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【SNSで新型コロナを徹底分析】ソーシャルリスニングで見つけた、企業のコミュニケーション・アクションのヒント。

2020年4月7日、国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、東京をはじめとする7都府県に緊急事態宣言が発令された。
ウイルスと共に、人々の不安や恐怖を煽るような情報も拡散されていく様を、WHOは「インフォデミック(情報の伝染)」と称して警鐘を鳴らしている。この言葉はSARSが流行した2003年に生まれたものだが、SNSとスマートフォンが広く普及した2020年現在、出所不明な情報や悪意あるデマが社会に及ぼす影響はますます大きくなっている。
また、外出自粛によって人々が家に籠り、不安や恐怖を感じながらニュースやタイムラインを追い続けるような状態が続くと、情報の過剰摂取や偏りも起きやすくなり、知らず知らずのうちに心身に不調を来たしてしまうリスクなども指摘されている。

事態の収束にはワクチンの実用化・集団免疫の獲得が必要なため、長期化が予測される。つまり、Afterコロナの前に、Withコロナの時代が当面続く。
3.11を契機として、多くの生活者の消費購買行動が変化し、価値観やライフスタイルの多様化が進んだことは記憶に新しい。地球規模で猛威を振るう今回のコロナも、私たちの暮らしや仕事を大きく変化させるきっかけとなることは確実だろう。

そのような状況において、企業やブランドのコミュニケーション活動にはどのような役割や可能性が考えられるだろうか。SNSのデータを分析し、そのヒントを探った。

ソーシャルリスニングで現状把握&仮説導出

私が在籍するspiceboxでは、数年前から「SNS・スマートフォン時代におけるブランドコミュニケーション」をテーマとし、様々なクライアントの広告やPR活動の企画実行をサポートしている。
具体的には、ソーシャルビッグデータ(SNSやソーシャルメディアの膨大な情報)を分析し、トレンドやインサイトを捉え、それを基に戦略や企画を立案している。そして、コンテンツやキャンペーン、イベントなどの形でアウトプットを行い、その結果を分析してまた次のプロジェクトに繋げている。

そのため、ソーシャルリスニングを日常的に行なっているのだが、今回は新型コロナウイルスをその題材とすることで、客観的な現状把握や、今後のコミュニケーションに活かそうな示唆や仮説を得たいと考えた。

はじめに、ソーシャルリスニングの基本的なステップについて大まかに触れておきたい。

まず、約50〜100個の関連性のあるキーワードを設定する。そして、そのキーワードが含まれたコンテンツ(記事や動画、投稿など)とそれに対するエンゲージメント状況を、定量・定性の両面から分析していく。
*エンゲージメントとは、SNS上での「いいね・RT・シェア・コメント」などを指す。エンゲージメントの多寡と世の中の興味関心の強さは相関することが多い。

分析に際しては、各キーワードごとにエンゲージメントの多いコンテンツを一通り確認しつつ、複数のキーワードを俯瞰して「SNS上に形成されているイシューや文脈」についても読み解いていくことが重要となる。こうしたプロセスを経ることで、コンセプトやメッセージの開発、コンテンツの企画、施策の評価や優先順位付け…など様々な用途に活用できる。

なお、この記事で紹介する内容は「コロナ」という単一キーワードでの簡易的な分析結果となっている。
また、通常は季節的な要因も考慮するために過去1年間を振り返るが、今回は湖北省・武漢市での感染情報が出始めた2019年12月上旬から2020年3月末までを対象期間としている。

これらをまとめると、概要は以下となる。

【ソーシャルリスニング概要】
・SNSプラットフォーム:TwitterとFacebook(Instagramは別の機会でご紹介したい)
・キーワード:「コロナ」を含むコンテンツやTwitter投稿(無関係のものは分析時に除外)
・期間:2019年12月10日〜2020年3月31日
・ツール:spiceboxのオリジナルツール「THINK」

前代未聞の情報流通量

「◯◯件以上の反応があれば、エンゲージメントが高い」のような絶対的な尺度はない。発信元が大量の読者やフォロワーを抱えるアカウントであっても、コンテンツによって反応はマチマチで、常に数百件〜数千件のエンゲージメントが起こることは少ない。
逆に、フォロワーが少ないユーザーによる発信であってもSNS上で広くシェアされることは多く、それがSNSの醍醐味の一つとも言える。
※SNSプラットフォームによって、エンゲージメントのされやすさ(重み)やそのニュアンスなどが異なるが、本稿では割愛する。

上記を踏まえ、今回は「TwitterとFacebookの合計で1,000エンゲージメント以上」言及されているコンテンツを、エンゲージメントが高いと定義し、分析している。
コロナに関するエンゲージメントが高いコンテンツは、9,500を上回る。これがどれくらいのボリュームなのかを推し量るため、次の2つのキーワード「ジェンダー」「Zoom」と比較してみたい。

