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忘れられない旋律 「小さな恋のメロディ」

こんばんは。

久々にnoteを開きました。

今回は、1971年のイギリス映画、

「恋のメロディ」について綴ります。

まず、私こちらの映画、

筋肉少女帯(バンド)の「恋のメロディ」という曲を通じて知りました。

「ラストシーン、あの2人がどこへ行ったか貴方はわかる?きっと地獄なんだわ。」

との歌詞があり、調べてみたら実存する映画で。

あらすじを読むと、可愛らしい少年少女の物語だったので、


歌詞にある「ラストシーン」はどんなストーリーを辿ったイメージなのだろう?

と、ずっと気になっていました。

気になってはいました、が、

なかなか観る機会がなく。

今回、いつも行く映画館で期間限定ロードショーとの事で、

これは行くしかない!と、

本日観に行って参りました。

48年も前の映画となりますが、

当時は日本でも大ヒットしたそうですね。


映画レビューでは「甘酸っぱい」、「胸キュン」、「青春」等といったワードが目立ちますが、


この映画には「大人社会からの独立戦争」という趣がある。

(Wikipedia  小さな恋のメロディ「作品解説」より引用)

とあるように、

キラキラとした「恋愛青春映画」ではなく、

自らを侵す不自由さに抗おうとする少年少女の、現実と解放、そして居場所、といった部分が

色濃く、テーマとして描かれていました。


※以下、ネタバレ含みます。



うわっーー、と流れ込むように学校の廊下や階段で走り回る子供達。

そして、「イエスとは誰なのか。」と語る学校の先生。

子供達にとって「学校」は窮屈な居場所。退屈な授業。両親も先生も口を揃えて「あれがいい」「これはダメ」と、理屈を押し付けて拘束する。

そんな彼らにとって、友達、恋愛、そして「居場所」は、それが世界の中心と言わんばかりの有りざまである。

スキャンダラスな事が大好きで、

男の子で集まって爆弾を作ったり、本で叩きあってじゃれあったり、

誰が誰を好きだとか、キスする時はどうだとか、スターのポスターにキスをしてみたりだとか、

そういった日々のときめきだけが、生活の全てで。

彼らを満たす「全能感」は眩く、エネルギッシュに駆け抜けてゆく。

大人はそれを幼い、無知だと口々に言うけれど

大人になれば、時間が経てば、手に入れられるものばかりではない。むしろ、失うものだってあるはずだ。

それなのに、「得ている」「得ていく」といった一方的な部分を、何の疑問も持たずに掲げてしまう大人達。少年少女はきっと、そんな大人達の無力な部分を見抜いているのだろう。

だから、不自由さに対して幼いなんていうのは理由にならない。

彼らにとっては、大人も子供も平等なはずで、それにのに、大人達ばかりが子供を拘束する。

「それが当たり前だから。」と言って。

彼ら少年少女のフラストレーションは、先ほど述べたそれぞれの「居場所」で解放される。

無力な大人達を欺く事で、「大人になれば」と教育される子供達は全能感を募らせてゆく。

幼いと言うが、身勝手だと言うが、

彼らの思いは「好きな人の為に何かがしたい」だとか、「好きな人と一緒にいたい」だとか、怖いくらいに至って純粋なものであり、それ以上でも以下でもないのだ。

それなのに、「幼い」というレッテルを貼り付けられて抑え込まれるのは、彼らにとって如何に残酷であるか。

幼き日々というのは、1日1日が非常に長い。つまり、大きいという事。だから、日々選択に迫られる。選択しなければ、いけないのだ。

ラストシーン、彼らはトロッコに乗って、どこへ向かうのだろう。一本に続く線路は、どうしたって、マイナスイメージが浮かび上がってしまう。選択肢がない。現実だ。

しかし、彼らはまたきっと戦うだろう。

現実(不自由さ)→解放→居場所 というのはサイクルである。だから、不自由さにたどり着いてしまっても、解放を求めてまた居場所を探す。

そうやって、大人になっていってほしい。

そんな希望を込めて、ラストシーンを胸に刻みます。



そしてそして、

何と言っても子役が皆素晴らしい。

音楽が美しい。

特に「若葉のころ」が流れるシーンでは、

少年少女の純粋な「幼さ」の部分がめいっぱい詰め込まれていて、観ているこちら側も胸がギュッと締め付けられる。

また、メロディ(恋)に夢中なダニエルにヤキモキしたトムの姿も良い。

トムは、悪ガキ大将に見えるけど、

ダニエルの誘いを断る時に「君が嫌いで言ってるんじゃないんだ。」とか、

茶化しすぎちゃってダニエルと殴り合いになってしまった時に、「ごめんね。」と言いしっかりダニエルの為に結婚式の進行役になったりとか。うーん、好きだ...

この映画のジャック・ワイルドを観たくて、何度も観てしまいそう。

幼い少年少女の行動は大胆なのに、人間関係や気持ちは繊細な部分まで細かく描かれていて、何度も胸が熱くなりました。



それでは、また次回。




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