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環境を変えたくて島に来た。自分と向き合う毎日のなかで見つけたものとは。

大学卒業後、3年間勤めた小学校の先生という仕事を離れ、飛び込んだ大人の島体験。環境を変えた先で出会った、自分自身の姿とは?


島根県の離島、隠岐島前地域で大人の島留学・島体験に参画した皆さんの来島前・来島後、そしてこれからについてお届けする「私、島で働く。」

来島のきっかけから島での仕事・暮らし、自分自身の変化など
1人1人のストーリーをお届けしています。


森久 あずきさん 取材当時25歳 千葉県出身
R5年度5月期大人の島体験生として来島

今回は、R5年度島体験5−7月生として海士町に来島
その後3ヶ月の延長を経て、9月から島前ふるさと魅力化財団で知夫村のコーディネーターとして働いている森久あずきさんにインタビュー。

来島から約半年。島での生活を通して感じたことや、これからのことについてお聞きしました。



自分は何を選びたいのかを考えたら、島留学に出会った。

大学在学中に、教員免許を取得しました。
大学卒業後は、そのまま教員になる予定はなく、色々な場所を旅しながら経験を積みたいと思っていて。
そんなとき、大学を歩いていたら偶然教授に「ねえ、小学校の先生やってみない?」と声をかけられ、なんだか面白そうと思って「はい、やってみます!」と答えました(笑)

でも、ずっと続けるつもりはなかったんです。
仕事がつらくて1年目が終わったときに辞めようと思ったけれど、職場の先生たちが素敵な方で。一緒に働きたいという気持ちがあったので3年間続けました。

いろいろな経験をして、いろいろな人と出会いたいと思っていたので、3年目が終わったタイミングで1度仕事を離れましたが、またいつか先生をやりたいと思っていました。


インタビューの様子


仕事を辞めてから、ワーホリに行ったり、旅に行ったり、大学時代にやっていた大好きなラクロスに費やしたりするのもいいなと思っていて、いろいろな選択肢があって悩んでいました。

こうやって悩んだときは、ノートに気持ちを書き出すんです。
周りの人の目を気にしないで自分は何を選びたいのか考えたときに、どこかに行って環境をがらっと変えたいと思いました。
それで調べていたら島留学/島体験に出会い、参画を決めました。

事業所を選ぶにあたり、島に来たときには2つ選択肢がありました。
一次産業などの今までと全く違うことをするか、島の小学校に入らせてもらうか。今までと違うことを経験するのはすごくいいなと思っていました。
でも、いずれまた先生をやりたいという気持ちがあったので、海士小学校に連れて行ってもらって、校長先生と話したり学校の雰囲気を見たりして、ここだ!って決めちゃいました。
 

教員経験があるからこその難しさと、島で感じた新鮮さ

最初の3ヶ月間働いていた海士小学校では、先生たちのお手伝いや事務作業、子どもたちの支援が主な業務でした。
私は2年生の支援を中心にしていました。本土にいたときに自分も担任をやったことがあるけど、今回は立場が違うから難しくて。
自分に教員の経験があるからこそ先生の気持ちがすごくわかる反面、自分がいることで先生がやりにくく思うこともあるだろうなと思っていました。

そのときに意識していたのが、何をしたら先生がうれしいと思うかということ。前に出すぎず、先生たちが、普段自分でもできるけどやってくれたらありがたいと思ってもらえるような仕事をしていました。

子どもたちと、明屋海岸まで遠足

学校の中に島体験生や島留学生がいる環境ってとても特殊。
本来はいない存在だけど、いたら多分すごくありがたい存在なのかなと思います。自分が担任をやっていたときのことを振り返って、そう感じました。

自分もそんな存在になれていたら嬉しいし、そのとき自分を受け入れてくれたみなさんにとにかく感謝を伝えたいです。

島の小学校で働くなかで、業務内容は元々自分がやっていたものと似ていたけれど、新鮮なことがたくさんありました。

たとえば、遠足とかも島の中で完結するからこそ、地域と子どもたち・先生との距離が近かったり。みんな島に住んでいるから、地域の行事とか、その後の集まりでは先生も子どもたちも保護者のかたも一緒になってご飯を食べるんです。

島のそういうところがいいなと思っています。
東京で働いていたときは、プライベートで子どもたちと会うことはなかったから。

給食を綺麗に食べる子どもたち


それを月次報告書に書いたときに、教頭先生が「自分たちにとって当たり前のことに、価値を見出してくれて嬉しい」と言ってくださって。

島では当たり前のことも、自分にはすごく新鮮に感じる。
それを伝えていくことで、学校にとっての新しい風になれるんじゃないかなって。
 

悩みは尽きないけれど、それもいい経験だと思う。

9月からは、知夫村のコーディネーターをしています。
まだ掴みきれていない部分もあるけど、一緒に働いているコーディネーターさんを見て、村での人脈とか知識をいかして島体験生・島留学生と事業所を繋いだり、相談に乗ったりしながら知夫村の色々なことに携わる仕事だなと感じています。

