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視覚に囁く『小ご絵』

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いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある…
運営しているクリエイター

#エッセイ部門

夢と現実。

 AIはAGIを経てASIに進化するそうだ。AIの真ん中に割り込んでくるGはGeneralで、SはたぶんSup…

騙してくれて、ご苦労さん。そして、ありがとさん。

 まんまと詐欺師の口車に乗せられるところだった。その巧妙で、ほんのり甘い囁きに唆されそう…

みんなの後遺症。

 罹患してないから関係ない、なんて早合点しないで。陽性になった人もならなかった人も、この…

その顔の理由。

 最近コンビを組んだカメラマンが、親しくしていたカメラマン仲間の話をぼそっと語ってくれた…

最近テレビが面白い。

 テレビは面白くなくなった(沈みゆく船が次第に傾くみたいにして)とずっと思っていた。画面…

初恋は深窓に閉じ込められている。

 そこはちょっと不思議な街だった。西岸良平さん(漫画『三丁目の夕日』で有名な方)の描く世…

しないことをする旅。

 いつの頃からか、しないことをする旅が増えた。雑踏を避け、空気の伸びやかさと清冽さを心の舌で転がし、囀りや清流や季節の虫の音に聞き慣れない音階を見つけ、酔い、息を呑み、見過ごしていた生命力の違いが味覚に現れる不思議に目を丸くする。ふだんの生活圏では流れない春に溶け出した雪のような時間に、気づきの刺激が甘やかに染み込んでくる。歯切れのいい感嘆符がつながれば、主に祈る間もなく望みも喜びも満ちていき、溢れ、こぼれる。  観光地の一つや二つはまわってもいい。いつどこに行ったかその楔

お次。

 深大寺に行く。十割蕎麦と蕎麦の洋菓子目当てに電車とバスを乗り継ぐ。植物園を経由すること…

大人の英断。

 名も顔も知らぬ彼が言う。「時代が変わってしまったんだよ」と。  買えば済む時代が、モノ…

おいしかったぁ。

 何度も何度も、そしてまた繰り返し何度も断ったのに、「お願いしますよ」の波状攻撃に、つい…

ありがとさん。

 村上春樹氏の新作をひとブロック読んではひと休み。700ページに迫る重量級の大作を書き上げ…

以心伝心。

 君が遠くにいるみたいだ。こんなに近くにいるのに、心が離れている。  だけど。  ふれあ…

『芸は身を助ける』の考究。

 経験は森林の奥地に佇む湖の底に積もる澱のようなものだ。撹拌すれば舞い上がり、心を乱す。…

街と、その壁の、不確かな展開。

 ひと区切りごとにひと休み。70分の1を読み終えるごとにひと休み。読み終える悲哀が日々募っていくとわかっているから、一言一句をなぞって追う。軽んじてしまったセンテンスは、落としてしまったハンカチを拾い上げるみたいにして振り向きつまみ上げ、読み飛ばそうとしてしまった後悔を埃に変えて吹き飛ばし、なぞり直す。見落としなんてもったいない。6年ぶりの長編小説、誰よりも先駆けて卒論を氏で書いた身としては、最後になるやも知れぬ作品に、全精力を傾倒し臨む。  まだ70分の6に達したばかりだけ