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panda1
2021年5月16日 23:54
「皆んな注目」僕の一声で数十もの人の目が一斉に僕へと向けられる。喉の中を巨大な何かがごくりと口の中までやってくる。視界がキュッと狭まってしまう。僕は人前で何かする事はきっとむいてないんだろうな。そんな僕が何で先生になんかになったのだろう。そう言えば教師塾の先生は、陰気な奴ほど目指すものって言っていた事を思い出す。心の中でせせら笑いながらハリのある声を出してみる。「皆んな、一学期の学
2021年4月28日 20:00
陽光に顔を刺され目が覚めた。微かな偏頭痛を伴う気怠い朝。土曜日だと言うのに七時前きっちりに起きてしまう体。大学時代、どれくらい寝坊するかがステータスだと思っていた頃が懐かしい。ここ数ヶ月で十分に社会人として毒されてしまったと思う。重い布団を足で捲り、顔にかかる煩わしさを遮断しようと窓辺に向かう。すると、向かう途中、光の線上に置かれた自由帳が目に入った。(そういえば、こんな事書いていた
2021年4月23日 16:55
自転車を漕ぐ足は家から最寄りのコンビニに向かう。何だか眠れない気がした僕は酒を買いに行く。すると、コンビニすぐ横の店明かりが目に入った。懐かしいな。先生になりたての頃、よく足を運んでいた文具店である。 気づけば店に吸い寄せられる様にガラス戸に手をかけていた。店の中には懐かしい教具が並ぶ。昔はこれを見るだけで何故か心が踊っていた。しかし、今の僕にはただの古臭いガラクタに感じてしまう。漫ろに歩く僕
2021年4月22日 19:02
コツンコツン 薄暗い階段。手すりだけを頼りに僕は降りてゆく。歩く足取は本館から対面にある南校舎へと向かう。あっという間の職員室。朝の逆路とは大違いだ。僕はこじんまりと職員室の扉を開く。古い材質の扉は必要以上の音を立てて僕の来訪を知らせた。 カタカタカタ 職員室では腰を曲げた先生達がパソコンに齧り付いている。煩忙な先生達は僕を横目に見るだけでまた画面に顔を移す。
2021年4月12日 21:48
溜息を一つ吐く。誰もいない静かな教室。児童が帰りきったこの時間のみが、僕が唯一落ち着ける時間帯である。やっと終わった。あの地獄の様な日々から一時的にでも開放された。僕は今という瞬間を噛み締めながら、一学期を終えた教室で急ぎではない二学期用の掲示物の制作をしていた。 ふと時計を見ると、時計の針は一七時を少し回る時間を指し示していた。授業中はあれ程時間に追われるというのに、児童が帰った後は途端に疎