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9月11日、イギリス・ルネサンス爛熟期の中心にいたバード... その時代と心象がチェンバロから溢れ出し...

ドイツのチェンバリスト、フリーデリケ・シュレクによるイギリス・ルネサンス爛熟期を彩ったバードの鍵盤楽器のための作品集。

エリザベス1世(在位 : 1558-1603)の庇護の下、王室礼拝堂のオルガニストを務めたウィリアム・バード(ca.1540-1623)。まさにイギリス・ルネサンス爛熟期の中心にいた人物... そのバードによる多彩な鍵盤楽器のための作品、13曲が取り上げられるのだけれど、バードの作品のみで構成されるのが新鮮!

いや、改めてバードの音楽をチェンバロでじっくり聴けば、ただ美しいだけではない、懐の大きさのようなものも感じられるのか... ルネサンスならではの見事な声部の重なりが、チェンバロを煌びやかに鳴り響かせるも、どこか切なげで... より複雑な感情が煌びやかさの中に織り込まれ、深みを生む。

16世紀後半、国教会体制が確立されるイギリスに在って、カトリックの信仰に留まったバードは、なかなか難しい状況を生きていた。つまりイギリス・ルネサンスの大家ながら、マイノリティーであったわけだ。その心情、やはり音楽にも反映されるのか... 煌びやかにしてやさしい、懐深い音楽...

そんなバードを、1624年製、イオアネス・ルッカースのチェンバロ(復元)で奏でるシュレク。まず、その豊潤な響きに魅了される!で、その響きをきちんと御し、スケールの大きい音楽を紡ぎ出す彼女のタッチ!チェンバロから、バードの時代と、その心象が溢れ出すかのよう... 聴き入ってしまう。

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