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9月9日、ルネサンスの大家、ジョスカンのシャンソン、ルネサンスにしてルネサンスを越えている...

時に大胆だったり、なかなかに凝っていたり、いつもおもしろいアルバムを聴かせてくれるドニ・レザン・ダドレ率いるフランスの古楽アンサンブル、ドゥルス・メモワールの歌と演奏で、ルネサンスの大家、ジョスカン・デ・プレのシャンソン集、"TANT VOUS AIME"。

15世紀後半、美しいルネサンス・ポリフォニーを綾なして、ヨーロッパ中を席巻していくフランドル楽派... その中心にいたジョスカン・デ・プレ(1450/55-1521)。ルネサンス切っての文化人、アンジュ―公のエクサン・プロヴァンスの宮廷で研鑽を積み、フランス王に仕え、イタリア・ルネサンスに欠かせないミラノ公、スフォルツァ家の支援を受け、ローマ教皇の聖歌隊の一員を務め、イタリア・ルネサンスの一大文化センター、フェッラーラ公の宮廷に招聘され... まさに、大家、であった。

というジョスカンのシャンソンを歌う、"TANT VOUS AIME(こんなにもあなたを愛しています)"。司祭でもあったジョスカン、教会音楽のイメージが強いのだけれど、世俗音楽もまたすばらしい作品を残しており、ミサでの精緻なポリフォニーとはまた違い、情感を籠め歌われるシャンソン... そこには、ソングライターとしてのジョスカンのセンスが光り、ポスト・ルネサンスを予感させるところすらあって、驚かされる。 

いや、今、改めて、ジョスカンのシャンソンを見つめ直す、"TANT VOUS AIME"。昨年の没後500年のメモリアルの成果としてのシャンソン集となるのか... 巧みにアルバムを織り成し、その多彩さと魅力を丁寧に掘り起こすレザン・ダドレ+ドゥルス・メモワール!多声シャンソンの声部のいくつかを器楽で担い、ポリフォニーよりもメロディーの持つ表情を引き立て、ミサでは味わえないジョスカンを瑞々しく展開... そうして溢れ出す人間味ある音楽!ルネサンスにしてルネサンスを越えている...

でもって、ドゥルス・メモワールの歌手陣がすばらしい!素直な歌声で、音楽に籠められた表情を丁寧に捉え、結晶のようなルネサンスではなく、ほのぼのルネサンスを紡ぎ、和む... そこに、器楽陣の、けして歌の邪魔をしない楚々とした演奏がまた乙で... 歌と相俟って、聴き手をジョスカンの世界に引き込み、魅了される。

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