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偽書「東日流外三郡史」事件 (新人物文庫)


偽書「東日流外三郡史」事件 (新人物文庫)

 この本、題名が難しいですね。『偽書』と『事件』はいいとして、「東日流外三郡誌」は、何と読むのか、普通の人にはわからないでしょう。
 これは、「つがるそとさんぐんし」と読みます。「東日流」を「つがる」と読ませています。

 もし、あなたが、「東日流外三郡誌」を、「つがるそとさんぐんし」と、すらすら読める人だとしたら、本書は必読です。何が何でも、読んで下さい。

 では、「東日流外三郡誌」を読めない人は、読む必要がないのか、といえば、そんなことはありません。むしろ、読めない人のほうが、偏見なく、本書を楽しめるかもしれません。
 日本史や、ジャーナリズムに興味があるなら、ぜひとも、読んで下さい。

 題名にあるとおり、「東日流外三郡誌」とは、偽書です。ここで言う偽書とは、「現代人が書いたものなのに、古代人が書いたと偽って発表された書物」という意味です。
 「東日流外三郡誌」は、「古代の津軽に、たいへん高度な文明を持つ国があった」という設定で、現代の日本人が書いた偽書です。

 正直に言いますと、そのような偽書は、歴史には付きものです。日本に限らず、どこの国にも、その手の文書を偽造したり、広めたりする輩【やから】がいます。

 そういった偽書の中でも、「東日流外三郡誌」には、ことさら大きな問題がありました。
 一時的とはいえ、役所が作った公文書によって、「本物」と認められてしまったのです。
 これにより、「東日流外三郡誌」は、歴史好きの人々に、大きなインパクトを与えることになりました。

 歴史調査に慣れた学者なら、普通は、このような偽書には、だまされません。
 けれども、一般人の歴史好きに、「東日流外三郡誌」が与えた影響は、無視できないものがありました。
 一部に、「東日流外三郡誌は本物だ」と主張する学者が出たことも、影響を大きくしました。
 この偽書のために、危うく、日本の歴史が歪められるところでした。

 本書は、東奥日報という、青森県の新聞社の記者さんが、「東日流外三郡誌」の謎を追い、その正体を暴いた顛末【てんまつ】記です。おそらく、「東日流外三郡誌」に関しては、本書の著者が、日本で最も詳しい人の一人でしょう。

 健全なジャーナリズム精神が、ここにあります(^^)

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

プロローグ
第一章 訴えられた謎の古文書
第二章 筆跡鑑定
第三章 偽書説
第四章 告発と告白
第五章 論争
第六章 御神体
第七章 聖地
第八章 増殖
第九章 奉納額
第十章 役小角【えんのおづぬ】と謎の竹筒
第十一章 判決
第十二章 背景
第十三章 偽化石
第十四章 寛政原本【かんせいげんぽん】
エピローグ

あとがき
文庫版あとがきに代えて  その後の『東日流外三郡誌』事件
[解説]笑わせる男  鎌田 慧【かまた さとし】

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