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パンダの親指〈下〉―進化論再考


パンダの親指〈下〉―進化論再考

 著名な進化生物学者、スティーヴン・ジェイ・グールド氏の科学エッセイ、第二弾です。
 第一弾の『ダーウィン以来』に続き、進化論について、解説されています。
 本書は、上下二巻の下巻です。上巻から、先にお読み下さい。

 本書は、最初は、とっつきにくいかも知れません。
 しかし、上巻を読んで、下巻、本書に行き着く頃には、勢いがついて、読みやすくなっているでしょう。

 上巻と同じように、下巻の本書も、広い話題が取り上げられています。どれも、進化論を説明するのに、使われています。興味深い話ばかりです(^^)

 例えば、文化によって、生物の種【しゅ】をどのように呼び分けるかが違うことが、載っています。
 ニューギニアのフォレ族という人々は、鳥類については、ヨーロッパ人の種の区分と、ほぼ同様に、細かく呼び分けます。なのに、何百種もいる昆虫のチョウ類については、みな、同じ一つの言葉で呼ぶそうです。

 私は、この話を、とても面白いと感じました(^^)

 他に、生物の化石だと思われた物が、じつは違った話、多細胞生物の起源の話、恐竜と鳥類の関係の話などが、載っています。

 恐竜と鳥類との関係の話などには、時代を感じますね。本書の原書が出たのは、一九八〇年です。二〇一四年現在からは、三十四年も前です。
 この三十年ほどの間に、恐竜学は、画期的に進歩しました。今や、恐竜と鳥類との間に、直接的な関係があることを疑う研究者は、一人もいないでしょう。
 けれども、グールド氏が本書を書いた当時は、まだ、そうではありませんでした。

 このように、古さを感じさせる話題はあっても、本書は、読む価値があります。
 進化論について、じっくり考える材料を、どっさり提供してくれるからです。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

第5部 変化の速さ
 17章 進化的変形は突発する
 18章 前途有望な怪物の復権
 19章 大熔岩地帯の論争
 20章 ビノス貝はビノス貝

第6部 初期の生命界
 21章 早かった出発
 22章 狂熱のランドルフ・カークパトリック
 23章 バティビウスとエオゾオン
 24章 人は海綿の細胞に相当するのか

第7部 蔑まれ閉めだされた者たち
 25章 恐竜は愚鈍だったのか
 26章 秘密をもらす暢思骨【ちょうしこつ】
 27章 自然界の奇妙な組み合わせ
 28章 有袋類を弁護する

第8部 体の大きさと時間
 29章 寿命の割当て
 30章 天然の誘引力――バクテリアと鳥とミツバチと
 31章 時間の厖大さ

訳註
訳者あとがき
自然誌と共通感覚――グールド『パンダの親指』を読む  中村雄二郎
文献目録



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