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雨の幕、じき開く。

 春から夏にかけて、心にかかる霞のような避けては通れぬ梅雨がある。
 今年の梅雨は、潔さに欠けて傘より日傘の出番が多いように思うけど。けどそのせいで、気象予報士、体裁繕うのにおおわらわ。「週の後半は雨の日が多く……」だなんて、声高々に入梅を宣言してしまったものだから、言い訳みたいにして力づくで梅雨どきらしさをアピールしにかかってる。
 いいじゃないの、週の半分晴れていたって。この時期の予報は外れたって悲しむ人はそういない。
 天気のプロフェッショナルが梅雨入りしたと発表したなら、それはそれで通さにゃならん筋がある! そりゃそうだ。筋を通したい気持ちはわかるけど、外れりゃ心中土砂降りな気分になるのもわかるけど、鑑定料金が要りような占い師だって「当たるも八卦」と半分外れることを公言して憚らない。ましてや無料の天気予報、予報士のプライドにかけてと当の本人意気込んでいるのかもしれないけれども、聞く方は「あ、そ」てなくらいに素っ気ない。
 それでも、明けないことにはすっきりしない梅雨の時期。今、気象予報士に期待するのは、予報が当たること以上に、早く梅雨明け宣言してほしいこと。

 梅雨という時期は、雨が降ろうが降るまいが、心にどんより雲をかける。ヴェールがかかる。その緞帳どんちょうのような足枷の思いを1日でも早くパッと取り除いてくださいな。

 心に傘がかかっているうちは、傘の内のその人が美人かどうかもわからない。

 まもなく夏の幕が開く。
 視界を鈍らせていたヴェールが取り除かれたら、伏せ目がちだった目線が朝日のように上がってくる。その先に見えてくるものは。

 きっと新たな出会いが待っている。期待値はふくらんでいくばかり。

 今年の夏は、するぞ。

【伏せ目がちでは気づけない新たな視線を見つけに】

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