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#109: こんなときだから♪シューベルト〜音楽家の鑑「辻音楽師」

シューベルト:歌曲集『冬の旅』より「辻音楽師」(1827)

#106 -112のテーマは「歌と踊りがなきゃやってられない!?ー仕事と音楽」

恋人が眠っている間に別れを告げ,旅に出た青年は,村のはずれで手回しオルガンを演奏する年老いた辻音楽師(路上の演奏家)に出会う。

誰も聞いていない。銭入れの器も空だ。
凍つく指で懸命にハンドルを回し,音を奏でている。

誰も関心を向けない。それでも老人は,ただただ今できることを,淡々とつづけている。

青年は,自分と同じように世界から拒絶された存在として老音楽師に共感と希望を抱く。

「老人よ,私の歌にあわせてライアー(手回しオルガン)を回してくれるかい?」

フランツ・シューベルト(1797-1828)の歌曲『冬の旅』の終曲である「辻音楽師」。青年と老音楽師の出会いによって,24曲からなる「冬の旅」は幕を閉じます。

誰も聴いていない。誰も関心を寄せない。お金もろくに稼げない。
それでも,あなたは音楽家として生きていく覚悟はありますか?

と,現代に生きる音楽家,演奏家に容赦無く問いかけているようで,胸に迫るものがあります。

この曲が生まれた1827年から約200年後の2020年現在。
家主は音楽家ではありませんが,音楽に関わる一人間として覚悟を決める心境となった,そのマイルストーンとしてこの曲を選びました。

皆さんにとって,自分の心境と偶然にも重なった,そんな一曲があったら教えてくださいね。

今日もみなさんにとって,素敵な一日でありますように!


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