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原作・西塔紅一/劇画・山崎亨「ピンキー・ベラ」

 「ズッコケてもいい 包茎でもいい 銀行強盗でもいい まだ間に合ううちにやっちゃおう 我ら青春の解放戦士!」

 ということで、原作・西塔紅一/劇画・山崎亨「ピンキー・ベラ」(『漫画アクションコミックス』1979年8月24日号)です。「ギャング・ギャグ・コミック」だそうです。

 「遅れて来たギャング」「オネエサマの要求」「包茎友の会」「お小水の味は?」「馬ナミおじさん」「ド迫力のナキっぷり」「バストにご用心」の7話仕立て。「ピンキー・ベラ」以外には、白木卓のナンセンス漫画「太陽がドンブリいっぱい」という短篇が収録されています。

 二十歳、友も両親もなく、自称一流の下くらいのモデルだったベラちゃん。「売春はイヤ」「男は買って遊びたい」というのに、ルーズでモデルをクビになり、銀行強盗をしようとします。ところが、拳銃も出す前から失敗してズッコケていると……すぐ後から別の銀行強盗が!機転をきかせて行員らに強盗を追わせ、自分は空の店内から金を奪って逃走。テンポよく、都合よく、話は進みます。そして、その大金で買った男がその失敗した銀行強盗の青年「波男」(漁師の息子、真性包茎)。ウブな坊やにセックスを教えてあげて、その上銀行強盗の相棒にします。さらに、強盗先の銀行で、トルコ風呂通いのために横領を重ね銀行員として出世の道もない「伊藤ちゃん」(丸眼鏡に坊ちゃん刈りの不細工、仮性包茎)を仲間に加えます。さらに、押し込み先の家にいた浪人生の「一郎ちゃん」(菱井銀行の25番目の取締役の息子で東大五浪中、母親に隠れてするオナニーが趣味、おそらく包茎)、一郎ちゃんの父親の愛人「レミちゃん」、レミちゃんに会いに来ていた民自党総裁の「中田先生」(田中角栄似、極巨根)も仲間にして、先生の力で窮地を脱します。男たちは先生に雇われることになり、ベラは愛人生活となりますが……。

 退屈してしまったベラちゃん、中田先生から逃げて、荻窪は善福寺川沿いの幸福荘に隠れ住むことになりますが、魅力的なベラちゃんのもとには、男どもが集まってきます。劇画家の香川、ミュージシャンの佐田、浪人生の三条、失業者の猪熊指名手配犯の正男。退屈なベラちゃんは、旧知の芸妓「冷奴」(一郎ちゃんの父親のもう一人の愛人)の紹介で、元国防庁長官の「高野」に芸妓・玉奴として引き合わせてもらい、高野の秘書を取り込んで、アパート住人の男どもと一緒に高野の汚職の三億円を強奪しようとしますが……。

 「幸福荘の夜はふけていく」「三億円強奪作戦を胸に秘めて若者たちはそれぞれの夢を抱いて……」「だがやがて明日の朝刊で高野逮捕のニュースを知るだろう」「でもこれは遊戯なのだ」「若者よ眠れ幸福なユメをみていくらでもチャンスはあるのだ」

 物語は無計画でテンポが良くて、ギャグもところどころに混ぜてあって、誰も死ななくて、エロさを抑えた、とても爽やかな「青春艶笑アクションコミック」といったところでしょうか。一瞬、続きが読みたいとも思いましたが、同じような話の繰り返しになることは分かりきっていますから、まあ、十分かなと。

 主人公のベラちゃんのキャラが、いま一つ立っていないのが不満でした。内面性がよくわからないですよね。空虚で無軌道な青春を象徴しているのかなと思わせるのですが、それにしては平和に物語が推移してしまっています。ちょっと期待外れかなあ。あと、前半の男たちの「包茎」が物語の進行上でほとんど意味を持たせてもらえていないところが、非常に不満でしたね。

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