見出し画像

図書館スタッフ直伝!断捨離で手放してはいけない本

「断捨離」という言葉が流行ってから随分経ちますが、昨今のミニマリストブームは止まることを知りません。

特に本は、「片付けの序盤に手をつけやすいもの」と言われますよね。

ですが、一度手放した本が二度と読めなくなる可能性、考えたことはありますか?

今回は、図書館で働く本に詳しい人間として、手放してはいけない本の種類を2つ、ご紹介しようと思います。

1.小説・マンガ

kindleで読めるからいいのでは?と思いがちですが、実はこれらの「創作物」は手放してはいけない本の筆頭です。

理由は二つ。まず、文庫化されたような物でも、簡単に絶版になるからです。

毎日のように新刊が生まれる世界。本屋さんだって、スペースが限られています。入口に平積みにされているオススメ本コーナーにいた子たちもいつかは狭い棚におさまり、やがては店頭から姿を消していく……

なんてのはまだいいほうです。店頭になくても、Amazonやメルカリで探せばいいのですから。

もっと怖いのは、版を重ねると、内容や表現が変わる可能性がある、ということ。

昨今、表現の問題がテレビやネットで話題になりますよね。アニメ化をきっかけに単行本内の表記を見直した、なんて例もあります。

ひどい場合は、発禁になってしまうことも……。発禁で有名なのは、ディズニー映画「南部の唄」でしょうか。ディズニーランドの人気アトラクション「スプラッシュマウンテン」の元になった物語です。あれは本ではなく映画ですが、黒人男性と白人の子どもの交流場面が歴史的事実に反すると物議をかもし、今やDVDはもちろん、ディズニープラスでも見ることはできません。

発禁は稀だとしても、版が重なるとともに表現が変わることは珍しくありません。実用書ならともかく、文章の一つ一つに意味があり、その表現が選ばれたことに理由がある小説・マンガにとって、表記の変更は作品全体の印象やバランスにも影響するのではないでしょうか。そのため、思い入れのある作品はとくに、たとえオンラインで公開されていたとしても手元に残しておくことを強くオススメします。

2.専門書

絶対に手放してはダメです!研究者はもちろん、趣味として読んでいる方はなおさら。その本の狭義の分野(歴史学で例えるなら「日本近世史の幕末期に活躍した新選組)だけでなく、広義の分野(この場合は「日本近世史」もしくは「歴史学」自体)から手を引くという覚悟がない限り、絶対に残しておいてください。多少本棚のスペースを取ってしまうとしても、その価値は絶対にあります。

なぜ、専門書を手放してはいけないのか。理由は二つあります。

まず、専門書は基本的に売れないため、そもそも発行部数が少ないです。そりゃそうですよね。「幕末維新期における候文の変化」なんていう狭いテーマに興味を持つのは、ごく一部のマニアックな人たちか研究者だけです。研究というのは狭いテーマを深く掘り下げることが基本であるため、必然的に学術的な専門書に書かれるテーマも狭くなり、発行部数も少なくなります。

「でも新選組なら有名だし、手放しても大丈夫なんじゃない?」と思った方!とんでもございません。新選組や戦国武将など有名な題材でも、生き残るのはエンタメ色の強い本だけ。研究者が書いたものは、すぐに姿を消してしまうのです。

ここで、私の所持している新選組の専門書を例にあげましょう。中村武生著の『池田屋事件の研究』(講談社現代新書、2011年)。「新選組」「池田屋事件」という比較的有名なテーマを取り扱っていて、有名な出版社から出されている。そして発行年もそこそこ最近ですが、現在絶版になっています。

これは歴史学だけでなく、どの分野でも言えることではないでしょうか。心理学で例えると、もっと分かりやすいかもしれません。版を重ねるのは心理テストや恋愛心理学など、エンタメ色の強いベストセラーだけ。学術的なものはすぐ消える、もしくは店頭に並ぶことさえ珍しいのでは?

二つ目の理由は、手放したら再入手が困難だから。もともと発行部数が少ない、という事情もありますが、この手の本はブックオフに並びにくいです。なぜなら専門の古本屋に流れるか、研究者の人脈の中でやりとりされることが多いからです。実際、大学教授が退任される際に研究室の本を学生に開放していましたし、私自身も専門的な講演会の場で、貴重な本(といっても古書ではなく、比較的新しいのに絶版になっている専門書)を安価でお譲り頂いたことがあります。

発行部数が少ないことに加え、身内でやりとりされる分を引いたら世に出回っているのはほんの少し。地元の公共図書館にあるとは限らないし、読者の少ない本は電子化もされにくい。

ではどうするか。大学生や研究者なら大学図書館が使えますが、基本は国立国会図書館か、東京都立図書館などの大きな図書館に行くしかなくなってくるのです。しかも、これらの図書館は貸出に対応していないため、非常に不便。

専門書は発行部数が少なく、すぐ絶版になります。新しそうに見えるのに実はもう売ってません、なんてこともザラです。そして入手ルートも限られており、所蔵図書館も少ない。そのため、よっぽどのことがない限り、専門書は手元に置いておきましょう。たとえ5年に1度しか読まないとしても!

(もしフリマアプリに出品されていたらラッキー!この機を逃さず、すぐにお迎えしてくださいね。「次がある」とは言えないのが、専門書の怖いところです)

まとめ

表現の変化が作品に影響を与える小説・マンガと、手に入りにくい専門書。この二種類を、「手放してはいけない本」としてご紹介しました。

でも究極を言えば、お気に入りの本はジャンルを問わず、手元に置いておいたほうがいいのかもしれませんね。

物を少なくするためだけに「電子書籍で読めるからいいや」と手放してしまうのは、悲しいことだと思いませんか。

何を捨てるのかではなく、何を残すのか。多少場所を取ってしまっても、心底気に入っているものを大切にする生活こそが豊かだと思うのです。

この記事が、本の整理をしているあなたの助けとなりますように。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!



この記事が参加している募集

#推薦図書

42,581件

#読書感想文

189,685件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?