●ジェンダー
25コンテンツ。
ジェンダーは、多くの人々が関心を寄せるイシューの一つである。昨年12月に発表された「ジェンダー・ギャップ指数」で日本が大きく順位を落としたニュースは、SNSでも大きな話題となった。

●Zoom
38コンテンツ。
Zoomは、リモートワークの代名詞的な存在となったことで、ジェンダー以上に多くのエンゲージメントを集めている。
ちなみに、過去1年間まで遡ってみると、1,000以上エンゲージメントされたのは52コンテンツだったので、実に全体の73%が「コロナ以降」に生まれたエンゲージメントとなる。

ジェンダーは25、Zoomは38、コロナは9,500。コロナに関する情報流通量がいかに膨大かがわかる。

拡散されやすい情報の構造

3月末までのすべてのコンテンツの中で、最もエンゲージメント数が多かったのは、志村けんさんの訃報を伝えるNHKの記事だった。
Facebookで約70万、Twitterでは約146万、合計で約216万エンゲージメントにおよぶ。これは同サイトの中でもダントツのエンゲージメント数なのだが、その規模感を掴むために、やはり他のデータとも比較してみたい。

SNSでの口コミによって大ヒットに繋がったことで知られる映画「カメラを止めるな!」は、作品が急速に話題になった2018年7月頃の月間エンゲージメント総量が100万弱だった。
つまりこの2倍以上の反響が、この1つの記事に寄せられたことになる。(なお、志村けんさんのニュースは、様々なメディアで連日報道されているため、それらすべての合計はより大きなボリュームとなる)

「著名人の感染」を伝える情報の中では、スポーツ選手に関するニュースがエンゲージメントの上位に散見されたので、それらを詳しく確認した。
すると、当該記事は感染した事実に加えて「陽性反応に対して謝罪を表明した」「症状の一つとして認知され始めた嗅覚障害があった」といったプラスαの情報が含まれており、このことが既存のファンやサポーターだけでなく、一般層の間でも幅広く話題化した要因だった。(両記事ともに約6万ENG。なお、このENG数は転載先の数値だが、本記事のリンク先は元記事とした)

単一のニュースではなく文脈として、最もコンテンツやエンゲージメントが集積している1つが「政府や首相の政策や対応」に関する言及だ。
ここでは政策や報道内容の良し悪しについては論じないが、今回のコロナの一連の騒動によって、自分たちの日常と政治がいかに密接であるかを痛感した生活者が多いのではないか。実際、SNS上では、安倍政権への不満の高まりに呼応する形で、政治に関する様々な発信が(普段そのような発信をしない人も含めて)増大している。

これらのケースから示唆と感じた点を、少々乱暴ながら以下にまとめたい。

まず、スポーツも政治も一般に広く認知されており、またそれなりの人数の熱心な支持層が存在する、という共通項がある。しかし通常はここまで大きな話題にはならない。
SNS上でのリアクションからその背景を紐解くと、被害者であるはずの選手が謝罪をしたというニュースからは、選手の気遣いに対する賞賛と同時に「もし自分が感染したらどうしたらよいのだろう」といった戸惑いが見受けられる。
そして、政府の自粛要請や保障内容のニュースについては、自分たちの身近に忍び寄るウイルスへの恐怖と共に、生活や仕事の先行きが見通せないことへの不安や不満が渦巻いている。
つまり「自分たちにも関係がある」といった当事者意識を促す情報はSNSを介して広がりやすいと言える。

「各地の感染者」を伝えるニュースにも大きなエンゲージメントが集まっている。これらへの主な反応は、自分の出身地や居住地にも感染が拡大していることへの驚きや恐怖、そして、欧米や東京から地方へ帰省する行動への是非、といったものが目立つ。
これもやはり、自分の身近な場所での感染の広がりによって「自分ごと化」が促され、SNS上への反応となって現れていると解釈できる。

企業による直接的な取り組み事例

さて、引き続きエンゲージメントの多い文脈やコンテンツを順を追ってご紹介していきたいところだが、あまりにもボリュームがあるので…ここからは「コロナの影響で生まれたポジティブ・ユニークな文脈やトピックス」にフォーカスを絞る。

●マスクや人工呼吸器、ワクチンなどの製造や開発、寄付
自社の設備や技術などを活かした直接的な支援に乗り出す各社の情報は、国内外問わず大きく報道され、反応が起きている。

●コンテンツやプラットフォームの無料開放化
エンタメ・コンテンツ・教育などの業界で広がりを見せる動き。自宅で過ごす必要に迫られた様々な境遇の生活者から、厚い支持を集める。

