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犯人は誰だ?
近所のメス野良が子猫を産んだ。近隣の植木から他人の庭へ、かくれんぼの鬼から逃げ回るように仮り暮らしの日々を切り抜けている。
このメス野良の姿は以前から見かけていた。1軒置いた隣の独居老婆によれば「手を出すと爪を出す」人に懐かない猫らしい。大家さんちの若旦那は糞尿被害に顔を顰め、猫よけマットを敷き詰めている。野良に寄せる思いは好きか嫌いか、明確な線引きがなされている。
さわらせはしないが、撫でようともしない人間には関心を示さず、3メートルも離れていれば気ままに毛繕いなんかを始めたりする。だけど、半歩でも近づこうものならそれを殺気と捉え、身を緊張で強張らせる。
家と家の間の猫の額ほどの路地散歩を日課としている節があり、3階の窓から見下ろしているとたまに気付かれることがあって、不思議そうでいて面白くなさそうな目で見上げられることがある。すると見上げたままフリーズする。しばらくそのままでいるのは、猫の脳味噌くらいの知能で、あれこれ考えているからだと察せられる。さしずめ「猫は人を高いところから上から目線で見下ろすはずの存在なのに、逆転劇はなぜ起こる?」と理不尽の究明に余念がなくなるせいだろう。
顔は可愛くない。警戒心の塊みたいに鋭角的だ。耳に印もないことから、これまで人間の魔の手?愛の手?から逃れ続けてきたことがわかる。だから産んだのだ。
近隣の誰もが考えているだろうことがある。野良はこのメス猫以外、見かけることがない。だとすればどこぞのオスの飼い猫が。
犯人は誰だ?
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