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魔法少女の系譜、その135~『未来からの挑戦』を八つの視点で分析~

弟切千隼

 今回も、前回に続き、『未来からの挑戦』を取り上げます。

 八つの視点で、『未来からの挑戦』を分析します。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

の、八つの視点ですね。
 『未来からの挑戦』には、高見沢みちると、田中レイ子と、二人の魔法少女が登場します。なので、この二人について、分析します。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?

 高見沢みちるは、未来人によって、超能力を付加されました。人工型の魔法少女ですね。

 田中レイ子のほうは、生まれつき型なのか、修業型なのか、わかりません。ひょっとしたら、人工型かも知れません。
 飛鳥清明との比較で言えば、彼女の時代の人間には、超能力を持つ人が多いようです。とはいえ、作品中には、彼らがどのようにして超能力を得たのか、何も説明がありません。このため、わからないとしか、言いようがありません。
 関耕児などの現代人から見れば、田中レイ子は、事実上、生まれつき型の超能力者(魔法少女)と言えるでしょう。


[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?

 高見沢みちるのその後は、作品では、描かれません。
 が、人工型の魔法少女であることがはっきりしており、かつ、「中学一年生までは、普通の、目立たない、おとなしい生徒だった」と言及されています。
 ですから、未来人がいなくなった後には、「普通の生徒」に戻ったでしょう。そのまま、普通の大人になったと考えられます。

 田中レイ子は、最初から大人なので、この問題は、ありません。
 そのうえ、彼女は、最終回で、溶けるように消えてしまいます。つまりは、死んだということでしょう。物語終了後の人生は、彼女には、ありません。


[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?

 高見沢みちるも、田中レイ子も、変身はしません。


[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 高見沢みちるは、魔法道具を持ちません。

 田中レイ子のほうも、魔法道具らしい魔法道具は、持ちません。あえて言えば、英光塾にある洗脳装置が、魔法道具と言えます。動かせない大きさなので、大道具ですね。


[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 高見沢みちるも、田中レイ子も、マスコットは連れていません。


[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?

 高見沢みちるも、田中レイ子も、呪文は唱えません。


[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

 これは、微妙な線です。
 少なくとも、高見沢みちるは、学校で、堂々と超能力を使って、生徒たちや教師たちを圧倒しています。秘密にしているとは、言えません。
 おそらく、「超能力で操られている」なんて言っても、誰も信じないと、たかをくくっているのでしょう。

 田中レイ子のほうは、もう少し慎重に、超能力を使っているふしがあります。学習塾という商売をしている以上、変な噂が立って、生徒が来なくなったら困るからでしょうね。
 そのわりに、「英光塾は、学力ではない、謎の指標を基準にして、生徒を募集している」という噂が立っています(笑) あまり隠せていませんよね。

 全体として、学校や塾といった、閉ざされた空間では、秘密にしていないと言えます。


[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

 これは、高見沢みちると、田中レイ子との、二人ですね。
 この二人の関係は、田中レイ子のほうが、断然、上です。レイ子が、「悪の超能力少女」高見沢みちるを作りました。主従の関係ですね。
 主である田中レイ子がいなくなれば、洗脳が解けようと解けまいと、高見沢みちるは、「悪の超能力少女」をやっていられないでしょう。


 「魔法少女(超能力少女)が二人登場して、その二人の間に、主従関係がある」のは、一九七〇年代としては、斬新でした。複数の魔法少女が登場する作品さえ、少なかった時代ですからね。
 この点も、『未来からの挑戦』は、評価されるべきです。

 人工型の魔法少女で、悪役と言えば、『紅い牙』シリーズのソネット・バージが思い起こされますね。
 『紅い牙』シリーズにソネットが登場したのは、一九八〇年代に入ってからです。『未来からの挑戦』の高見沢みちるのほうが、先です。

 高見沢みちるは、田中レイ子に超能力を付加されるまでは、普通の少女でした。
 ソネットのほうは、もともと、強力な超能力を持っていました。それが、サイボーグになって、さらに強化されました。複合型の魔法少女です。
 時代が進んだぶん、ソネットのほうが、より洗練された魔法少女になっていますね。

 ソネットは、悪の組織に属する超能力少女でありながら、個人的には、善人です。困っている人を助ける優しさがありますし、彼女のサイボーグ手術をしたドクター・メレケスを、とても尊敬しています。実の親がとんでもないやつだったために、実の親以上に、ドクター・メレケスを慕っています。ドクター・メレケスのほうも、娘のように、ソネットを大切にします。
 ソネットには、善人ゆえの葛藤があります。「自分はタロンに属しているけれど、タロンのやっていることは、本当に正しいのか?」と自問しながら、戦います。

 ソネットのような葛藤が、高見沢みちるには、見られません。完全に、田中レイ子に洗脳されているのでしょう。ドラマの中では、まったく同情の余地のない悪役として、描かれます。
 憎々しい「悪の魔法少女」としては、高見沢みちるは、完璧でした。「悪の魔法少女」の在り方として、一つの頂点を極めたと言えます。 (日本漫画史上屈指のダークヒロイン、『エコエコアザラク』の黒井ミサを除きます)

 高見沢みちるが、そういう方向を極めてしまったことで、後発の「悪の魔法少女」は、別の方向性を目指さなければなりませんでした。
 そうして登場したのが、『紅い牙』シリーズのソネットだと思います。

 以前に書きました、「やたらに権力のある生徒会」と並んで、「悪の魔法少女(超能力少女)」の起源となった作品ですね、『未来からの挑戦』は。

 『未来からの挑戦』については、ここまでとします。
 次回は、違う作品を取り上げます。



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弟切千隼
生物学、神話・伝説、漫画・アニメなどについて書くライターです。専門は、神話や伝説にしか登場しない、幻想植物です。おそらく、日本唯一の幻想植物研究家です。二〇二二年現在で、百種以上の幻想植物の伝承を確認しています。 noteでは、昭和の時代の漫画・アニメ文化について書くつもりです。