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”ここ”以外へ。#旅とエッセイ

開けたね、GWがよ。
どうも、コーシです。

目が悪くなったような気がしていた。

実際、リアル視力の低下もあるかもしれない。運転する時以外遠くを眺める機会が少ない。
視野も狭い感じがした。一つのことが気に掛かって、集中に時間がかかる。
自分を見る目も、虚ろになっていた。自分が何を考えているのか、なぜこんな気分なのか、言葉に表せない。

ネガティブな訳じゃない。幸せ。
でも目や耳や鼻に入る何かしらが嫌でそれにがんじがらめにされている。
満員電車。
原因不明の緊張状態。
深呼吸しても、入ってくる空気がさらに自分の体に蓄積されて重くなる。

大学も勉強は楽しい。でも人混みの中でする勉強は苦痛でしかない。
大学生というのは人が多いほど横に広がって歩く習性でもあるのだろうか。
邪魔だ。
第一なんでそんなカラフルなんだよお前ら。
白黒でもテカテカしてる。
こんなこと言って、自分だってその中の一人で、しっかりと一員で。

何かと放っておかれない社会に私はいる気がする。
みんな、何かに見られているようで、自分も何かに見られている。
私を支配するそれは多分言葉に深く関係しているもので、もしかしたら言葉そのものかもしれない。

陽キャ、陰キャ、意識高い系、ハイスペック、ハイセンス。

どの言葉も嫌いで、どの言葉にも囚われたくない。でもどこかで括られて、
その中でヒーヒー言う。
その姿を高いところから見下ろしてニヤッとされる。
どの言葉も、そんな風に感じてしまう。
でもそんな言葉に囲まれて過ごしている。自分も、思いがけず口にしているかもしれない。

このままじゃ良くない!!

そう思った。思ったまま、日々は過ぎていた

尊敬する職人さんとお話ししている時に職人さんがタイムリーに言った。
SNSとか全部辞めちゃえばいいんじゃない?
その通りすぎる。でも、そこまでの勇気はなくて。SNSも捨てたもんじゃなくて。

そんなことをぐるぐる考えている自分も、嫌だった。


そんな中、親友は長野で生活を始めた。まだライフラインのない古民家で生活を始めた。
彼は私にその事実を伝え、私は不思議と”必ず行くもの”とでも言うかの様に日程を決め、準備をしていた。
彼は快く”もちろん”と送ってくれた。

とにかく、”ここ”以外へ。
家が嫌な訳じゃない。家は大好き
大学が嫌な訳じゃない。
電車は嫌。
東京が嫌な訳じゃない。

とにかく、今の自分と、自分が感じてしまっている何かと、思考に入り込んでくる何か。
これらが介在して不協和音を鳴らし続ける”ここ”以外へ

荷物は最低限で。
美味しい料理を作るのに役に立ちそうなものは持って。
相棒な車で。

もし古民家から帰ってきたら、”しそとツナ缶。”は無くなっているかもしれない。
今までしたことのない様な髪型で、髭を蓄えて帰ってくるかもしれない。
自意識とか、言葉の響きを繊細に感じ取るセンサーとか、全部無くしているかもしれない。
その時が、もしかしたら今いる長くて暗いトンネルの出口なのかもしれない。

馬鹿らしいと思われるかもしれないが、”覚悟”としか言語化できない何かを心に抱きながら、私はエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。
5時間くらいのロングドライブ。
5時間経って行き着く先は、水道も電気も通っていない古民家。
そこには親友と、ほぼ初対面の仲間たち。

出発前の私の良かったところは、目の悪さによりあらゆる心配に鈍感だったことだ。
とにかくワクワクしていた。
気合いがあった。

まず、そんなにこのハンドルを持ち続けられるのか。
綺麗は道路ならまだしも、道中には山道もある。
水道と電気を両足に履いて育ってきたような私が、裸足に慣れるのか。
4時間とかならまだしも、4日間も。
しっかり会話をしたことも無い人たちと、共同生活できるのか。

多分、きっと平気。弱そうな自分とは裏腹に、そんなよく分からない自信もあった。

4日間、私は”ここ”から疎外される。
何にを感じるかは、何かを感じてから感じれば良い。

道中、スマホに通信制限がかかった。
尊敬する職人さんの言葉が反芻する。よし。
人生で初めて、通信制限に「ナイスゥ!」と言った。

 フクダコーシ しそとツナ缶。
 Instagram @f.kohhhhhshi_(アート投稿中!)
 Twitter @FKohhhhhshi

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