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人見知りってなんだろう〜音楽療育やレッスンで出来ること〜

こんにちは。オトノアジト音楽教室の渡邉です。

緊急事態宣言も明け、オトノアジト音楽教室も万全の対策のうえ営業を再開いたしました。生徒さんと同じ空間で音楽を共有できるのは、やはり楽しい。

さて、今日はタイトル通り人見知りのことについてお話ししたいと思います。

オトノアジトではASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠陥・多動性障がい)等で発達が気になるお子さま向けに「発達サポートレッスン」というコースがありその一環で児童発達支援施設への音楽療育を行っています。

音楽療育では発達にあわせた音遊びやリズム練習を行い、心理的な成長を促していくものです。いわゆる「リトミック」を思い浮かべていただくと、わかりやすいかと思います。

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先日4〜5歳のお子さまへの療育の際、「お子さまの人見知りが気になっている」と保護者の方からお伝えいただきました。「人見知りをしてしまうのか、そうしたらそれを踏まえて今後のプログラムを考えよう。」と研究チームは思ったわけです、が。

人見知りってそもそもなんだろう。

そんな疑問が湧いてきました。

まずは一般的な定義を見てみます。

一般的に人見知りとは,乳児が知らない人へ示す回避反応のことであるが, 乳児期以降の子どもが見知らぬ人に対して恥ずかしがったり嫌ったりすることも人見知りと呼ばれる。

阿部香澄らによる研究「人見知りの子どもとロボットの良好な関係構築に向けた遊び行動の分析」より拝借いたしました。初対面やまだ慣れていない人に対して「イヤ!」となってしまうあの現象ですね。ある程度の年齢を越してからも人見知りが続くと、保護者の皆さんは心配になってしまうようです。

「性格だから」と諦めない

「うちの子、人見知りで〜」というセリフはよく耳にします。その言葉には、「人見知りだから仕方がない」という半ば諦めのニュアンスが含まれがちです。

先に申し上げると、私の中での結論は、こうです。

✔︎性質の1つなのは間違いないが、「この子はそういう性質/性格だから仕方ない」で片付けてしまうのは勿体無い。

これを音楽療育の場と掛け合わせると・・・「性質であると理解した上で、その子が苦なくコミュニケーションを取れる状況を作ってあげるところから始めよう」と思うのです。

これは人見知りの子どもに対してのみでなく、すべての対人関係に生かせるんじゃないかな…。「こういう性格/性質だからできないよね」は、個性の受容でありながら、その個性のポテンシャルを潰してしまう可能性もあると思うのです。

さて、では具体的にどうするか。

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文献に学ぶ「人見知りの子どもとの遊び方」

人見知りの乳幼児について、ある論文がありました。

人見知りの子どもは、社会的恐怖から誘導される高い回避傾向と、高い接近傾向を持っている可能性がある。つまり、内気な子どもは社会的交流を望んでいるにもかかわらず、その接近動機は、社会的恐怖と不安によって引き起こされる競合する回避動機によって同時に抑制されているのである。

Shyness in Early Infancy: Approach-Avoidance Conflicts in Temperament and Hypersensitivity to Eyes during Initial Gazes to Faces(乳幼児期の人見知りー初対面時の気質と目の知覚過敏における接近・回避の葛藤)の一部です。

つまり、、「相手に対して大きな不安を抱きながらも、本当はコミュニケーションを取りたいと思っている」この葛藤が人見知りと呼ばれる回避反応を生み出していると。

それに対して、前述の研究「人見知りの子どもとロボットの良好な関係構築に向けた遊び行動の分析」では、

人見知りの子どもと遊ぶ場合には,この対人不安を気にしなくても済むか,あるいは取り除いて遊べることが大切なのではないか

との見解が述べられています。

まさに前述の「性質であると理解した上で、その子が苦なくコミュニケーションを取れる状況を作ってあげるところから始めよう」と合致するわけです。

なお、この研究では10分以内の○×ゲームや 10〜20 分のかくれんぼ、さらに0〜15分間の終助詞「ね」をつけた発話(すごいね〜等)が人見知りの子どもに親近感を与えることができることを立証しています。「〜だね。」の喋り方は、音楽療育やリトミック、レッスンでも実践しております💡

「人見知り」って一言で言うけれど。

さて、私たちが「人見知り」だと思っている反応って、もしかしたら「内気な性格」以外の要因もあるんじゃないかと考えました。「人見知り」と一括りにされてしまっているが、本当は違うものだという可能性もあるのではないかと・・・。

そこで今回考えたのがHSCです。

HSCがもしかしたらただの人見知り、として片付けられている可能性があるなと。

HSCの考え方

HSCHighly Sensitive Childの略称で、生まれつき周囲からの刺激や他人の気持ちにとても敏感な子どものことを指します。HSP(Highly Sensitive Person)というワードは、最近よくテレビでも取り上げられますね。

ソクラテスのたまごさんにより詳しい説明があります。

彼らは常に緊張状態にあったり、いろいろなことを気にしすぎてしまったりするために、不登校に陥ることもあります。いろいろ考えすぎてしまってコミュニケーションが上手くいかないのです。

この様子が、「人見知り」として括られてしまうケースがあるのではないかと。

ASDには感覚過敏も広く見られるため、療育に通っているお子さまがHSCである可能性もあると考えたのです・・・が、ASDの場合は共感性が欠如している場合も多いため、HSCの特徴「他人の気持ちに敏感」は当てはまらないかもしれません。

しかし、発達障がいではなくて「人見知り」と呼ばれるお子さまがHSCである可能性は大いに考えられるのではないかと。

HSCは人一倍マイナス感情を深く捉えてしまう反面、心の充足を重んじるためにアートや音楽に興味を示す傾向にあります。

HSCの子どもにとって、音楽ってとっても良さそう。

というわけで、音楽教育現場では具体的にどう動けばよいのか考えてました。

①マイナス感情を認知させないよう、否定的な言葉を使わない、言葉と表情の不一致を生まないなどの配慮を徹底する(自己肯定感を育む)。
②聴覚が敏感なことを踏まえて、使用する音楽は穏やかなものから始めてみる。
③なるべく多くのアートや音楽に触れさせて、心に充足感を与える(心の琴線に触れるアートや音楽に出会うための手助けをするニュアンス)。

こんなところを意識してレッスンや療育をしてあげると、過緊張を抑えながら心の充足を促せるのではないでしょうか。③ができるのは音楽教育ならではですね。

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さいごに〜人見知りの「治し方」〜

「人見知りが治った」という状態は、その子にとって最も適切な「人に対する考え方・人に対する感情の処理方法を見つけられた」というのが正しいと考えます。

よく言われる「人とたくさんコミュニケーションを取ると治る」というのも強ち間違いではないと思いますが、それは「人への慣れ」によって治るというよりかは、人と接する状況を複数回経験することで、「自分が苦なく話せるシチュエーションはこれなんだ」と学んでいくことによる「治る」なのではないでしょうか。

オトノアジト音楽教室が展開する音楽療育では、お子さまがなるべく楽しく、そして早く、その「治る」に辿り着けるようなレッスンをしています。多くの人見知りで悩んでいるお子さまが「こういう状況だったら喋れるぞ!」と思える成功体験を、オトノアジトが提供できるようにしたい…とぼやきまして、本日の研究記の結びといたします。

今回はHSCという切り口から人見知りについて考えましたが、今後も多角的に子どもたちの様子を分析していこうと思います💨





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