![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146227357/rectangle_large_type_2_5f16f021bc280600070026eb326559c3.png?width=800)
パンは、買われた回数が分かっても、齧られた回数までは追跡できない/無味無臭で舌触りのない音楽は、時空を「時間」と「空間」に切り分ければ……
時空の「時間」と「空間」を切り分けて、中央集権することで起こるムーヴメント。
テレビCMや新聞広告など「中央集権型」かつ「一方的」な施策だけでなく、SNSなどを活用した「分散型」かつ「多方向的(※)」なプロモーション施策を行うことは重要だが––––
「収束(あえて集権を行使するコト)」は、決して「悪」でない。
※「インタラクティヴ」とは「双方向性」のことだが、SNS上のコミュニケーションは、単メディア対カスタマーというシンプルな構造にはなく、かつてのマスメディアに代わるプラットフォーム上で(noteだってそうだし、facebook、YouTube、X、LINEなどで)カスタマー同士の同時多発なルートでやりとり(交換)される。これを、本書では「メタ・インタラクション」=「多方向」と呼んでいる。
ウェブ記事/スポティファイ/YouTubeなど、インターネット上の「多方向的なメディア」がユビキタスな(いつでもどこでも見聞きできる)であるのに対し、新聞/ラジオ/テレビなど、従来の「一方向的なマスメディア」は、原理原則として、決まった時間にしか見聞きできない(radikoやTverもあるので一概に言えないけど……)。
後者の中央集権的な方法が、時代遅れの無用なレガシーかというと、必ずしもそうではないのだ。
顧客にとって、「どこでも」という分散は重要でも、
「いつでも」という分散は邪魔なときもあり、
「過剰な利便性」による面白みの欠如に繋がる場合もあるからだ。
決まった時間に、みんなが一斉に見聞きするしかない「トキ」の創出は、多方向性や多様性を持つメタ・インタラクションを生むというのが、今という時代の可笑しみだ。
【 メタ・インタラクション詳細は↓ 】
「どこでも」の分散だけを残し「いつでも」を収束した代表例として、「天空の城ラピュタ」がテレビ放送される際に起こる「バルス」ムーヴメントや、考察系の連続ドラで、放送終了後から一斉に犯人予想が始まるような現象などがある––––
これらは、「いつでも」が担保されているYouTube/Netflix/Amazon Primeでは起こりづらいコト =「現象」だ。
もっと、あからさまに言えば……
インターネットでトレンドを起こしたければ(例えば、Xのトレンドランキング上位に入れたければ)、「いつでも」を排除し、決まった時間にカスタマーのリアクション(投稿)を集中させる必要があるのだ。
※ エフェメナル(英語で「儚い」や「束の間」という意味)SNSは、まさにこのフォーカスで生まれた。インスタグラムの24時間で消えるストーリーズをはじめ、SnapchatやSNOW、最近では、BeRealが人気だ。それは、時間的な制約によってムーヴメントになっている。1日に1回、ランダムな時間に通知が送られてきて、原則として、通知を受け取ってから2分以内に自分や周囲の状況を撮影し、投稿しないといけない。
インターネット登場以前は、マスメディアを通じた一斉鑑賞のあと、個々のインタラクションの復路(リアクション)が起こるのは、早くても翌日の教室や職場だった。
「月9のドラマ、あの意味深なセリフ〜」
「昨日のアニメ、あの展開って〜」
「今週のジャンプ、いよいよ〜」
––––など、期待や批判を含む感想や予想 =「カスタマーの意見交換」は、時間差を伴って、現実の限られた場所に依存した超限定的なコミュニティ内でのみ行われていた。
そして、その井戸端会議の内容が、全世界にリアルタイムで大量に可視化されることなど、夢のまた夢だった。
個人の意見を公へ発信するコトは、一部の特権階級(プロの音楽評論家や映画評論家など)のみに許された行為だったし、それができる媒体もまた新聞/雑誌/放送など中央集権的なマスメディアだった。
クチコミは、リアルタイムではなく、時間差をもって、中央集権的にキュレーションされ、評論家やマスメディアのフィルターを通して、広く一般に流布されるものだった。
だから、昔は、ビジネス側が仕掛けやすい時代であったし、言い方は悪いが、カスタマーの指向を操作しやすかったはずだ。
一転、インターネット登場以降の一斉鑑賞は、SNS上で、リアルタイムに、一般大衆による超民主的な感想や予想の交換をあふれさせた。
それは、週刊少年ジャンプのアンケート葉書のように、カスタマー to メディアという双方向的な関係性ではなく、カスタマー to カスタマー、ときには、カスタマー vs カスタマーにもなりうる同時多発的なメタ・インタラクションを有する。
