しがむ

昭和57年(1982)生まれの大人漫画趣味者です。もともとユーモア文学やナンセンス文学…

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昭和57年(1982)生まれの大人漫画趣味者です。もともとユーモア文学やナンセンス文学に関する古書蒐集を趣味にしていましたが、いろいろと関連がある大人漫画がおもしろいので紹介してみたいと思います。と言いながら、最近はエロマンガ(ナンセンス系、4コマギャグ系)に関心があります。

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はじめに。大人漫画趣味について。

 蒐集している「大人漫画」に関する記事を書きます。衰退した「大人漫画」の良さをいま味わいたいと思います。  「大人漫画」とは何なのでしょうか。マンガ史やマンガ批評でたまに語られる言葉ですが、明確な定義はないようです。  その発端と考えられているのは、昭和7年に結成された「新漫画派集団」です。岡本一平系の近藤日出造、杉浦幸雄、田中比佐良系の麻生豊、大羽比羅夫、堤寒三系の横山隆一、下川凹天系の石川進介らがメンバーで、他にも、松下井知夫、井崎一夫、根本進らの「三光漫画スタジオ」、秋

    • 原作・デビル西条/劇画・さわらみつとし『蜜のささやき』

      「諸君!?」 「女を襲うときは訴えられる心配のない相手を選ぶことだ」 「俺が手本を見せてやる 君達も参考にするといい」  ということで、原作・デビル西条/劇画・さわらみつとし『蜜のささやき』(サン出版、昭和59年)です。いきなり強姦指南を始める男が登場し、全11話にわたって強姦をしていきます。  カバー袖の「SEXハンター、今日の獲物は純真な乙女の仮面をつけた女たち!」という惹句が示すように、裏表のある女たちをこの男が強姦し、訴えられることなく私的復讐を遂げるという話です

      • 出井州忍『お姉さんの性教育』

        「コンニチワ♥️男のコたち!」「ゼミが始まる前に女のコのカラダのこと教えちゃうぜ うふッ♥️」  というわけで、出井州忍『お姉さんの性教育』(辰巳出版株式会社、昭和62年)です。「快感ゼミナール」ですから、非常に勉強になります。性教育マンガの秀作ですね。童貞も非童貞も一応は目を通しておくべきでしょう。知らないことがけっこうあったり、反省させられたこともあったりしました。  全11講。「ボク」は埼玉県某市に住む童貞の男の子。オナニーばかりの日々から脱出したい、そうだ、「

        • すぎうらあきと『処女幻影―ILLUSION―』

          「教授……」 「寒いの……」 「舐めて……死んじゃう」 「ジュル!」 「ジル!グジル!」 「ジルルル!」 「ブチュ ブチュ!」 「ムフ〜〜ッ」 「フ〜〜ッ」 「この味は」 「赤……!」 「ボタ…ボタ!」 「血への」 「想い出……」  ということで、すぎうらあきと『処女幻影―ILLUSION―』(サン出版、昭和59年)です。すぎうらあきとの最初の作品集。全13篇。ほとんどせりふのない物語から始まって、少し驚きました。  重い!とっても重いです!哀切だなあ。  父と娘の近親

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        はじめに。大人漫画趣味について。

          青山俊一『ボディチェック』

          「アキオ 何ンて事してくれたんだ きみは!」 「淫乱なロボットにしたくなかったんで動かすなと言ったんだ」 「若い者はすぐにセックス相手のロボットにしてしまう!!」 「いいかげんにしてくれと言いたいッ」 「あ〜〜ッ 出ていけーッ」  ということで、青山俊一『ボディチェック』(松文館、発行年不明)です。全13篇。「表情のない絵」にそそられたのですが……。青春物あり、獣姦あり、近親相姦あり、SFあり、バラエティに富んだ内容なのですが、どれもいまひとつ常識的で、これはというインパク

          青山俊一『ボディチェック』

          堀川英晴『快感ビデオGAL』

          「オーッすっぱい お口が曲がりそう」 「これでオシッコまでレモンの匂いがするぞ へへへ……」 「ついでにもう一個……」 「オメ丸ちゃんに」 「プレゼント」 「ンしょっと!」 「きゅっ」  ということで、堀川英晴『快感ビデオGAL』(サン出版、昭和59年)です。全12篇。狂った設定がすばらしい。堀川のエンターテイナーとしての実力が発揮されています。どの話も主人公は淫乱なギャルで、「実はわたしブルー・デイなンです」「私きょうから白衣の天使になるんです」「ケヘッ 実は私アルバイト

          堀川英晴『快感ビデオGAL』

          原作・西塔紅一/劇画・山崎亨「ピンキー・ベラ」

           「ズッコケてもいい 包茎でもいい 銀行強盗でもいい まだ間に合ううちにやっちゃおう 我ら青春の解放戦士!」  ということで、原作・西塔紅一/劇画・山崎亨「ピンキー・ベラ」(『漫画アクションコミックス』1979年8月24日号)です。「ギャング・ギャグ・コミック」だそうです。  「遅れて来たギャング」「オネエサマの要求」「包茎友の会」「お小水の味は?」「馬ナミおじさん」「ド迫力のナキっぷり」「バストにご用心」の7話仕立て。「ピンキー・ベラ」以外には、白木卓のナンセンス漫画「

          原作・西塔紅一/劇画・山崎亨「ピンキー・ベラ」

          『BSマンガ夜話:宍倉ユキオ篇』

           お遊びです。私は『BSマンガ夜話』が今でも好きなのですが、大人漫画系の人々は無視、もしくは悪口雑言の対象にされてきたので、あえて大人漫画出身で4コママンガの中でも出演者の皆さんが評価したがらない「宍倉ユキオ」篇を文字起こし風に作ってみました。念のため言っておきますが、出演者の皆さんはこんなこと言ってません。同じようなことを言っている場合でも、それは業田義家『自虐の詩』についての発言をところどころ利用しただけです。出演者の皆さんに謝罪いたします。先生方、申し訳ありませんでした

