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魔法少女の系譜、その55~『エコエコアザラク』、訂正など~


 最初に謝っておきます。
 前回の『魔法少女の系譜』シリーズ、その54に、いくつもの訂正があります。ごめんなさい。
 今回は、その訂正を中心にした話となります。

 前回は、八つの視点に基づいて、『エコエコアザラク』を分析しましたね。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

 の、八つです。
 これらの分析のうち、[5]と[7]に、訂正があります。
 また、[4]と[8]について、訂正ではありませんが、付け足しがあります。

 [5]の訂正から、行きましょう。前回の[5]の分析は、そっくり、以下の分析と入れ替えて下さい。

[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 ヒロインの黒井ミサは、マスコットは連れていません。
 けれども、「魔女の使い魔」を使うことはあります。

 彼女の使い魔は、伝統的なヨーロッパの魔女観で語られる、使い魔そのままです。ヘビ、コウモリ、ネズミなど、薄気味悪いと思われがちな生き物が、使い魔になっています。

 ネズミにせよ、コウモリにせよ、ヘビにせよ、かわいく描けば、描けますよね。でも、古賀新一さんの絵では、とても恐ろしげに描かれています。お世辞にも、「かわいい」雰囲気ではありません。
 後年の魔法少女もので登場する「マスコット」の愛らしさは、片鱗すらも、ありません。

 『エコエコアザラク』に使い魔が登場するのは、一回か、二回だけでした。ミサの使い魔は、レギュラーのキャラクターではありません。
 ミサの使い魔は、さほど重要ではない「魔法道具」の一種のような扱いです。重要なキャラクターではありません。


 次に、[7]の訂正へ行きます。前回の[7]の分析は、以下の分析と入れ替えて下さい。

[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

 『エコエコアザラク』では、ミサが黒魔術を使うことは、秘密にされていません(!)
 これは、私が、勘違いをしていました。

 ミサは、連載の第一回から、「自分は黒魔術が使える」ことを誇示しています。
 中学校の授業中に、いきなり机に魔法円を描いて、黒魔術を始めたりしています(*o*)
 こんなの、現代の漫画でやったら、ギャグですね。しかし、この時代(昭和五十年=一九七五年)には、大真面目な恐怖漫画だったのです。

 例えば、二〇一六年現在、かわいい女子中学生が、「私は黒魔術が使えるの」なんてリアルで言ったら、ただの中二病のイタい子ですね。
 フィクションの漫画であっても、現代日本が舞台の作品で、そんな女子中学生を出したら、やはり、イタい子扱い確定です。

 昭和五十年(一九七五年)の段階では、まだ、中二病という言葉自体が、存在しません。
 西洋の黒魔術など、中二病的材料そのものが、紹介され始めたばかりの時代です。まさに、中二病のエッセンスが、『エコエコアザラク』などにより、形作られてゆく時代です。

 ただ、ミサが黒魔術を使うことを、すべての人が知っているわけではありません。
 ミサは、転校を繰り返します。このために、新たに転校していった先では、彼女の情報が知られていないのが、普通です。それを良いことに、ミサが暗躍する話もあります。
 逆に、「ミサが黒魔術を使う」ことが、噂で流れて、それをきっかけに、話が動きだす場合もあります。

 黒魔術使いであることが明らかでも、彼女が何を考えているのかは、ほとんどわかりません。彼女の行動原理は、論理的には破綻していて、理解できません。

 彼女の内面は、細密に描かれることはありません。視点は、外在的です。理解できないものが、理解できないままに描かれます。

 理解できないものを相手にするのは、恐ろしいです。確かに、『エコエコアザラク』は、ホラー漫画です。


 さて、[4]の付け足しです。

[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 前回、ミサの魔法道具の一つとして、剣を取り上げました。ひょっとして、これが、誤解を招いたかも知れません。

 ミサは、剣を持って闘うわけではありません。剣は、あくまで、魔術の儀式に使う道具です。
 少なくとも、原作の漫画の彼女は、武器や肉体をもって闘うことはしません。魔術合戦なら、することがあります。
 広い意味では、「戦闘少女」に含めてもいいでしょう。


 最後に、[8]の付け足しです。

[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

 魔法少女に限らず、『エコエコアザラク』で、全編を通して登場するレギュラーキャラクターは、ミサ一人だけです。
 ミサは、毎回のように転校しているので、周囲の学校の登場人物は、毎回のように変わります。

 後半になると、ミサの両親が、レギュラーキャラクターになります。ミサの両親は、ともに黒魔術師ですから、魔法「少女」ではなくても、それに近い存在です。

 他に、準レギュラーキャラクターとして、黒井医院の医師がいます。彼は、ミサと親戚関係にあるようです。たまにしか登場しません。
 この医師が、見るからに怪しい風貌で描かれています。「こいつ、絶対、危ない人体実験やっているよな」という感じです。作品を読んでゆくと、その予感が間違いではないことがわかります(^^;

 ミサは、中学生なのに、時々、黒井医院で看護師―当時の呼び方では、看護婦―のアルバイトをやっています。明らかに無資格の、違法看護師です(^^;

 二〇一六年現在なら、読者からも編集部からも突っ込みが入れられるでしょうが、昭和五十年代(一九七〇年代後半)の漫画なんて、こんなものでした。
 アニメの『魔女っ子メグちゃん』でも、中学生のはずのノンが、バイクに乗ったりしていましたからね。
 二〇一六年現在とは、求められるリアリティのレベルが違いました。

 今回は、ここまでとします。
 次回も、『エコエコアザラク』を取り上げる予定です。



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