良い現象になれば「バズ」と呼ばれ、
悪いときは「炎上」と呼ばれるものたち––––
SNSを起動したスマホ片手に、マスメディアを「ながら鑑賞」するコトこそ「今らしい一斉鑑賞のスタンダード」であり、進化版の「クチコミ」は、SNSを使った「カキコミ」とほぼ同義だ。
カスタマーは、変わらず中央集権的な鑑賞を享受しながら、インターネット上の各コミュニティで、個々に自由なリアクションを交わす。
特権階級による情報操作を含んだトップダウン型の評論が生む(受動的な)似非現象には懐疑的な風潮が増し、検閲や忖度のない民主的でフラットな分散型の現象(意見交換)がリアルタイムに展開されていくことが「みんなでつくる現代らしさ」として歓迎されている。
よって、今後、スポティファイやYouTubeなど、ユビキタスなメディアにおいても「いつでも」をあえて限定するような動きが加速するはずだ
※ 事実、この元となる資料を書いた2018年にはなかった「プレミア公開」という「トキ(いつでも)」を収束する機能が、奇しくも同年末、YouTubeに追加された。Netflixも、公開前に「○月○日、いよいよ公開」的なテレビCMを打つことが多くなった。
顧客は、あえて(不便かも知れない)時間的に拘束される一斉鑑賞に参加することで、分散した狭く深いコミュニケーションを同時多発し、ネット上で「一体感」を得る。
このように、民主的な意見交換コミュニティを数多、並走させる一斉鑑賞という今らしいムーヴメントは、カスタマー側には、作品にまつわるコミュニケーション上の体験価値向上をもたらすと共に、ビジネス側にも、マーケティング上、非常に有用なチャンスを生んでくれる。
かつての閉じた系(一方向)のマスメディア放送や職場や教室でのリアルな井戸端とは異なり、SNSなど開かれた系(多方向で超民主的な)プラットフォームで起こるカスタマーからの発信(リアクション)は、週刊少年ジャンプを成功へと導いたアンケート葉書(読者からのリアクションによる集合知)と同じ、いや、それ以上の効果をリアルタイムで与えてくれる。
メタ・インタラクションの最大メリットは、カスタマーに届けて終わりではなく、その先に潜む真実(濃厚なシックデータ)を取れることにある。
【 ときに役立たないビッグデータ/そのとき必要なのはシックデータ 】
パンは、買われた回数が分かっても、齧られた回数までは追跡できない。
かつてのレコードメーカーは、「CDというモノが売れた回数」に囚われていたが、今は「プラットフォーム上で聴かれた回数」を大切にしている。
買った回数と聞かれた(使われた)回数とでは、マーケットリサーチの精度が大きく異なる。
前者は、リアクションの返りようがない一方向的なコミュニケーションしか生まないが、後者は、ユーザーのインタラクションの復路(顧客からのリアクション)によって、リアルタイムに変動していく数値(再生回数やいいね!の数)=「ビッグデータ」に加え、意見という文章 =「シックデータ」まで取得することができる。
これは、ネガティヴばかりを書き連ねてきた「デジタライズできる視聴覚情報」を扱う業種の大きなメリットでもある。
これこそ「DX」の最大のメリットだ。
そして、今のところ、
「DX」は、視聴覚情報のみでしか成し得ない。
【 視聴覚とそれ以外の感覚を切り分ける重要性については第1章に 】
パンという嗅覚・味覚・触覚にも訴える商品は、デジタライズできないため、買われた数は取れるが、本当に食べられた数までは追えない––––
車も、売れた台数は分かるが、その後、カスタマーが、何回、乗って、どれだけ走ったか? は、基本、取りようがない––––
––––が、そこに潜む「視聴覚情報」を抽出し、DXを導入すれば、たちまちリアルタイムで永続的なデータが取得可能になり、加えて、SNSを活用したファンダムを築けば、シックデータ(数値としての評価ではなく、文章としての意見詳細)も取得できる。
例えば、買われた回数しか分からない車という「モノ」に、カーナビという視聴覚情報を主に扱うIoEサービス(インターネットに常時接続するコト)を導入すれば、ドライバーに関するシックデータ(週にどれだけ走るか/遠出するタイプの顧客か etc.)を取るコトができる。
自動車業界が、純正のカーナビや運転にまつわるデジタル・アプリを実装したがるのは当たり前だ。
かつてのレコードメーカーも、CDの購入時が、マーケットリサーチの終点だった。つまり、買った時点で取れる「既存ファン+新規顧客の数」がすべてだった。
ところが、YouTubeやスポティファイなど「デジタライズしてインターネット上で送る」コトを活用したメタ・インタラクティヴなプラットフォームのおかげで、再生という日々のリアクションが得られるため、どのような経路で聞かれたか? いつ、どこで聞かれたか? さらに「離れていく顧客」や「潜在顧客」まで、リアルタイムで可視化されるようになった。
