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視覚に囁く『小ご絵』

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いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある… もっと読む
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2023年6月の記事一覧

【二輪の景色-21】適合者。

 健康、意欲、ヘルメット。意志に、工具に、見た目のよさも不可欠かな。魂が宿っていなけりゃ…

【二輪の景色-20】パステル画のように。

 油絵は経験みたいなもの。重ねていって完成度を高めていく。やり直しのきく人の道。望めばま…

【二輪の風景-19】気づかれない変化。

 箱入り娘だった。  親の言うことを素直に聞いて、反抗期らしい反抗期もなく、大学を出て希…

【二輪の風景-18】舞う。

「怖いと思っても、あとには引けないことってあるでしょう? 覚悟を決めなさい。バイクにはこ…

三日月にされた私。

 弘法筆を択ばずというが、鍛錬途中の半人前にとって、執る筆が思うように動かねば、目論見ど…

【二輪の風景-17】サーキットの狼に俺はなる?

 エリック・ビューエル氏は、ハーレーの鈍臭さに、魅力は感じていたものの苛立ちも同時に抱え…

【二輪の景色-16】泊まりにきたよ。

 大学を卒業してからずっと会っていなかった友がいる。お互い忙しかったもんね。金融商品扱ってると、お上に内緒でブラック残業、ちと堪えるけれど、キャリアアップの通り道。 「そっちはどう?」  欠かさぬLINEのやり取りで、向こうは向こうで3年間の長期休暇みたいなものが収束し、超多忙なれど嬉しい悲鳴にてんてこ舞いの毎日だということは知っていた。  いいことだ。旅館の若女将業も板についてきた頃だろうし、そろそろ行くか。  銀山温泉は、東京からだと夢の先ほど遠くにあった。これまでトレ

【二輪の景色-15】幻のアートギャラリーで。

 そのアートギャラリーは一風変わっている。オートバイにまつわるものならなんでも取り扱う。…

【二輪の風景- 14】雨の日も想う。

 大人のキャンパーは、焚き木で夜空を見上げたあと、リゾートホテルのふかふかベッドで眠りた…

雨の幕、じき開く。

 春から夏にかけて、心にかかる霞のような避けては通れぬ梅雨がある。  今年の梅雨は、潔さ…

犯人は誰だ?

 近所のメス野良が子猫を産んだ。近隣の植木から他人の庭へ、かくれんぼの鬼から逃げ回るよう…

【二輪の景色-13】行き違い。

 バイクは時にヨーヨーのようだと思うことがある。どれだけ足を伸ばしても、糸が目いっぱい伸…

剣でもなくペンでもなく。研で戦え。

 今の大人は1世代前の大人と少し違って「大人ならこうあるべき」という枠を自分にはめなくな…

【二輪の風景-7】昭和の写真から。

 父はセピアに変色した昭和のモノクロ写真に、ガキンチョのまま閉じ込められていた。臍は曲がっているくせに一度こうと決めたらテコでも動かぬ一本気の性格が、ガキンチョの父からシュワシュワと吹き出していた。今とちっともかわっちゃいない。過去の父と直接対峙したことのない僕は、今を起点に過去の父をとらえるとそういうことになる。  写真の父には、今の僕の年齢からすると年端もいかない子供のくせに、有無を言わさぬ威圧感があった。大人になった父の威を借る子供ではない。子供のうちからそうした威厳と