資格

私には本当にそれをやる「資格」があるのか?

講習を修了すると「◯◯認定の△△セラピスト」になれます、みたいなやつ、最近たくさんありますよね。そして、そういう「資格」を取得することによって、自分はその職業や活動をできるという考え方があります。

これ、本当にそうでしょうか?

資格が通用しない世界もある

れんげ舎の活動のはじまりは、地域の子ども会活動でした。

毎週土曜日の放課後(当時は土曜日にも授業がありました)に子どもたちが集まり、学生の指導員が場をつくっていました。その活動が発展してれんげ舎ができたわけです。

れんげ舎ができてから10年間ほど、毎週月・水・金の10時から20時まで、小学校高学年以上の子どもはだれでも来ていいという、「子どもの居場所スペース」をやっていました。
学校のある時間帯のそういう活動は当時は珍しく、近年のように、あまり理解・歓迎されていませんでした。

ある日「地域の実力者」みたいなおじさんに呼び出され、こう言われました。

「君は、なにか資格があってそれをやっているのかね?」

若い僕は、怖そうな(そして感じの悪い)その人から尋ねられて、正直、びびってしまいました。

子どもの居場所スペースを運営するのに、資格は要りません。
ただ、そこではいろいろなことが起こりますから、対処する力、サポート体制は必要になります。
僕は、「資格はあるのか?」と問われて、どう答えていいのかわかりませんでした。

間違った質問のように感じたのです。

「資格があるから自分はやれる!」は思い込み

例えば「認定◯◯セラピスト」みたいな資格を取得したとします。
でも、人の心を扱う仕事で、“この「資格」があれば大丈夫!”なんていうこと、あるわけがありません。

“私は「資格」を持っているから、私はやっていいんだ!”

こう考える人は、自分が素人であることを証明しているようなものです。

「資格」というのは、外側に基準があって、外側の基準に照らして、評価・判断されるものです。それらは、実際的にその職業に就くにあたって、法的・社会的に不可欠な資格かもしれません。

でもそれは、「必要だ」というだけのこと。

その活動をする「資格」、それをやっていいという「許可」、それを最後の最後に与えてくれるのはなんでしょうか?

僕は、それは自分自身の心(内側の基準)だと思います。

“本当は自分はそれをやることができる/できない”、

このことは、本人の心が一番よく知っています。
資格は、最後は自分で自分に出すのです。

資格がなくてもあなたになら出来るのでは?

一方で、「わたしには何の資格もないから…」と言って、自分の能力を認めない人もたくさんいます。

ニュースレターをつくるのがすごく上手なのに、「私は編集の仕事をしていたわけじゃないから」と言う人。
イラストが上手で描いてと依頼がきているのに、「私はプロのイラストレーターじゃないから」と言う人。

僕は、こういう謙遜は、無意味だと思っています。

よく「出来ないなら素直に認めなさい」などと言いますが、むしろ、出来るなら出来ると、素直に認めるべきなのです。他人と比較して、上だとか下だとか、ごちゃごちゃ言わない。私にはそれが出来ます──これでOKです。

それらがあるならあるで、もちろんいいのですが、ないからできないというのは、非論理的です。

自分で自分に資格を与える

日本人は、「出来ない」という思い込みが強すぎます。他者と比べすぎです。

セミナー会場で、「ピアノが弾ける人はいますか?」と尋ねると、パラパラと手が挙がります。「それでは、ピアノを習っていた人はいますか?」と尋ねると、もっとたくさんの手が挙がります。

ピアノを触ったこともない人からみて、「ピアノを習っていた人」は、当人がどんなに自信がなくても、ピアノに15年触っていなくても、「ピアノが弾ける人」なのです。

別に、ピアノコンクールで優勝したとか、坂本龍一と共演したとか、そういう人を探しているんじゃないんです。その場で、「ピアノが弾ける人」があなたなら、あなたがどんなに自信がなくても、あなたこそが「ピアノが弾ける人」なのです。必要なのは、他人と比べないこと。出来ることを出来ると認めることです。

外的に認められた資格がなくても、それができるなら、ただ「私なりにできます」と言ってください。

自分で自分自身を認め、資格を与えてください。

僕も、自分で自分に資格を与えて、この仕事をしています。
昔は「資格があってやってるの?」とよく尋ねられましたが、もう長い間、だれからも尋ねられません。

僕自身が僕に、心から資格を与えたからだと思っています。

他者と比較しなくてもいいんです。

オリジナル、ユニークでOKです。自分で自分を厳しくみつめ、出来ることを出来ると認めてください。その上で、出来ないことをいまは出来ないと認めてください。

そうすると、自分がいまやれること・やるべきことが、見えてきます。

\あなたへのQuestion/
特に資格や職業経験はないけど、
ふつうの人より得意なことはなんですか?

長田英史(おさだてるちか)|プロフィール
NPO法人れんげ舎代表理事。「場づくりクラス」講師。まちだNPO法人連合会会長。
1972年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。和光大学経済学部経営学科卒業後、同大学人文学専攻科教育学専攻中退。教育学や心理学、運動論、身体論などを学ぶ。1990年、在学中にかかわった「子どもの居場所・あそび場づくり」の市民活動に学生ボランティアとして参加し、卒業後は就職せず、それを仕事にする。
いわゆる中間支援組織ではなく、自らも現場で活動する「プレイヤー」として、「場づくり」の哲学とノウハウを共有し続けている。
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