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「オンライン宿泊」が生み出すオフラインの出会い【お宿会議】

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こんにちは。
株式会社おてつたびの田中沙季です。

おてつたびとは、「地域の人を通じてその地域を好きになる」を信念に、人手不足で困っている地域の方と、地域に興味がある方とをつなぐマッチングプラットフォームです。

◆お宿会議とは?

新型コロナウィルスの影響で観光業や宿泊業が打撃を受けていることをうけて、私たちおてつたびでは毎週月曜日に、宿泊事業に関わっている方限定の情報交換の場お宿会議」を設定しています。
(※お宿応援プロジェクトについてはこちら

刻々と変化する状況下での意思決定は、非常に悩ましい事が多いかと思います。地域や形態を超えて宿泊事業者の方々が繋がり、情報交換や他の宿泊事業者の方に相談ができる環境を作りたいという思いで「お宿会議」を実施しています。

この記事では、緊急事態宣言の発令や外出自粛が続く中、いち早く「オンライン宿泊」を始めたゲストハウス『WhyKumano』オーナーの後呂 孝哉(うしろ たかや)さんにゲスト出演いただいた4月30日の「お宿会議」の模様をお届けします。(注・記事内の実施日数はお宿会議時点のものです。)

◆ゲストプロフィール

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ゲストハウスWhyKumano 代表 後呂 孝哉(うしろ たかや)氏

1989年、和歌山県新宮市生まれ。大学・就職と約10年関東で過ごし、「地元、熊野の魅力を世界へ広めたい」想いから新宮市へUターン。

2019年7月、和歌山県南部・熊野エリア観光の拠点となる那智勝浦町にホステル・カフェバー「WhyKumano」を開業。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年4月から実店舗を一時休業、オンラインを活用した〈家にいながらも旅の気分を味わうことができる【仮想宿泊体験】〉を提供する「オンライン宿泊」を開始。

◆「行きたいけど行けない」 - だったら宿泊もオンラインにしたら良い!

まずはオンライン宿泊を始めたきっかけの話題から始まりました。
対面が当たり前であり、対面でこそ価値があると思われていた宿泊を、なんとオンラインでの体験にしてしまう。
そんな挑戦のきっかけは何だったのでしょうか?

オンライン宿泊を始めたきっかけは、”オンライン銭湯”を知ったことなんです。これ凄いですよ、ずっと銭湯の様子が流れているだけなんですけど。これを見て、「銭湯ってオンラインでできるんだ」と新鮮な発想だなと思いました。

何でもオンラインでできるとしたらお宿もオンラインでやってもいいんじゃないか、むしろ泊まってこそ価値がある「お宿」をオンラインにできてしまったらめちゃくちゃ面白いんじゃないかと思いまして、新しいチャレンジを始める発表をしました。

新型コロナウィルスの影響が出始めて、キャンセルの連絡が来るようになった。でも、お客様のキャンセル理由がこれまでと全く違うんです。

「行きたいけど行けません」

そういう声がやっぱり多かったんです。行きたいけど行けない人が多い、そして家の外に出ることもしづらい。

じゃあ、この状況のなかで僕らゲストハウスに何ができるか?そこで、家での宿泊体験ができればいい、家にいながら旅気分を味わえるものがあったらいいんじゃないかと思ったんです。

きっとまだ誰も考えていないだけ、だったら無かった概念を作ればいいじゃないか。で、「僕らが作ります」って宣言しちゃったんですよね。

◆「これは確かに宿泊体験」 - オンライン宿泊のしくみ

続いて、オンライン宿泊の仕組みについての具体的な話へ。
実際に宿泊した方の多くが「これは確かに宿泊体験だった」と評価するというWhyKumanoのオンライン宿泊。
”オンラインでゲストハウスに泊まる”とは一体どういうことなのでしょうか。

