マガジンのカバー画像

ぱらぱる 2021年3月号

8
今月のテーマは「特に出来事やハプニングがあったわけじゃないのに、何でか良い記憶として残ってる、忘れられない思い出」です。
運営しているクリエイター

記事一覧

その記憶はすぐに忘れられる自信がある

何故かわかんないけど、記憶に残ってる良さげな思い出1〜3。 その1 小学生の時の話。晩御飯を食べ終わった頃、一年のうちに2回か3回、親が「MALT'S買ってきて~」と千円札を一枚渡してくれるという日があった。自分と弟は近くの自動販売機までファンタとかコーラとかを買いにいく。帰ってきてそんなに盛り上がるわけではないがみんなでジュースを飲み菓子を食べるというささやかなパーティーというかいつもと違う日があった。はたしてあのタイミングは一体何だったのだろうかと今になって思う。子ども

思い出

思い出  1. 小学校の頃ジャッキーチェンにあこがれていた。 ゲオでその頃出ていたジャッキーのビデオは全部借りてみていた。 いつのまにかジャッキーの助手になるというのが自分の将来の夢になっていた。 とりあえず、家の柱という柱で懸垂を毎日やった。 でも足りなかった。これでは、ジャッキーにはまだまだ遠い。 近所の川原公園にめちゃくちゃでかい鉄棒があった。 毎日、ブランコや鬼ごっこをしている子たちの中で一人、でかい鉄棒で懸垂をひたすらしていた。 五時の鐘が鳴ると修業はいったん終わ

慌てない、慌てない。

生活をしていると、何か起きたときに、慌てても仕方ないよねえ。と、よく思いながら生きている。つもり。 2月、3月と大きい地震が続いていた。2月の夜中の地震の日はちょうど病棟勤務をしていた。 地震に気づいた時には、既に大きな揺れに襲われていた。とにかく、安全を第一に、慌てて部屋を回っていた気がする。 90歳を超えて、ほぼ寝た切りだが喋るのが好きな患者さんの元へと足を運んだ。なんと、あんなに強い揺れにも関わらず寝ていた。正確には、目を閉じていたのだと思う。数十分前に自分が見た

たのかんさあ

穏やかな西陽の差し込む車内。 仰向けになった背中から全身へ伝わってくる振動が心地よい。 海沿いの道を走っていた。真っ白い軽バン。 運転手と自分以外誰も乗っていないから、後部座席を全て倒して生まれるだだっ広い空間、そこへごろんと寝転ぶのがお気に入りだった。天井に向かって伸ばした両腕。その先の両手で広げた1冊の薄い本。それを真下から見上げている。 一緒に暮らしていた祖父はあまり口数の多くない人だった。今となっては昔どんな言葉を交わしていたのかほとんど思い出せない。ただ、特に人

グラタン

「お母さんの料理の中で、いちばんグラタンが好き」 そう言ってから、母は毎年、私の誕生日にエビグラタンを作ってくれる。 じゃがいもとマカロニを茹でて、玉ねぎとベーコンを炒めて、 バターと小麦粉をよく炒めてから、少しずつ牛乳を加えてホワイトソースを作って、 全ての材料を混ぜたあと、温めた器に分けて、 チーズをのせて、オーブンでじっくり焼く。 もう30年以上続く恒例行事で、当たり前のようになっているけど、 あの時の、ちいさな私のことばを、母がずっと覚えてくれていると思

商店街の店の並びや、国道沿いの建物や、カレーの味

一人暮らしをしていた頃の、どこかの時に、ひと月程、カレーを食べていた事を思うこが度々起こる。 ひとつの鍋で日々、朝と帰宅後に、強火にし、何らかの肉と水分と野菜果物とカレーっぽい香辛料を加え、その時の味をいただく。 毎度美味しいが、特別に何とも美味しいと思う味が時々ある。今まで加え続けた食物の相乗効果なのか、それぞれの日の心持ちなのか。 思い返して「美味しかったなー。いつ頃のだったかな〜?」 何が作用したのか、もう見当がつかないけれど、その頃のことや、それに関連した取り留め

記憶が書きかえられていなければ

「特に出来事やハプニングがあったわけじゃないのに、何でか良い記憶として残ってる、忘れられない思い出」 というテーマですが、 わたしは忘れっぽい質のようで、ちゃんと覚えている記憶はとても少ないです。 こんなわたしが覚えている最初の記憶は、おそらく1〜2才くらい(座れるけどちゃんと歩けなくてちゃんと喋れないくらい)の頃、 『実家の茶の間で、猫とか犬が出ている映画らしきものを観ている。親戚がたくさん来ている日なんだけど、みんな仏壇のある隣の部屋にいるようだなあと思っている』

日曜日と東京

小学3年か4年の、春か秋の日曜日。晴れ。なんでか覚えてないけど、その日はじいちゃんばあちゃんお母さん妹がいなくて、お父さんと2人っきり。お父さんは部落ごと(僕の地元では差別の意味なく、普通に町内は部落呼び)のソフトボールチームのキャッチャーで、その日の早朝試合に一緒に行った。帰宅後、布団干してゴロゴロしてから、地元のすかいらーくで昼飯を食べた。そして、たしか夕方前にみんなどっかから帰ってきた。 10年以上前の、彩ちゃんとの東京一泊旅行。夕飯は、よしもとばななさんがよく行くと