●国や自治体による各種支援
コロナの影響を受ける事業者向けの施策が、経営者や関係者、有志の手によって広められている。

無料開放や支援情報は、事業主体・発信元が多岐にわたるため、それを必要とする人に情報が届きにくい側面があるが、SNSでは災害などの有事の際に「一次情報がキュレーションされ、人から人へシェアされていく」といった動きが広がりやすい。
参考までに、コロナ関連で特にエンゲージメントされたのは、以下などだ。
新型コロナウイルスによる臨時休校でお困りの子育て世帯をサポートする緊急サービスまとめ|kidsweekendブログ(約7.6万ENG)
新型コロナで軒並み影響を受けてる事業者への支援策が経済産業省から出てる【お願い広めて】 | チャンネル「てみた」 (約6万ENG)
【まとめ】各社の新型コロナ関連支援サービスまとめ 漫画読み放題、学習支援、給食代替など - ねとらぼ(約5.6万ENG)
コロナウイルスにより臨時休校となった学校を支援すべく立ち上がったEdTech企業まとめ【3/9更新】|後藤匠 / Libry CEO|note(約5.2万ENG) 

なお、4月に入ってからは「不足する病床」に対してアパホテルや日本財団が施設の提供を発表し、反響を呼んでいる。今後のコロナ情勢の推移によって必要とされることは様々だが、企業の役割が大きいことは間違いない。

アイディアが世界を救う(?) 5選

上記の例のように、物資やサービスもしくは資金を直接提供する企業がある一方で、「自分たちには提供できるものがない…」と考える企業も多いだろう。
しかし、アイディア次第では、誰かの役に立ったり、誰かを笑顔にしたりすることができるかもしれない。…そんな風に思わせてくれるユニークな事例を5つほどご紹介してみたい。

●インパクトのあるコピー
プラン名がすべてを物語っている…。(約12.8万ENG)

●「休館・休業中の○○」利用
「人がいない」「いつもと違う」を逆手に取った試み。(約4万ENG)

●癒し映像
どんな時でも動物は人々の癒し。(約2.5万ENG)

●濃厚接触を避ける「エア・○○」
中止や無観客という逆境に、斜め上の発想で対抗。(約0.3万ENG)

●リモート(画面分割)エンターテイメント
テレワーク的な状況をエンタメに昇華。(約13万ENG)

これらの事例からは、コロナに苦慮しながらも、前向きに工夫を凝らす関係者のしなやかさ、たくましさが感じられる。
世界中で「自分たちの現場で何ができるか」を真剣に考え、勇気を持って行動に移している人たちがいる。


汎用性のある企画フレーム 5選

人類が未知の感染症と対峙する状況下では、専門家の存在感が際立つ。そしてそれは、医療・感染症といった分野に限定せず、様々な領域のプロフェッショナルな知恵や技術なども含まれそうだ。
企業発のコンテンツを考える上で、あえてやや幅広な解釈で5つほど具体例をご紹介したい。

●わからないことは詳しい人に聞く
多くの人が抱く疑問をプロにぶつけた。(約7万ENG)
※余談だが、この記事はそのわかりやすさが評価を得た一方、「文系」「女編集者」といったタイトルには否定的な意見も寄せられた。

●意外な接点・ユニークな共通項を見つける
「閉じこもり生活に慣れている職業」という切り口の妙。(2.2万ENG)

●わかりにくい情報はビジュアルにする
イラストや漫画、写真や動画などにすることで、直感的に理解しやすい。(約3.9万ENG)

●名言、先人の知恵、歴史に学ぶ
コロナによってパニックに陥る人々に向けて。(約25.6万ENG)

●馴染みのあるロゴや画像を題材とする
「ソーシャル・ディスタンス」を表現した1ビジュアル。(約0.3万ENG)
※これ以外にも、著名企業によるロゴ変更など、ソーシャル・ディスタンスの重要性を訴える大喜利的なクリエイティブがムーブメントとなっている。

これらのコンテンツは、コロナ情勢下において、どのような情報が人々に届きやすいのかを考える上で、様々なヒントがありそうだ。

まとめ

●コロナは私たちの価値観やライフスタイル、消費購買行動を変える。(もうコロナ前には戻らない)
●コロナ関連情報は、前代未聞の規模で社会を席巻している。(そしていつ収束するか誰もわからない)
●情報には拡散されやすいものとそうではないものがある。(当事者意識や自分ごとを促す接着要素が大切)
●物的な支援だけでなく、アイディアや切り口次第で、誰かの何かの役に立てる可能性がある。(何ができるか考え、行動する)

…ということで、今回はひとまず3月末までのデータを基にまとめを試みました。この記事が、それぞれの現場でコロナへのアクションを検討・実行されている方などにとって少しでも参考になれば幸いです。

また、今後もspiceboxの有志メンバーでこのような情報を発信していこうと考えているので、ご感想や「こんな切り口で調べて欲しい!」といったリクエストなどをいただけると幸いです。

PS. 


文:大月 均(spicebox, inc. コミュニケーションディレクター)

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二拠点生活(東京・西麻布と長野・御代田)、2児の父(3歳と0歳)、コミュニケーションディレクター(マーケティング・広告・PR)、子育て、旅、自然、食べる・飲む、温泉、音楽、映画、読書、庭、家庭菜園、DIY、薪割り、木こり見習い

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