仕組みはとってもシンプルで、普通の宿泊と同じく予約を受け付けることから始まります。今はSNSで予約を受け付けて、予約日を決めます。

ゲストハウスの宿泊なので、まずはチェックイン。チェックイン時間は20時で、消灯は22時。

一泊1,000円でやっています。我々もサービスをしているわけなので、無料にしたくない。

それから、これをやる目的は「実際に熊野に来てもらう」ことなんですよ。

だから実際に来てもらったときの乾杯ドリンクのサービスもついています。熊野に来られるようになったら一緒に乾杯しましょう、その時のドリンクはご馳走します、ということですね。

チェックインをしたあとはライブで館内案内をします。ライブで案内するというのがポイントで、一方的に発信するのとは違う、双方向のやり取りができるんです。

そのあとは、ゲストハウスのフリースペースで話をするみたいに自己紹介から始まって、みんなで交流します。これは時間が決まっていて、22時まで。ゲストハウスの本当の消灯は22時ではないのですが、オンライン宿泊では、”ちょっと話足りない”くらいで終わらせます。ちょっと物足りない、だからこの続きは熊野で、ということなんです。

と、ここで終わってしまうとただのオンライン飲み会になってしまう。でも、うちはあくまでゲストハウスだから、翌朝にはチェックアウトがあるんです。

予約してもらったSNSのDMにメッセージとチェックアウトの動画を送ります。これを見て、いってらっしゃい、と送り出す。ここまでやって、オンラインでの宿泊体験が終了します。

WhyKumanoでは4月6日からオンライン宿泊を始めましたが、一日6〜7名定員で、21日間満床。オンラインの稼働率は100%です!(※ 4/30時点)

◆自宅にいながら熊野に宿泊できる「オンライン宿泊」の可能性

オンラインでの宿泊は、オフラインとは異なる状況がいくつも起きるといいます。「オンライン宿泊」を始めて見えてきたオンラインの可能性とは、どんなものなのでしょうか。

面白い出来事は話しきれないくらい色々ありますよ。

直近では、自己紹介のときにけん玉が趣味だと話していた方がその場で「じゃあやってみてよ」と言われたとき。

ほとんどの場合なら、けん玉がないという状況になるところですが、このときは自宅にいるので、もちろんすぐにけん玉を披露できた。なるほど、これは面白い状況だなと思いました。

今までのようなゲストハウスの交流の良さもありながら、交流の仕方に新しさを見つける瞬間がたくさんあります。

何より、オフラインではできないことが可能になったんですよ。大きいものでいえば、海外から宿泊できるんです。

第一回目から、なんとブラジルにいる人が予約してきたんです。地球の裏側、時差が12時間だから、みんな「こんばんは」ってチェックインしてくる中で、その方だけは「おはようございます」って言ってチェックインしてくる。こんなこと初めてですよね。

やってみたら、できることが多いのに気付いたという感じです。

あとは、結婚記念日の方も宿泊されました。旅行に行けないぶん、家でちょっと豪勢な料理を作って食べて、オンライン宿泊を利用する。なるほどそんな使い方もあるんだなあと思いました。

テーマ別ということでビール好きが集まる回を設定してみたときは、みんなビールという共通項があるので自然とビールの話で盛り上がりました。

参加者の半分以上がゲストハウスオーナーだった回もありました。

ゲストハウスのオーナーをしていると、繁忙期もある中でなかなか他のゲストハウスを回ることって意外と難しいんですよ。この日は長野、佐賀、東京、福岡……と全国から集まりました。お互いの地域を紹介し合ったり、全国のゲストハウスオーナーと繋がれるいい機会でしたね。

…と、来る人はもちろん毎回違うので、21回やったら21回とも違う話になります。だから何回来ても楽しめるんです。毎週末来ている人もいますよ。次で4回目の宿泊です。

そしてオンライン宿泊では、今までゲストハウスに泊まりたかったけど泊まれなかった方も宿泊が可能になる。ペットがいて家を空けられない人、小さい子供がいる人など、誰でも来ることができるんです。

