の森 が 明治神宮の森 と異なる点とは?

人の手が加わることで間伐材を生み出している檜原村の森と、今は人の手を介さない自然の森である明治神宮との違いを考えるため、檜原村で出会った印象的なことを3つピックアップします。

1、好奇心あふれる森の小さな工場

森を訪れる前に東京チェンソーズの青木さんが「東京設備機材(有)」を案内してくれました。

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ここでは檜原村の森で伐採した間伐材を、どう加工しどんな製品を作ることで世の中の人へ届けるかを考えています。工場には使い道がまだないけれど一手間加え、使われ方を探している材木がたくさんあり好奇心が刺激されました!

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「木育(もくいく)」のため、子供用の木のおもちゃも作っているそう。

そのほかインテリアに使われる天板として、DJブースのディスプレイとして、檜原村の森からは実に様々な木の可能性が生み出されています。


2、「わたしの木が森になる」

檜原村の森では30年越しの壮大な企画が始まっています。その名も「東京美林倶楽部(とうきょうびりんくらぶ)」。

森に3本の木を植樹してもらい、20年後大きく育ったら2本は植えた人にプレゼント、残りの一本は檜原村の森に残していただくという東京チェンソーズさんが5年前にはじめた取り組みです。

15ヘクタールある森(東京チェンソーズさんが管理している範囲)の内、1ヘクタールが東京美林倶楽部の敷地で、現在までに約230家族が賛同し自分たちの手で森にスギの苗木を植えているそうです。

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青い支柱が立っているところにスギの苗木が植えられた図


スギは英名で「クリプトメディアジャポニカ」と言います。名前に「ジャポニカ」つまり「日本」と入っているほど、スギは古くから日本との結びつきが強い樹種。ですが今では放置されている木々が多く森が荒れはじめているとか...。

そんな問題がある中、一般の方と協力することで人と森の距離を近づけ、美しい森を育むことにも繋がる東京美林倶楽部の取り組みは特に印象に残りました。


3、「一本丸ごと使い切る」精神

東京チェンソーズさんは間伐材を「一本丸ごと使い切る」ことを目指しています。そのため企業とコラボすることで檜原村の森は様々な形で都市に届けられているのです。

例えば無印良品さんとのコラボでは、檜原村で間伐した木でヘラ作りのワークショップを行なったり、Found MUJIの企画展でヒノキの木箱の展示を行なうなどの広がりがあります。そのほかオークヴィレッジさん(飛騨高山の木工房)、APTYさん(おもちゃの企画・制作)とも商品を製作しています。

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また「森デリバリー」として、用途がなく森の中に置き去りにされてしまう曲がった幹や枝葉など檜原村の“森のかけら”を直送し、ワークショップや薪割り体験などのイベントを開催することも。

森の保護のため伐採した木をゴミにすることなく使い切る、サスティナブルな生き方が注目される時代にリンクする取り組みだと思いました。


印象に残った3つのことからわかること

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これらのことから、同じ東京にある森でも、檜原村の森が明治神宮の森と異なる点は「人との繋がりを、人の手が加わることで自ら生み出していること」だと思いました。

人工林として誕生しながらも、今では人の手を必要とせず自然競争で木々が淘汰され見事なバランスを保って生きている明治神宮の森。

それに対し森林が茂りすぎることで起こる問題を解決するため、木の成長率を予測し、1年の間に育つ分だけ伐採することで美しい森林を育んでいる檜原村の森。

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どちらが良いということではありませんが、人が行動しないと“里山の自然”は世の中と関わっていけないということは強く感じました。

多くの人たちは「森を保護しないといずれは失われ地球の環境問題にも関わってくる」ということはわかりながらも、日常ではその危機感が薄れていることがほとんどだと思います。

人の手が加わる森だからこそ、人に生み出す付加価値もよりわかりやすく届くのではないかと思いました。

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また、体力と経験が問われ、若い人が入ってきてもなかなか長く続かないことが多く、さらに少子化により追い討ちをかけられて全国的に斜陽産業と言われている林業。

そんな業界で “林業だけにとどまらない”方法で独自の付加価値づくりを行なう東京チェンソーズさんの取り組みを知り、“人と植物が共存する”ここちよい空間デザインを行なうわたしたちにとっても、あらためてブランドの個性を考え発信する大切な気づきになりました。

個人的にはPRの立場として、わたしたちが提供する空間の重要性を伝えるために、どう人との接点をつくって行くかを考えていかねばと思いました。

「plants culture caravan」はvol.3も近々開催予定です。レポートもお楽しみに!


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この記事を書いた人

もりみ
park corporation/parkERs