アイルランドの異教的伝承「マグ・トゥレドの戦い」⑪(¶139~¶148)

私が翻訳したアイルランドの異教的伝承「マグ・トゥレドの戦い」(Cath Maige Tuired) をここに掲載していきます。

【前回】

前回は、トゥアサ・デー・ダナン神族とフォモーレ族の戦争で、多くの神が死にました。

今回は、フォモーレ族の王インジェッハづきの詩人である〈半緑〉のローッホ(前回参照)がルグに助命を請う場面です。


¶139
〈半緑〉のローッホはルグに助命を懇願した。「ならば我が三つの願いを叶えろ」とルグ。

¶140
「いいだろう」とローッホ。「エーリゥをフォモーレ族の脅威から守る必要を取り除こう、審判の日まで。そしてお前の舌がもたらすあらゆるもの〔=裁判〕は、お前の命の尽きるまで、あらゆる困難を解決するだろう」

¶141
ローッホは助命された。彼はゲール人たちに「拘束の命令」を唄った。(以下文意不明)

¶142
それからローッホは言った、助命されたので、ルグの9台の戦車に名前をつけると。ルグもまた、彼が名前をつけるといった。ローッホは答えて言った、「ルアフタ、アナガド、アハズ、フェハル、フェル、ゴラ、フォサズ、クライズ、カルバド*1」

¶143
「質問だ。それらの戦車に乗っていた御者たちの名前は?」
「メゾル、メゾーン、モス、モサッハ、フォウチネ、テンナ、トレス、モルヴだ」

¶144
「彼らの手に握られていた馬突き棒の名前は?」
「簡単だ。フェス、レス、ロヘス、アナガル、イラッハ、カンナ、リアザ、ブアズだ」

¶145
「馬たちの名前は?」
「カン、ドリアザ、ロムル、ライサズ、フェル・フォルシズ、スロヴァン、アルヒェザル、ルアガル、イラン、アルリアザ、ロゲザルだ」

¶146
「質問だ。殺された者の人数は?」とルグはローッホに言った。
「平民と賎民の数は知らない。フォモーレ族の地主と首長と英雄と貴公子と高王たちの数は知っている。3人と、3かける20人と、50かける100人の男と、20かける100人と3かける50人と、9かける5人と、4かける20かける1000人と、8人と、8かける20人と、7人組と、4かける20人と、6人組と、4かける20人と、5人と、8かける20人と、2人と40人、そしてニェードの孫〔すなわちバロル〕と90人だ。これがフォモーレ族が戦の殺し合いで失った高王たちと高き貴族たちの数だ」

¶147
「そして、大部隊とともにやってきた、平民と、下級民と、賎民の部隊と、その他のあらゆる技の者たちは――フォモーレ族のあらゆる高き貴族たちと高き首長たちと高き王たちは各々が従者を伴って戦にやって来たためだ――皆そこで斃れた、自由民も非自由民も――私は敵の高き王たちの召使しか数えていない。私が見た限りで数えた人数は次のようになる。7人と7かける20人と7かける100人と7かける5人と50人と2かける100人と100人と20かける20かける100人と100人と90人。その中にはカルブレ・コルグの息子サブ・ウアンヒェンナッハ、インジェッハ・マク・デー・ドウナンの従者の息子(すなわちフォモーレ族の王の従者の息子)が含まれる」

¶148
二人組で戦った者たち、槍兵たち、闘争心を掻き立てられなかった者たちの損失――空の星が数えられるまで、そして海の砂、雪の欠片、草の露、あられ、馬の足の下の草、海の嵐の中のリールの息子*2の馬たち――それらは数えられない」


*1「戦車」の意。戦車に戦車という名前をつけた。
*2 海神マナナーン・マク・リールのこと。


【続く】

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