          『BSマンガ夜話:宍倉ユキオ篇』

          植田まさしの初期作品について

           植田まさしという漫画家は、一般的には4コママンガの第一人者という印象を持たれていると思います。しかし、たしかに、ばるぼら「四コマ漫画の巨匠・植田まさしを読み解く!来るべき植田将まさし批評のために」(「WEBSNIPER」)が指摘しているように、マンガ批評で彼の作品について聞くことは少なく、黙殺に近い扱いを受けているようです。ばるぼら氏は『植田まさし大全』のための資料を準備されているくらいの「植田まさし通」のようですが、上記の記事で植田の初期作品について言及しています。  

          植田まさしの初期作品について

          昔日の呉智英先生へ

           僕は呉智英という評論家が好きです。それは、氏がかつて『BSマンガ夜話』において、業田義家『自虐の詩』に対する狂信的とも言える思いを披瀝されて以来のことで、その時、氏が熱弁を振るいながらとても幸せそうな顔をしているのを見て、「ああ、よろしいな。」と思ったのです。夏目房之介氏とともに『復活!大人まんが』を出されたことも尊敬している理由の一つです。  しかしながら、呉智英・高橋春男「ギャグマンガ恫喝対談 啓蒙するマンガは焚書にせよ!」(『宝島30』1994年3月号)における氏の発

          昔日の呉智英先生へ

          獅子文六の諷刺漫画批判

           昭和の流行作家であり、演出家でもあった獅子文六(本名岩田豊雄)は、明治26年(1893)生まれ、昭和44年(1969)に亡くなっています。令和元年(2019)は没後50年ということで、近年、ちくま文庫を中心に多くの作品が再刊されています。  那須良輔による獅子文六の似顔絵。徳川夢声『いろは交友録』(鱒書房、昭和28年)より。  僕も長年ユーモア小説を集めていますので、獅子文六の著書も数多く架蔵しているのですが、個人的には小説よりも随筆のほうに親しんでいます。彼は随筆のな

          獅子文六の諷刺漫画批判

          大人漫画趣味者の投票行動

           皆さん、選挙には行かれていますか。  特に衆議院議員選挙の場合は、首相が「伝家の宝刀」を抜いたりして、「ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい」となると、こちらも「すわっ、選挙や!今度こそお仕置きしたる!」と興奮しますよね。  では、大人漫画趣味者はどういう投票行動をするのか、僕をサンプルに、解説しましょう。  まず、選挙は代議員を選ぶものです。彼ら彼女らはあくまで代議員ですから、我々の声を反映するだけでよいのです。余計なことはしなくてよいです。ですから、本当はAIでよい

          大人漫画趣味者の投票行動

          山田英生編『温泉まんが』には入れてもらえない大人漫画:井崎一夫『温泉ツーさん』と田崎友彦『草津漫画読本』

           山田英生編『温泉まんが』(ちくま文庫、2019年)という本があります。杉浦日向子、つげ義春、つげ忠男、ますむらひろし、白戸三平、楳図かずお、上村一夫、池辺葵、刀根夕子、松森正、楠勝平らの「温泉まんが」が一冊で楽しめる良い本だと思います。  ところが、大人漫画にも温泉漫画があるのに、収録されていないのです。温泉漫画というのは大人漫画にいかにもありそうではありませんか。そう、あるのです。今回は、井崎一夫『温泉ツーさん』を紹介いたしましょう。ついでに、大人漫画ではないのですが対

          山田英生編『温泉まんが』には入れてもらえない大人漫画:井崎一夫『温泉ツーさん』と田崎友彦『草津漫画読本』

          大人漫画趣味のための参考文献

           大人漫画といっても過去のものですし、どうやってそれらの作品に触れればよいのか、歴史的にどのように語られ、評価されてきたのか、わからない人も多いと思います。以下は僕が読んできた書籍や雑誌の一部で、著者名順に並べてみました。ただし、漫画そのものや作品集、展覧会図録は記事にしますので除いています。簡単なコメントを附しておきましたが、個人的な感想なので気にしないでください。お好きなものからどうぞ。随時更新します。 赤塚不二夫『赤塚不二夫が語る64人のマンガ家たち』立東舎文庫、立東

          大人漫画趣味のための参考文献

          大人漫画と僕

           自分と大人漫画とのかかわりについて、少し述べておきたいと思います。かつて僕は『BSマンガ夜話』という番組のやや熱心な視聴者でした。僕は、学習まんがを除けば、幼い頃からマンガを読んでいたほうではなく、むしろかなり幼い頃から文学(特に小説)に関心を持っていた少年だったので、この番組で大人がこんなに熱く語っている「マンガ」とはどういうものなのだろうと興味を覚えました。でも、取り上げられているマンガはなんか自分には合わないなと思っていて、田舎の中学生なりに独自に切ない努力をした結果

          大人漫画と僕

          富永一朗の貸本時代

           富永一朗は昭和26年(1951)に上京し、帝国興信所で働きながら投稿生活を続けていたいっぽうで、子供向けの貸本漫画を描いていました。富永の「わがポンコツ人生航路」によれば、それは三年ほど続き、A5版96頁で25000円という破格の待遇であったようです。  その中の一冊と思われるのが、『北風小僧』(きんらん社、昭和31年)です。表紙に「近藤圭子の歌」とか「まんが物語」と記されているように、これは「歌と映画のまんが物語」というシリーズの一冊で、A5版100頁、定価150円でし

          富永一朗の貸本時代