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未来に確約なんて無いけれど


さっきからずっと、涙がとめどなく溢れていた。

この涙は、なんの涙なのか。

悲しみの涙ではないことだけはわかる。

言葉でうまく表現できないが、

報いの涙、

みたいな類のものだと、思う。


3年間担当した、
中学2年の14歳の男子生徒からのお手紙に
私は、随分と、泣かされた。



水曜日がその子との、最後の授業だった。

私はその子にすごく感謝しているから、
一方的に、ずらずらと文章を書いて
手紙にして3月2日の水曜日に、渡した。


本当に伝えたいことを伝えるために。


その子へのはかり知れない感謝の気持ちと、
今までよく頑張ったねってことと、
どうして仕事を辞めることにしたのかってことと

それと、今まで伝えてこなかった、
自分の過去についても、少し。


そしたら、それのお返事かな。

私の手紙を読んで、その子が思ったことを、
書いて、今日、伝えてくれたのだ。

今日の夕方、他の生徒さんとの授業中、
後ろから声かけられて、
一瞬だったけどその子と会えて、
差し出されるがままにお手紙受け取った。


3年間の、塾での最後の仕事が終わってから
車の中で読んだ。

読みすすめるにつれて涙が出てきて。

生徒さんから、こんなに泣かされる手紙をもらうのは
初めてだと思ったくらい泣いて。


涙ぐむ、

じゃなくて、

とめどなく、溢れる涙、ってかんじ。



もう既に何回も繰り返して読んでしまうくらい、

そして同じところで何回も涙が溢れてくるくらい

その手紙は私にとって強力で、

今後生きる上でも、意味のあるものになりそうです。


もう会えないのが悲しい、
とか、
もう授業しないのが悲しい、
とか、
そういう類の涙ではないんだ。



その子の素直で懸命で、人の気持ちをわかろうとする、
そして苦しいときに助けようとする、そういうところや

そんな子がこの世にいるという奇跡への

喜びの涙かもしれない。


本物の優しさ、強さを

その子は、もう、もっている。



それと、彼からの手紙に書かれていることは、

肯定だった。

私の塾での仕事、3年間の報いだけじゃなく、

その前の辛かった時代すらも、
オセロのように黒と白をひっくり返してくれるような、

肯定だった。

だから、報いの涙。

とめどなく溢れたのは、きっと、報いの涙かな。

報いの涙が、とまらなかったのだ。

生きていて、本当に良かったねって、

何回も、思わず自分に言った。


這いつくばるようにして生きた、
あの頃の自分に本当は一番伝えたいよ。

手紙を読んで、心がふわふわ浮くようで、

彼のあのふんわりとした優しさに包まれるようにして
最後の通勤路を、後にする。

12歳も歳下だけど。

私の気持ちを、汲み取ろうとしてくれた。
彼の包容力みたいなものを感じさせる文章に
私は肯定され、救われ、そして癒され、
ずっと、涙が出てくるのである。今も。

大人げないけど。

でも、どうしてか、涙が、とまらないよ。


彼は、感じたことを言葉にして、伝えて。
伝えるために行動してくれた。

「もか先生!」って呼んで、
その子と、お母様からの手紙、
2通を私に差し出して。

私、他の子との授業中で、
びっくりしながらも、会えて嬉しいので動揺しながら
思わず差し出されたものを受け取ると、

ちゃんと頭下げて、

「ありがとうございました。」

って周りを気にせず、

大きい声で、言ってくれて。


その潔さにも、心奪われるものがあった。

出会えて、担当できて、本当に良かったな。

人間として、大好きだ。

出会った日からずっと、
裏切られることが、まるでなかった。

良い意味で、第一印象が変わらない。

いつも、絶対的に優しくて、
絶対的に素直で、関わる人を、絶対的に幸せに出来る。


私も間違いなく、
その子との授業の時間は、幸せだった。

他人である生徒さんのことを、私は愛せるんだな
って思えたのも、その子だった。


そしてこれからも、ちょくちょく、
連絡をくれるらしい。

未来に確約なんて無いけれど、その子からの連絡は
密かに、楽しみだなと思える。

彼は絶対に、いつだって裏切らないんだもん。



ああ、神様は、ちゃんと見てくれているのかなって
思うことが、最近やっぱり多い。

必要な時に必要な出会いを
ちゃんとタイミングみて、
用意してくださっているのかなと思う。

這いつくばるにして
生きなきゃいけなかった時期があった。

だから本気で、
仕事とか、人生とか、生き方とか、
そういうのに向き合わなきゃいけなかった。


どうしても、日々、生きているのが
どうしても辛かったから。


どうしたら、

「生きたい」

って思える毎日をつくれるのかな。

って、3年前から本気で向き合ってきた。

やっと、芽が出てきた気がする。

いつだって、当たり前な日常に幸せを見つけられる。

けれども、これからもっと、

こういう報いも、増えていくかもしれない。

あのとき、ちゃんと向き合ったから、

というか

いつも、本気で真剣に、
生きてきてくれた自分がいるから。

またオセロのように、
裏表きれいにひっくりかえるときを

待とうとおもう。



ああ、明日起きたら、目がボンボンになってそう。

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