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11月27日、謎多き、アフリカ、ルーツのポルトガル出身の作曲家、ヴィセンテ・ルシターノ、その音楽の興味深さ...

ロリー・マクリーリー率いる、イギリスの古楽ヴォーカル・アンサンブル、マリアン・コンソートが掘り起こす、知られざるルネサンスの作曲家... アフリカにルーツを持つという、ヴィセンテ・ルシターノのモテット集。

ヴィセンテ・ルシターノ(d.after1561)。
生没年はもちろん、苗字(ルシターノは、ルシタニア人の意味で、ルシタニアとはポルトガルのこと... )も定かではなく、謎多き人物... で、分かっていることが、ヴィセンテの母がアフリカにルーツがあったということ... つまり、ヴィセンテはムラートだったらしい。そして、ヨーロッパで作品を出版した最古のアフリカにルーツを持つ作曲家、とのこと... 実に興味深いです。さて、ヴィセンテは、司祭となり、イタリア各地で活動した後、1550年代、駐ローマ、ポルトガル大使に仕え、音楽理論の分野で存在感を示す。その後、1561年にプロテスタントに改宗し、ヴュルテンベルク公のシュットゥトガルトの宮廷に仕えようとしたが失敗に終わり、記録から姿を消す。

というヴィセンテ・ルシターノが、1551年、ローマで発表した第1小品集から、10曲のモテットが歌われるのだけれど、驚かされます。そのルーツからくるセンスもあるのか?何かひと味違うテイスト... 音楽理論で著名だっただけに、その音楽、確かな構築感があって、ルネサンス・ポリフォニーではあっても、ふぁーっと掴み所のないような印象で終わらない。で、同時代のパレストリーナ様式を思わせる?いや、もっと先にある対位法を先取りするような... という構築感、スウィートなルネサンス・ポリフォニーからすると、ぶっきら棒にも感じられなくもないのだけれど、そんなあたり、何だかブルックナーっぽい?なんて思うと、ますますおもしろい!

一方で、16世紀半ば、爛熟期を迎えたルネサンス、マニエリスムの気分も漂い... 「ああ主よ、わたしは大きな罪を犯してしまいました」(track.6)の、半音階ですが、何か?な展開には耳を疑った!ローマでの活動では、かのジェズアルド(1566-1613)にも影響を与えたと言われるヴィセンテ、それも納得の半音階っぷりである。いや、もう、新ウィーン楽派かと...

そんなヴィセンテ・ルシターノを紹介してくれたマクリーリー+マリアン・コンソート。クリアにして、存在感のあるアンサンブルが、作曲家のひと味違うセンス、率直に捉え、そのおもしろさ、しっかりと構築してくる!で、美しいです。いや、時に、現代的にも感じられる瞬間があったりで、不思議... にしても、興味深い。

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