加えて、YouTubeのコメント欄や、X(旧:twitter)のエゴサーチによって、感想/意見/批判を記した文章(エスノグラフィックなシックデータ)まで得られる。
楽曲に接触した回数だけでなく、どのような人が、何回、繰り返してくれたか(リピーターになってくれたか)、最後まできちんと聴いてもらえたか、そして、その曲を気に入ってもらえたか、あるいは、評判が悪かったのかまで取得できる。
これらは、すべて、インタラクション(こちらのアクションに対するカスタマーからのリアクション)がなければ、成立しない。
テレビも同じで、一方的に放送するだけでは、本当に、観ていたのか、楽しんでいたのかまではまったく分からない––––が、デジタル放送の双方向活用やSNSでリアクションを拾えば、インタラクティヴなコミュニケーションが成立し––––業界人という特権階級の志向(演出)のみではないカスタマーの指向(意見)まで取り入れた改善を、最速リアルタイムで(少なくともアナログ放送時代に比べればかなり早い段階で)行える。
一方、その裏で、カスタマーの自由なリアクションは、過激な競争を生んだり、差別をより顕在化させる危険も孕んでいる。
実際、「炎上」と呼ばれる業火の中で、目を覆いたくなるような進化版の闇を生んでいく姿は、民主主義と資本主義が支配する21世紀の現実世界の光と闇の縮図––––いや、拡大解釈のようにも映る。
––––これをミラーワールドと呼ぶなら、
それは正しいのかも知れない。
僕たちの心が鏡写しになった世界が、インターネット上に荒涼と広がっているのだ––––そして、それは、物質的に何かが壊れる世界でもなければ、誰かを傷付けたとて流れる血も涙も見えない世界でもある––––鏡面世界でのバーチャル(精神的)な死は、現実世界でのフィジカル(肉体的)な死を意味するわけでもなければ、そこで犯された罪を罰する法も不十分だ––––
だからこそ、その炎は、物理法則を無視して、実際の地球を、実物の人の心を、何度も燃やし尽くすほど大きな火となる未曾有の可能性を秘めている。
誰かの心で異常に燃え盛った現実にはあり得ない大火が他人に残すトラウマは、物質的でリアルゆえ限度ある世界で付けられる心傷よりも、はるかに大きく、深くなるかも知れない。
すべてが心の中だけで起こるからこそ、
良くも悪くも効果絶大なのだ。
そして、それは、いつか必ず、仮想セカイ(バーチャルリアリティ:VR)から、現実世界へと飛び出し、AR(拡張現実)やMR(複合現実)となる。
事実、ネットでのいじめによる自殺者数増加も、SNSの自殺サークルの暗躍も、ダークウェブの取引量も拡大する一方だ。
心を何度も殺された人物、いつか、自然摂理/物理法則の死を選ぼうとする。人物が死ねば、精神が途絶える時代ではないのだ。精神が焼かれて、肉体まで焦がすのだ。熱を持たない冷たいセカイが持つ目にも見えない触れられもしない零度の炎は、無色透明/無味無臭に人を殺す。
今、改めて、起点となる人間の心のあり方が問われているのだ。
ちなみに––––
「いつでも」という分散を残し
「どこでも」を収束する方法も大いに有効だが、
それには「AR(拡張現実)」が欠かせない。
それに関しては、「xR」について詳しく記す「 第6章 / 昔から世界の約半分は想造で出来ていて, 未来の世界の半分以上は想造で出来ていく. 」にて紹介したい。
【 マ ガ ジ ン 】
(人間に限って)世界の半分以上は「想像による創造」で出来ている。
![](https://assets.st-note.com/img/1717130015662-wy5MfmOSFa.jpg?width=800)
人がそう呼ばれる「幻」の「壁」を越えられないのは
物質的な高さではなく、精神的に没入する深さのせい
某レコード会社で音楽ディレクターとして働きながら、クリエティヴ・ディレクターとして、アート/広告/建築/人工知能/地域創生/ファッション/メタバースなど多種多様な業界と(運良く)仕事させてもらえたボクが、古くは『神話時代』から『ルネサンス』を経て『どこでもドアが普及した遠い未来』まで、史実とSF、考察と予測、観測と希望を交え、プロトタイピングしていく。
音楽業界を目指す人はもちろん、「DX」と「xR」の(良くも悪くもな)歴史(レファレンス)と未来(将来性)を知りたいあらゆる人向け。
本当のタイトルは––––
「本当の商品には付録を読み終わるまではできれば触れないで欲しくって、
付録の最後のページを先に読んで音楽を聴くのもできればやめて欲しい。
また、この商品に収録されている音楽は誰のどの曲なのか非公開だから、
音楽に関することをインターネット上で世界中に晒すなんてことは……」
【 自 己 紹 介 と 目 次 】
【 プ ロ ロ ー グ 】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?