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さぶすクラシック日誌。2022年版...

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毎日、1タイトル、スポティファイでクラシックの新譜を聴いてみた。
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#ルネサンス

11月27日、謎多き、アフリカ、ルーツのポルトガル出身の作曲家、ヴィセンテ・ルシターノ、その音楽の興味深さ...

ロリー・マクリーリー率いる、イギリスの古楽ヴォーカル・アンサンブル、マリアン・コンソートが掘り起こす、知られざるルネサンスの作曲家... アフリカにルーツを持つという、ヴィセンテ・ルシターノのモテット集。 ヴィセンテ・ルシターノ(d.after1561)。 生没年はもちろん、苗字(ルシターノは、ルシタニア人の意味で、ルシタニアとはポルトガルのこと... )も定かではなく、謎多き人物... で、分かっていることが、ヴィセンテの母がアフリカにルーツがあったということ... つま

11月26日、デュ・ベレーの詩が引き出す、豊かな表情、ルネサンスの古雅と新時代の息吹が織り成すシャンソン...

ドニ・レザン・ダドレ率いるドゥルス・メモワールが、ルネサンス期のフランスの詩人、ジョアシャン・デュ・ベレーの詩を歌う、多彩なルネサンスのシャンソンを取り上げる、"HEUREUX QUI, COMME ULYSSE"。 中世以来の国際語、エリートたちの言語、ラテン語に対し、一段低く見られていたフランス語の再発見と洗練を促した詩人、デュ・ベレー(1522-60)。古代ギリシア、古代ローマの古典に立ち返り、倣い、フランス語による新たな詩を模索(まさにルネサンス!)。そうして生み出

11月25日、爛熟のルネサンス、マニエリスムを生きた、ジャケス・デ・ヴェルトの、酸いも甘いも知った音楽の深みに聴き入る。

スイス、バーゼルを拠点とする古楽ヴォーカル・アンサンブル、ヴォーチェス・スアーヴェが歌う、北イタリアで活躍したフランドル楽派、ジャケス・デ・ヴェルトのマドリガーレとカンツォネッタ... "Versi d'Amore"。 ジャケス・デ・ヴェルト(1535-96)。 フランドル東部の小さな町、ヴェールトで生れ、その歌声を買われ、幼くしてイタリアに渡ると、縁あって、イタリアの名門、マントヴァ公、ゴンツァーガ家の分家、ノヴェッラーラ伯爵家に迎え入れられ(1557年にはゴンツァーガ家

11月24日、イギリス・ルネサンス、バードの舞曲に変奏曲、ピアノで弾いてみた!ケミストリー!

南アフリカ出身、ロンドンを拠点とするピアニスト、ダニエル・ベン・ピエナールが弾く、イギリス・ルネサンス、爛熟期を彩った作曲家、バードのパヴァンとガリアード、パッサメッツォとグラウンド... 教会音楽にマドリガーレ... 歌のイメージが強いルネサンス(リュートは欠かせないか... )だけれど、イギリス・ルネサンスにおいては、ハープシコードにヴァージナルといった鍵盤楽器、コンソート・ミュージックなど、器楽も充実していたことが興味深いなと... で、その中心にいた人物、多くの器楽

11月23日、16世紀、大きく揺れたイギリスの、ルネサンス・ポリフォニーにおけるブレないイギリス流の魅力...

トビー・ウォード率いる、イギリスの古楽ヴォーカル・アンサンブル、アンサンブル・プロ・ビクトリアが歌う、イギリス、テューダー朝を彩った音楽の数々... "Tudor Music Afterlives"。 宗教改革(1517)により大きく揺れた、16世紀、ヨーロッパ... イギリスもまたそうで、1534年、ローマ教会から離脱し国教会が成立する。が、カトリックからプロテスタントへ、単に切り替わったというわけではない一筋縄には行かないイギリスの状況があって... メアリー1世(在位

11月22日、1539年、分断を乗り越え、出版された、謎のモテット集の、乗り越えた美しさ、吸い込まれそう...

パトリック・エイリーズ率いる、イギリスの古楽ヴォーカル・アンサンブル、シグロ・デ・オロが歌う、ミラノで編纂され、ストラスブールで出版されたというモテット集... "The Mysterious Motet Book of 1539"。 カトリック圏、ミラノの大聖堂の楽長を務めたフランドル楽派、ヴェレコーレ(ca.1500-after1574)が編纂し、1539年、プロテスタント圏、神聖ローマ帝国、帝国都市、シュトラスブルク(現在のフランス、ストラスブール... )にて出版さ

11月21日、フランドル楽派、黄金期、イザーク、コンスタンツ大聖堂の祝祭を彩った壮麗なる教会音楽...