自分はまだ知夫村のことも詳しくないし、コーディネーターと名乗るのに複雑な気持ちがあって、「見習い」って言いたくなっちゃうんです。
体験生の研修に入ることもあるんだけど、自分も体験生だから、と一歩引いてしまう気持ちもあって。

でも、体験生の立場だからこそわかることがあると思うので、それを日々模索中です。

新しい仕事になって悩みが尽きないけれど、昨日1つだけ解決したことがあって。
知夫村のことをよく知っているからコーディネーターができるって思っていたんです。そうじゃなくて、「コーディネーターをやっていくうちに知夫村のことを知って、事業所との関係性を築くことができるんだよ」と師匠に教えてもらいました。

牛のお世話をしながら、悩みを聞いてもらう時間が好き


 
仕事を変えたタイミングって、3ヶ月間海士小学校にいて先生や子どもたちとの関係もできてきて、これからだぞっていうときだったんです。

海士小のことも大好きだったので、9月に仕事を変えるのは自分にとっては大きな挑戦でした。でも、海士小の校長先生が「いつでも戻ってきていいよ、帰ってくる場所にしなよ。」と言ってくれて。
その言葉があったから一歩踏み出すことができたかな。
自分のやりたいことを考えて違う道を選んだからこそ、悩むことも多いです。でも、それもいい経験だと思って今の仕事をやっています。
 
 

島では、自分と向き合う時間が増えた。

もともと一人暮らしだったから、シェアハウスという環境になれるのが大変だったかな。
もちろんシェアハウスの子たちは大好きだけど、1人になりたいときは船小屋でよく絵を書いています。

個性豊かなキャラクターたち



島では、自分と向き合う時間が増えました。
 
それで気がついたのは、やっぱり先生という仕事とか教育に興味があるということ。あとは、島にいる自分が好き。
東京にいるときと生活が違うのもあるけど、環境や人の大事さをより実感しています。「なにをするかじゃなくて誰とするか」ってよく言うけれど、それにすごく共感できて。
最近は「どこでするか」も大切だと思うようになりました。

この景色をみると頑張れる!

海士町では、みんながあったかい。
東京での自分はたくさん人がいるなかの1人のように感じていたけど、海士町では自分を大切に思える気がする。

シェアメイトとごはん作り


 

繋がりはとても大切だけど、それが全てじゃない。

最初に島に来るとき、自分に嘘をつかない人間になりたいと思って来たんです。
自分が思っていることを素直に伝えたいけど、普段からめちゃめちゃまわりを気にするタイプだから結構難しくて。
今はそれを自分のなかで消化中です。

もやもや解消には、スポーツが1番


 
東京にいるときは、とにかく繋がりを求めていたと思います。
社会人になってから、いろいろな人と出会いたいという気持ちが大きくて、たとえば飲みに誘われたら絶対行く、みたいな(笑)
それで繋がりは増えたけど、立ち返ったときにその人たちと今でも繋がっているわけではなくて。

島体験の最初の3ヶ月が終わったときは、「人とのつながりが大切!!」ってすごい言ってた。
繋がりがあったから海士町に残りたいって気持ちも増えたし、色んなことを知れたし、あたたかく接してもらえて。

でも最近は、繋がりだけが全てじゃないと思っていて。
自分のことも大切にしたいと思っています。そうしたら、周りの人のことももっと大切にできるんだろうなって。


限られた時間のなかで、会いたい自分に会いに行けるように。

9月から仕事が変わったばかりで、働く場所も海士町から知夫村になったので、今は大きな環境の変化に慣れていってるところです。
まだ仕事でわからないことも多くて1人じゃなにもできないと思っていたんだけど、とにかく動いてみるしかないなって。
島体験生とか、事業所の人と話して知っていくことで、少しずつ関係性を作っていきたいなと思っています。

内航船で知夫村へ!





どんな自分になりたいか、とかはわからないけど、「会いたい自分には自分から会いに行く」。
これは他の人が言ってた言葉なんだけど。(笑)
なりたい自分には、自分から会いに行けるように頑張ろうって今思っています。


ちなみに…来年も島に居ようと思っています!!!
何をするかはまだわからないけど、島で穏やかな日々を過ごしていけたらなと思います。

 大人の島留学という制度に出会えてよかったから、色んな人にもっとこの制度を知ってほしいです!そのために何ができるかは、目の前のことをやっていくなかで見つけていきたいです。

私も日々壁にぶち当たることも多いけど、一緒に頑張っている島留学生のみんなの一日が少しでもハッピーなものになったらいいな。

島にいる自分が好き。島に来たから、出会えた自分


新しい環境に飛び込むことで、
もしかしたら今までよりも、悩むことが増えるかもしれません。

大人の島留学・島体験という選択の先にあったのは、
自分の在り方に悩み、模索し、行動する日々でした。

でも、そんな日々の積み重ねが、なりたい自分に近づけてくれるような気がします。


(R5年度10-12月 大人の島体験生:山本)

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