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旬の「樹上完熟」野菜を届ける麻王伝兵衛さんのトマトとイチジク

福井県あわら市にある麻王伝兵衛(あさお でんべえ)さんの農園。豊かな水田が広がる地域です。夏から秋にかけて、旬のおすすめとして Park Coffee&Bagel の素材に使わせていただいているのが、麻王さんのトマトとイチジクです。

麻王さんは、採れたての野菜や果物を自ら届けにまわる行商スタイルで、地元福井でも広く知られています。そのこだわりの野菜・果物についてお話を伺いました。

あわら市の田園


「樹上完熟」へのこだわり


農園では、福井県特産ミディトマト「越のルビー」を中心に、ズッキーニ、葉物野菜、イチジク、キウイなどを生産しています。

麻王さんのこだわりは樹上で完熟した濃密で甘い作物を生産することです。一般に、農協を通して消費者に届く野菜は、消費者の手に渡るまで一定の時間がかかるため、その工程で熟し過ぎて売れないものにならないよう、完全に熟す前に収穫し、袋詰めされます。スーパーなどに流通している野菜や果物が少し固かったり、甘みが少ないと感じられることがあるのはそのためです。もちろん、購入後に少し時間をおいて熟してから食べるのも一つの方法ですが、ちょうどよい食べごろを判断するのも難しいですし、収穫してから熟すのと、熟してから収穫して食べるのでは作物の鮮度も全く違ってきます。

「一番いいタイミングで収穫した作物をタイムラグなくお客様の元に届ける、そこまでが自分の仕事です。いくらいいものを育てても、お客様に食べていただくまでに時間がかかり過ぎると味は落ちてしまいます。だから、できるだけフレッシュな状態でお届けできるように直接販売しているんです。」と麻王さんはその想いを語ってくださいました。

採れたての野菜を行商用のカゴに詰める麻王さん


完熟した野菜の美味しさ


農園で真っ赤に熟したトマトとイチジクをいただきました。トマトは青臭さが全くなく、濃厚でジューシーな甘み。表面をよく見ると細かい皺が入っている実もあります。「皺が入っているくらいが本当は一番美味しいんです。完熟して裂けてしまったものは売れないけれど、味は完熟と変わりません。」と麻王さん。完熟し過ぎたり、裂けたトマトは冷凍してストックすることで新しい素材として使われています。たとえば、Park Coffee&Bagel では、トマトにクリームチーズを混ぜたスプレッドとして提供しています。また、地元のレストランや老舗御菓子司とともに共同開発したドレッシングやゼリーとしても親しまれています。


福井県特産ミディトマト「越のルビー」


手作業で丁寧に袋詰めされるトマト

トマトのハウスが並ぶ敷地の一角に、イチジクの畑があります。そこにはたくさんの熟したイチジクが実っていました。イチジクは夏から秋にかけて実る、まさに今、旬の果物です。麻王さんの農園で育てているのは日本で広く知られている「桝井ドーフィン」という品種です。皮ごとでも食べられ、柔らかく優しい甘みが口に広がるフレッシュな美味しさです。お客様から「野菜以外にも果物があれば」という要望が多かったので、14年程前から生産を始めたそうです。毎日食べ頃を観察してベストなタイミングで「樹上完熟」した実を収穫しています。熟した美味しさを知っているのか、鳥が実を狙ってやってくるため、イチジクの木の周囲には鳥除けネットがしっかりとはられていました。「普通は、鳥に食べられまいと早めに収穫するから、流通しているものの多くは完熟していないイチジクなんです。」(麻王さん)

イチジクの畑
樹上で完熟したイチジク
新鮮なもぎたてのイチジク


土に還元する栽培


麻王さんの農園では、基本的に農薬は使わずに栽培しています。肥料はどうしているのかとお尋ねすると、カゴいっぱいの野菜の端材を見せてくれました(写真)。「これを土に撒いているんです。野菜がまた土に還っていき、生産品のフードロスも減らすことができます。」(麻王さん)

土に還元される野菜の端材

こうした手法は、マルチの役割もあるそうです「根を覆う」ことを意味するマルチは、作物の根を守るために土の表面を覆う栽培方法のことです。農業では有機物マルチとも呼ばれていますが、土の温度調整、乾燥の防止、雑草を生えにくくするなどの効果があります。麻王さんは、「我が家の子どもが「野菜天国」と命名しました。野菜が天国にいって、それがまた他の野菜や果物に生かされていくという意味らしいです。」と微笑ましいエピソードも語ってくださいました。
また、トマトの土には意外な素材が再利用されています。それは、福井ブランドで有名な「越前ガニ」のカラです。「あわら温泉の旅館から、冬場に出る越前ガニのカラを乾かして砕いたものを土に混ぜています。」(麻王さん)
麻王さんの農園では、生産プロセスで出た端材、地元の素材を循環させて栽培に活かしているのです。

お子さんが麻王さんの笑顔をモチーフに作ったプラ板キーホールダー


お客様に直接届けたいという想い


麻王さんの家は先祖代々稲作農家。その麻王家の屋号を受け継いで、現在は野菜の栽培・販売をされています。伝兵衛の「伝」にも特別な想いが込められています。「私は行商というスタイルで野菜を売っています。お客様の所をまわり、自分の口で伝えるということを大切にしているので「伝」をつけた名前にしたんです。」と麻王さん。その野菜や果物を知って魅了された人たちが、また他の人に麻王さんを紹介してくれることで繋がりや人の輪が広がっていくそうです。

「作るだけで終わりではなく、お客様に届けて食べていただく手前までをリレーするのが農家の役目だと考えています。流通業者さんに託すのではなく、できるだけ自分で食べていただくお客様の近くまで運びたいという想いがあります。お客様から「美味しかったよ」という声を直接いただけるのが何よりのモチベーションになっています。」(麻王さん)

行商用のカゴを持つ麻王さん

取材の最後に、トマト栽培のハウスの中を見せていただきました。ハウス内には高く背を伸ばしたトマトの苗が茂っていました。成長途中の緑の苗もあれば、枯れて茶色くなっている苗もあり、真っ赤なトマトが実っています。熟す前に収穫する場合は、苗も青々としているので枯れて茶色くなるまで実をつけた状態の苗は珍しいのだそうです。苗がカーテンのように幾重にも続くハウス内は幻想的でもあり、麻王さんの農園独自の光景が広がっていました。

トマトを育てているハウス内
完熟したトマトもまだ青いトマトも、たくさんの実をつけている


9月に Park Coffee&Bagel で食べられる麻王さんの野菜

麻王さんのトマトとイチジクを使ったベーグルは、旬の9月まで、Park Coffee&Bagelでお召し上がりいただけます!

「麻王伝兵衛さんの完熟トマトのスプレッド」、「贅沢イチジクサンド」です。スプレッドは、濃厚な完熟トマトとクリームチーズが抜群の相性で、焼きたてのベーグルにぴったりです。イチジクは、生クリームに白あんを混ぜたふんわりクリームのサンド。イチジクのフレッシュな甘みと上品な甘みの白あんクリームが絶妙なバランスのデザートベーグルです。イチジクも大きめのピースがごろっと入っていて存在感をしっかりと感じられます。

販売期間など、詳しくは、Park Coffee&BagelのInstagramをご覧ください。


※本記事の内容は、取材時(2023年9月)のものです。

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