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アニメ映画「夏へのトンネル、さよならの出口」感想 高校生の二人×ウラシマ効果×君の名は。の影響力

観て一番最初に思ったのは、「主人公はどうするの?」という疑問だ。行方不明から13年経って、身体的には高校生なのて世間がパニックになると思う。この後の物語の方が気になる。少年が年を取らずに13年先にタイムスリップした様相になっている。本人からしたらかなり過酷であり、どのように対処するのか気になってしまう。物語は、カオルとあんずが何でも好きなものを手に入れられるウラシマトンネルに入る。現実世界の1日はウラシマトンネルの36秒であり、そのギャップがタイムスリップになるわけだ。色々あって、カオルとあんずは同級生から8歳差になってしまい、さらに二人でウラシマトンネルに入り、外の世界で5年間経つことになる。君の名は。のように、元の時間軸に戻ってこれるわけではないので、物語後の特にカオルの身辺がきになってしまった。父親は自己中心的な最悪な人物に見え、社会的に不安定なカオルがどうなるか。タイムスリップもので、主人公のその後が気になるのは中々にない。恋愛映画としてはハッピーエンドだが、カオルには過酷な未来が見えてしまう。あんずも漫画家として成功していたが、5年間行方不明になっているので、彼女も過酷だ。

この物語で本質的には、父親が悪い点がクローズアップされている。娘か亡くなった理由をカオルに押し付けたり、酒で人格が変わりカオルに八つ当たりしたり。特に再婚の話をして、カオルが動揺して吐くと、カオリを詰り、カオル一人を悪者にしたいように見えた。この父親が駄目で、これが原因でカオルが苦しんでいる。カオルは死んだ妹をウラシマトンネルで取り戻し、家族を再生させたいと思っているが、父親はそんなカオルの想いを知らない。どうしても自己中心的な印象が強く、母親がカオルといっしょに出て行かなかったのも父親に原因があるかもしれない。そもそも、カオルの妹が家族の幸せを願っていたのは、両親の不仲もあるように思う。父親がしっかりしていないせいでカオルが苦しむ。物語の発端は父親にあるのかと思わずにはいられない。そーゆーことを考えて、父親が悪いように描いているなら成功している。父親に良い点が一つでもあれば印象が変わる。実はカオルを大切に思っており行動していたとかだ。原作では語られているかもしれないが、映画からは読み取ることができなかった。

ヒロインのあんずは、ウラシマトンネルに漫画家になれるような、希有な才能を付与してもらうように願おうとしたが、すでに持っており、応募した漫画が編集者の目に止まるぐらいである。漫画家が売れなかった祖父と同じ道を志したあんず。ウラシマトンネルの力を使おうとしたが、くぐる直前に編集から連絡があり、迷ってしまった。それを聞いたカオルが一人でウラシマトンネルに行くことになる。結局のところ、ウラシマトンネルに頼む願いとしては、漫画家になれる才能というのは抽象的すぎかなとは感じた。売れる漫画は誰にもわからないし、形あるものではない。ウラシマトンネルで得たのは形ある物質である。あんずはウラシマトンネルに入ったカオルにいつか合うために漫画を描き、連載も持った。その想いが漫画を描く原動力になっていった。ラストには出会うのだが、漫画を描くには才能とこだわりが必要だから。まあ、漫画家だけではないが、誰かに想いを届けるために何かに集中してこだわるのはすごく大事。それを感じさせてくれる作品である。ラストがハッピーエンドなのかよくわからないが、才能は未来への形であり、なくしたものを取り返すウラシマトンネルではどうあっても手に入れることはできなかったということだ。

カオルとあんずが駅で出会い、カオルが傘を貸し、あんずが返すまで13年。確かに長いが、本人からしたら、あっという間。ラストには、サビだらけのビニール傘をさすのはいい場面である。かなり、印象に残る場面で、特にあんずは8年の想いが報われた瞬間である。恋愛映画の要素をタイムリープでうまく重ねているのが良い。君の名は。を思い出した瞬間でもあり、相当に影響を持った作品だったなあと改めて実感した。君の名は。はいまだにアニメ映画に影響力があり、何かしら共通する部分がある。もう、6年以上経ってしまったのに。カオルとあんずが同い年から8歳差になるのも印象的だ。同級生なのに、あんずは大人であり社会人。変わった価値観を持った二人はこれからどうなるのかと思わずにはいられない。結婚とかよりも二人の居場所はどこなのか?日常は快適に送れるのか?そーゆーことを考えてしまう。タイムリープものとしては異質で、後の物語がきになってしまい、色々と妄想する。特に親とはどうなるのか?子供の頃なら結ばれて良かったで感想は終わるが、大人のわたしは親や会社の人たちとの付き合いが気になる。そのような、現実的なものを考えさせてくれるアニメ映画。鑑賞すると、恋愛以外の部分が頭の中から離れなくなっていく。

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