熊野は大阪や名古屋から4時間と、時間がかかる場所にあるんですが、これからはどんな地域なのか、ここに何があるのか、オンラインで予習してから熊野に来ることもできる

さらに、地元の方もターゲットになるんですよ。近いし、行くまでもなかった人が、オンラインなら行ってみるかな、と地元にいながら全国の旅人と交流できるんです。

今まではオフラインでつながって連絡先を交換して、その後にオンラインで交流するというかたちが普通だったと思いますが、これからはオンラインで出会って、次は実際に会いに行くという今までとは全く逆の流れができる。

そうなるとオンライン、オフラインの両輪でずっと来てもらう事ができる。仕事があるときはオンラインで泊まりに来ることができるし、久しぶりに足を運んでみようかなと思った時には現地に来ることができる。

あと、オンラインが凄い点はまだあって、旅の途中に立ち寄るのではなく家から宿泊するから予約日程の調整が容易にできます。満床であっても宿泊すること自体を諦めなくていいんです。

もし明日が駄目でも来週予約するということができる。だから、日程を後ろにずらすことはあっても、僕は今まで一人も断っていないんです。それこそ平日夜、仕事終わりに来ることもできるし、今後はこれが普通になると思いますね。

◆オンライン宿泊のゴールとは

オンライン宿泊。
今までの概念をひっくり返した面白い取り組みではありますが、そこにはもちろん、オンライン宿泊を通して目指すゴールがあるといいます。

僕らがやっていることは、コロナが収束したあとに熊野に来てもらう、来たいと思ってもらうことが目的です。

オンライン宿泊は満床という概念がないので、受け付けようと思えば20人、30人と予約をとることももちろんできるわけですが、そうなると実際のゲストハウスの交流の楽しみがなくなってしまう。だから6〜7人という人数設定をしています。利益の為ではないです。

WhyKumanoも去年の7月にできたばかりで、まだそんなに知られていないんですよ。だから、熊野も、WhyKumanoも、まずは知ってもらわないといけない。

今は「オンライン宿泊って何??」というところから入ってくる方がほとんどですが、僕は「オンライン宿泊、良かった」ではなくて「熊野、良かった」という出口で帰ってもらうことを意識しています。オンライン宿泊も、「行きたい」の理由になるということでいえば「形を変えた未来の宿泊券」という見方もできますね。

オンラインの魅力しか語ってないですが、いちばんの魅力があるのはオフラインなんですよ。僕らは宿泊事業者。僕はゲストハウスやお宿って自分の地域が好きで始めた人が多いと思うんです。だから、オフラインで案内して、泊まって、というかたちが理想だと思います。

つまり、オフラインをより楽しむためのオンライン、オンラインをより楽しむためのオフラインなんです。オンライン宿泊には、まだまだ多くの可能性があると思います。

◆まとめ

構想開始から準備期間はたったの2日、トライアンドエラーで今のオンライン宿泊の形を作ったという後呂さん。オンライン宿泊、うちも気になるけどできるか不安……という他の参加者さんの質問に対して「まずはやってみればいい」「慣れと経験値だから」と言い切っていた潔さが印象的でした。

WhyKumanoのオンライン宿泊はFacebook、Instagram、TwitterのDMから予約ができます。機会があれば体験してみてはいかがでしょうか。

最後に、お宿会議の中で出た意見をいくつか紹介して、記事を終わりたいと思います。

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「自分の宿だけを推すよりも、周りのお店なども困っているわけだから一緒に協力して頑張っていけたらいい。」

「これからはやはり、魅力があるところ、色があるところが残っていくのではないか。」

「今、みんなが思っている概念を壊しちゃっても良いかもしれないよね。」

「海外のお客さんが多い宿は、逆に子供の英会話学習のために宿泊するという切り口もあるのではないか。」

「ゲストハウスとはカラーが違うので同じ形態は難しいが、オンライン宿泊はヒントにできそうな点がたくさんあると思う。」

「ゲストハウスとはカラーが違うので同じ形態は難しいが、オンライン宿泊はヒントにできそうな点がたくさんあると思う。」

<記事執筆:田中 沙季

⭐今回のゲスト⭐

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