見出し画像

周囲の「感謝」を創り出している”自分らしさ”

前の記事にある「私の考えるポスト資本主義へのシフト(前編)」において、人を活かすという発想のシフトについて書いた。その人のユニークな部分を開花させて新しい役割や事業を考えるような発想が大事であるということである。

昨今、自分らしさの探求の重要性は高まる一方である。個人がメディアにもなるこの時代において欠かせないことかもしれない。一方でこれからの時代、その自分らしさの発揮が同時に誰かの救いになることの重要性は以前記事にも書いたとおりである。

改めて「誰かの救いになっている自分らしさ」とは何だろう。

そのヒントが実は「感謝」というシンプルなコミュニケーションの中に潜んでいると思うのだ。「ありがとう」という言葉は人を幸せな気持ちにする。しかし、何が有難いことであったのかについては語られず、「ありがとう」という一つの言葉のパッケージとして感謝を受け取っているのが一般的である。

しかし、私は「ありがとう」には2種類のケースが存在するように思うのである。

誰でも同じようなことをすれば言われる「ありがとう」
あなただからできることをしたときに言われる「ありがとう」

前者は、誰かが落としたものを拾って、その人に渡したとき。
後者は、あなたの才能やならではの能力で誰かに何かを施したとき。

いずれもそのアクションによって相手に何らかの快感情が生まれている。だから「ありがとう」なのであり、相手の笑顔を引き出せるのである。
ただ、後者にはあなたしか生み出せない価値が生まれているのではないだろうか。たいてい人はそこには無自覚になる。なぜなら多くの場合、自分らしく秀でたことはたいてい誰でもできる普通のことだ思いこんでしまいがちだからである。ありがとうと言われたら、それだけで十分なのである。しかし、その時相手にはどんな感情が生まれているのだろう。相手が「ありがとう」を言うその瞬間に生まれていた感情こそ、あなたらしさが生み出すことのできる「人の救いになる価値」なのではないだろうか。私はそれを「感情価値」と呼んでいる。*マーケティング用語の「感情的価値」とは異なる私の造語である。

画像1

この感情価値を生み出す源とは何だろう。それはあなたの能力や才能といった表面的に表れている行動レベルのことだけではないかもしれない。その奥には無意識ながらに込めている思いが潜んでいたり、さらにその奥にはあなたの生まれ持っているユニークな資質が存在しているのではないか。私はこれを「ギフト(感情価値を生み出すあなたならではの資質)」と呼んでいる。

画像2

どんな些細なことでも、日ごろ確実に誰かの救いになっているあなたらしさがある。その萌芽を知っていくとあなたのギフトを活かしてもっと多くの人たちに、もっと大きな感情価値を届けていくことができるはず。そのために何ができるだろう。それを考えていくことこそ、あなただから生み出せるイノベーションの起点になる。このように互いのギフトを見つけあい、可能性を広げていく営みを「ギフトマネジメント」と呼んでいる。

そんな「ギフトマネジメント」の第一歩はその感情価値がフィードバックされることにある。自分が受け手として何かをしてもらったときに生まれた感情価値をフィードバックされることによって相手に喜びを生み出し、幸せにする。それこそ何かをした相手からもらえる、「ありがとう」というパッケージの中に詰まった、かけがえのないギフトである。そして、自分のギフトに気付いてまた誰かにその人ならではの価値を届けることができる。このようにしてギフトと喜び(JOY)の循環が生まれてくると世界が変わるはず。

画像3

そして、この可能性を身の回りからどんどん大きく広げていくことができる。例えば身の回りから一歩枠を出て家族であったり、自分の職場全体であったり、組織全体、ひいては社会にまで。このようにあなたらしく誰かの幸せにつながる資質を活かしあえる関係性と文化が広がるコンセプトとして、このギフトマネジメントを広げていきたい。つまり、この営みの本質とはひとりひとりが生み出す感情価値を社会的価値へと転用していくことにあり、ひいては以前記事(「ポスト資本主義へのシフト(後編)」)に書いた自分の本来性ドリブンの社会創造につながる。企業組織の中でもこうした個の可能性の開花を自然に行える文化が定着していくことで、一人一人の幸福度を高めるだけでなく、社会的価値に根差した本質的なイノベーションが生まれるきっかけをつくっていくことができるのではないかと思う。

画像4

この記事を読んだ方々に今日から試してもらいたいこと。それは相手がしてくれたことの感謝になる前の気持ちを表現してみるというシンプルなアクションである。ぜひ、相手の人の存在や行動が生み出してくれている感情価値を伝えるというギフトから始めてみてもらえないだろうか。世界がこんな状況だからこそ今たくさんの「ありがとう」が生まれているはずだから。

この「ギフトマネジメント」がポスト資本主義へのシフトに向けた社会全体、そして組織の文化形成の一つのコンセプトとして広がっていくことを願いつつ浸透に向けた活動を続けていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?