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香水―ある人殺しの物語


香水―ある人殺しの物語

 十八世紀、大革命前のフランスを舞台にした小説です。
 とはいえ、華やかな宮廷ロマンではありません。

 けれども、宮廷ロマン以上に、わくわく、どきどき、面白いです。
 奇譚【きたん】という言葉がぴったりの、奇想天外な物語です。

 主人公は、一般庶民です。それも、捨て子の出身です。当時の底辺階層といえるでしょう。
 普通なら、一生、底辺をはいずるようにして生きるはずですが……彼には、とてつもない能力がありました。

 イヌ並みに、嗅覚が発達しているのです。一度、嗅いだ匂いは、決して忘れません。
 その能力を生かして、彼は、香水調合師の弟子になります。そして、自分が思うとおりの香りを、再現します。
 師匠の名を借りて、彼は、魔法のような香水を、次々に世に送り出します。

 では、本書は、貧しい庶民から、名声あふれる一流の香水調合師への成り上がり物語かといえば、そうではありません。

 主人公には、嗅覚以外に、特別な能力がありました。世間一般で言う「倫理」というものを、まったく、持ち合わせないことです。
 簡単に言えば、人を殺すことを、何とも思いません。

 彼は、何人もの人を、何の罪悪感も持たずに、殺してゆきます。
 何のために? これが、また、普通の人には、思いもよらない動機です。彼の嗅覚に関係しています。

 ある時、彼は、彼が思う「究極の香り」に、出会ってしまいます。
 それ以後、彼の人生は、その「究極の香り」を再現するために、すべて、捧げられます。
 彼にとって、「究極の香り」の前には、人の命など、まるで価値がありません。

 この主人公、「倫理なき嗅覚の天才」は、「究極の香り」を再現できるのでしょうか?
 できるとしたら、どうやって?
 再現したとして、彼は、その香りを、どうするつもりなのでしょう?

 答えは、本書を読んでのお楽しみです(^^)

 読み始めたら、止まらなくなる可能性が大ですので、御注意を。
 私は、本書のために、危うく徹夜するところでした。翌日、仕事でしたのに。



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