マーカス・ウッツ率いるドイツの合唱団、アンサンブル・カンテッシモが歌う、イザークの大作にして遺作、『コラリス・コンスタンティヌス』から、四季折々の教会音楽... フランドル楽派、黄金期の巨匠、イザーク(ca.1450-1517)が、コンスタンツ公会議(1414-18)で知られる、ドイツ南端の司教都市、コンスタンツの大聖堂から委嘱(1508)された、クリスマスや復活祭など、四季折々に捧げられる一年分のミサの集成、『コラリス・コンスタンティヌス(コンスタンツ大聖堂の合唱曲)』(

11月15日、いや、久々に聴くと、興味深い... ダウランド、古くて、新しい、稀有な音楽... 秋、深まる中、沁みる。

スウェーデンのリュートの名手、ユーナス・ヌードベリの演奏で、ダウランドのリュート作品アンソロジー、さまざまなリュート練習曲集のナンバーによる、"LESSONS"。 しっとりとプレリュード(P 89)で始まって、軽やかなファンシー(P 73)、味のある蛙のガリアード(P 23a)と続き... エリザベス女王のガリアード(P 41)や、彼女は許してくれようか(P 42)、デンマーク王のガリアード(P 40)、そして、ダウランドと言えば、ラクリメ(P 15)!などなど、ダウランド

9月12日、英国流とイタリア式、ルポのファンタジアは、リアル...

イギリスが誇るヴァイオル・コンソート、フレットワークの演奏で、イギリス・ルネサンス爛熟期のヴァィオル奏者、ルポのファンタジア集。 トマス・ルポ(1571-1628)。 イタリアからやって来た音楽家一家(おそらくミラノ出身の祖父がまず渡英、その後、ヴェネツィアから父が渡英... )の下、おそらくロンドンで生れたルポ... 16歳でエリザベス1世(在位 : 1558-1603)のコンソートに加わり、ステュアート朝への王朝交代の後も王家のヴァイオル奏者として演奏を続け、イギリスな

9月11日、イギリス・ルネサンス爛熟期の中心にいたバード... その時代と心象がチェンバロから溢れ出し...

ドイツのチェンバリスト、フリーデリケ・シュレクによるイギリス・ルネサンス爛熟期を彩ったバードの鍵盤楽器のための作品集。 エリザベス1世(在位 : 1558-1603)の庇護の下、王室礼拝堂のオルガニストを務めたウィリアム・バード(ca.1540-1623)。まさにイギリス・ルネサンス爛熟期の中心にいた人物... そのバードによる多彩な鍵盤楽器のための作品、13曲が取り上げられるのだけれど、バードの作品のみで構成されるのが新鮮! いや、改めてバードの音楽をチェンバロでじっく

9月10日、もうひとりのジョスカン、スペイン領ネーデルラント、故郷に留まっての音楽の魅力...

2017年に創設された新たな古楽アンサンブル、ラタス・デル・ビエホ・ムンドの歌と演奏で、16世紀、ルネサンス後半、スペイン領ネーデルラントで活動していただろう作曲家、ジョスカン・バストンのフランス語とフラマン語によるシャンソン集。 ジョスカン・バストン(fl.1542–63)。 わかっていることはあまりないのだけれど、現在のベルギー北部、フランドルを含むフラマン語圏の出身で、フランドルのすぐ南、カンブレー司教領で活躍したフランドル楽派、ヨハネス・ルピ(ca.1506-39)

9月9日、ルネサンスの大家、ジョスカンのシャンソン、ルネサンスにしてルネサンスを越えている...

時に大胆だったり、なかなかに凝っていたり、いつもおもしろいアルバムを聴かせてくれるドニ・レザン・ダドレ率いるフランスの古楽アンサンブル、ドゥルス・メモワールの歌と演奏で、ルネサンスの大家、ジョスカン・デ・プレのシャンソン集、"TANT VOUS AIME"。 15世紀後半、美しいルネサンス・ポリフォニーを綾なして、ヨーロッパ中を席巻していくフランドル楽派... その中心にいたジョスカン・デ・プレ(1450/55-1521)。ルネサンス切っての文化人、アンジュ―公のエクサン・

9月8日、演奏可能な現存最古のリュートによる、16世紀の花やぐパノラマ、素敵...

ポーランドのリュート奏者、ミハウ・ゴントコが、16世紀のリュートで、ルネサンス後期、イタリア、ポーランド、ドイツ、イギリスで奏でられた作品を取り上げる、"Mortua dulce cano"。 ゴントコが奏でる16世紀のリュート... "1595"、"パドヴァにて"、というラベルの貼られた7コースのルネサンス・リュート... マルティーノ・プレスビテルの作と伝えられるも、実際はよくわからず、1595年に製作されたのか?修理されたのか?覚束ないものの、演奏可能な現存最古のリュ

9月7日、知られざるトゥールー... ルネサンスが黄金期を迎える前の初々しさを伴った麗しさに、心洗われる。

ヴォイチェフ・セメラード率いる、チェコの古楽ヴォーカル・アンサンブル、カペッラ・マリアーナの歌で、15世紀、神聖ローマ皇帝、フリードリヒ3世の宮廷礼拝堂のカントール、トゥールーの作品集。 ヨハネス・トゥールー(fl.1450–80)。 詳しいことはほとんどわからない作曲家... いや、初めてその存在を知りました。で、おそらくフランドルで生れ、フランドル楽派のひとりに数えられるだろうと... で、トゥルネー司教領(フランドル伯領に隣接... )の聖職にあり、ハプスブルク家の神