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児童相談所を叩けば叩くほど虐待死は増えていく

札幌市での女児虐待死の事件。酷い事件でした・・・

そして、今回の事件は児童相談所の怠慢を叩く声が一気に噴出する結果となりました。

https://mainichi.jp/articles/20190608/k00/00m/040/260000c

SNSを見ていても児相を叩く声が非常に多く、確かに48時間ルールを守らなかった点や、複数回の通報でも虐待を確認できなかったことや、警察との一悶着も起きていて、児相が怠慢だからだ!という風に見えて仕方ないと思います。

しかし、今回の一件、本当に児相だけの責任なのでしょうか?

事件の表面だけをなぞり、児相を叩くコメントが多く見受けられますが、これが本当に日本から虐待を減らす良策と言えるのでしょうか?

冷静になって考えてみたいと思います。

以前から言われています通り、児相は「人手不足」です。

なぜかといえば、虐待などの通報や相談件数の増加と、職員の増加が全くつり合っていないからです。

札幌市の虐待相談ですが、平成22年で478件でしたが、平成29年では1494件。7年で約3倍に膨れ上がっています。

一方で児相の業務を行う児童福祉司がどれだけ増加しているかと言うと、全国平均でわずか1.3倍程度に留まっており、虐待の相談件数に比べると、ほとんど増えていないのが現状です。

虐待の相談が3倍になったという話を書きましたが、これは、虐待と認定された相談の件数です。
実際に札幌市の児相に寄せられた相談件数は全部で7,000件以上あり、その中の1494件が正式に虐待と認定された数となります。
しかし、実際には虐待を疑って相談してきて虐待ではないケースもあります。昨今、虐待死のニュースが増えてきたと同時に、年配者が子供の騒音に対して過敏に反応し、保育園の新設を騒音だと言って認めなかったり、公園では声を出さないで遊んでくださいという訳のわからない注意看板まで出てくる始末で、「子供を排除する権利を認める社会」になりつつあります。

つまり、相談の中にはただ単に「赤ちゃんが泣いている」「子供が悲鳴を上げている」というだけの、子供なら当たり前の行動まで通報され児相が動いているというケースもあります。
虐待は3倍に膨れ上がり、なおかつ、こういった子供に対する過剰反応にも対応し無くてはならない現状にあるのが今の児相です。

ここまでの内容だけでも、児相の仕事量はこの7年で3倍に膨れ上がっていることがわかると思います。しかもこれは児相職員一人あたりの仕事量です。

考えてみてください。貴方の仕事量が今の3倍になりました。だけど増員はしません。もともと暇な仕事なら良いですが。1999年から2009年の10年間では4倍に相談件数が増えています。もっと言えば、1999年から現在までに相談件数は10倍です。ただでさえ忙しかったのに、更に仕事が増えたんです。

サラリーマンならやってられませんよね?ブラック企業ですよね?とてもじゃないですけど、仕事なんて回せる状況じゃないですよね。

ましてや、相手をするのは平気で嘘をつく狡猾な虐待親です。嘘を付くだけではなく、職員に対する暴言もあれば暴力を振るおうとするものもいます。虐待を認定して子供を助け出しても、親が子供を取り返しに児相に殴り込みもかけてきます。相手は狡猾な相手ですから虐待を見破るには朝昼晩関係なく働かなくてはいけません。

超絶ブラック企業ですよね?働きたいと思いませんよね?

しかも、親企業である国から、そんな状況なのに一方的に48時間ルールとか決められるんですよ。児相より巨大な関連会社の警察からも「あいつらが悪いんだ」とか言われるんですよ。

ルールの丸投げです。児相という下請け会社の悲鳴が聞こえてきます。

それでも今後、人手不足を解消して職員を育てなければ、本物の虐待を見破って虐待されている子供を救わなければいけません。しかし、その一方でマスコミからSNSから児相が悪いと一方的に叩かれ、イメージをどんどん下げられていけば、児相で働きたいと思う人、増えませんよね?

児相を叩けば叩くほど、虐待死は増えます。

叩くというか、本当に考えなくてはいけないのは、児相の問題だけではなく、もっと他にあります。

まず1つ目は、虐待する親の72%は自分も虐待された経験を持っています。
虐待されてきた子供は大人になってからも心のケアが必要なのに、18歳を超えると何もケアされず、結婚して子供を生み、虐待してしまうという負の連鎖を巻き起こしています。
虐待された子供は大人になり、結婚して、子供ができるという一連の流れで、絶えず心のケアをおこなっていく仕組みが必要です。
これがなければ、負の連鎖はどんどん拡大して、虐待は無くなりません。

2つ目は、子どもの問題を児相だけが管轄するのではなく、地域が支える仕組みを作っていく必要があります。
虐待が増えた一番の要因は、家庭というものが閉鎖された環境になってしまい、近所同士、誰が何をしているかという興味すら無くなってしまったことです。
これはすぐに解消できる問題ではありません。しかし、隣近所が関係を持つのではなく、民間団体が子供のいる家庭を見守る、町単位での仕組みはあってもいいと思います。
昔はおせっかいな年寄りがたくさんいました。しかし、そのおかげで、子供の安全が守られ、犯罪を未然に防ぐこともできました。
児相以外にも、児相を中心としたネットワークとして、もっと小さな町単位で子供を見守る民間団体が必要になってきていると思います。

3つ目は、必要以上に「子供を排除する権利」を与えないということです。
子供は騒音という苦情を受け入れれば受け入れるほど、どんどんくだらない通報が増えていきます。大したこともないのに救急車を呼ぶ常識はずれな人間のように、子供のちょっとした行動でも通報して良いんだと思う馬鹿を減らすべきです。

今回の虐待死で叩くべきは児相ではありません。
むしろ、表面だけを見て短絡的に叩くというマスゴミに踊らされてSNSで盛り上がるべきではありません。
今後、児相を中心とした子供を見守るネットワークを構築するためには、優秀な人材を児相に増やす必要があるのに、叩いてイメージダウンさせればさせるほど、人手不足は解消せず、虐待死はどんどん増えていきます。

なぜ、この子は親に殺されなくてはならなかったのか?
児相の責任?
児相で虐待から救われた命もたくさんあります。
児相だけの責任ではありません。
国も個人も含めて、子供への無関心が招いた社会問題です。


一気に書いたんで統計などミスが有りましたらご指摘ください。
「札幌 児相 虐待件数」などで検索した札幌市や厚生労働省の資料から計算してます。

他にも児相の職員を増やす方法とか、里親制度を改革したりとか、色々と書きたいことがあるんですが、またの機会に。

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