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それでもやはり、意識せざるをえない(小野美由紀のマガジン)

作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また… もっと読む
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#エッセイ

人から離れる

3ヶ月ぶりくらいに、スタジオでのヨガのレッスンに行く。

やはり場があることは嬉しい。

大勢の場で一緒に練習できることが嬉しくて終わりの方で泣いてしまった。

先生も「みんなで場が持ててとても幸せ」と言っていた。

オンラインのよさに「他人から干渉を受けない」ということがあると思う。

どうしても、他人と同じ場を共有するというのは、それだけで人体にものすごく大きな影響がもたらされる。

悪い場に

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土から言葉を吸い上げる

土から言葉を吸い上げる

6月某日

小説の取材で新潟に行ってきた。

コロナの影響もある中、もしかしたら嫌な顔をされるのではないかなあと思っていたのだが、蓋を開けてみれば思ったより街中に人も多く、日常がすでに戻ってきているみたいで、とりわけ観光業に関わる方は皆優しくウェルカムなムードだった。

「にしかん地区って新潟の中でも全然知られてないんですよ、新潟って言ったら長岡とか、燕とか、あるいはリゾート地域とかでしょ、って言

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『軽い男じゃないのよ』を鑑賞

『軽い男じゃないのよ』を鑑賞

5月某日

原宿なつきさんというライターさんに、WEZZYさんにて『ピュア』をご紹介していただく。

この記事中に出てくる「軽い男じゃないのよ」というフランス映画が気になったのでNETFLIXで見た。(日本語字幕あり)

端的に言って、とても面白い映画だった。

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新型コロナ鬱熱日記

新型コロナ鬱熱日記

4月某日

緊急事態宣言につき完全に家の中で過ごす生活が始まるも、何も変わった気がしない。そもそも4月は新刊のプロモーションの時期なのであえて仕事を入れておらず、特にする事があるわけじゃないので暇なのだ。

とはいえ慢性的に体調が悪いのは、やっぱりストレスなのだろう。先が見えない不安からというよりは、書店が次々に休業を決め、新刊が思うように売れないという事があり、それから来る不安だ。紀伊国屋書店が

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「見られる」ことが人を作る

「見られる」ことが人を作る

3月30日

「ピュア」の白焼きを提出(白焼きというのは印刷前の最終決定版みたいなものです)。白焼きの訂正にはお金がかかる、ということを知らなかったがために、限界まで修正を入れてしまう。編集者さん、制作の方、ごめんなさい。

2020年1月のかくかくしかじか

2020年1月のかくかくしかじか

1月1日

年が明ける。

寒いのでいわゆるパンティーの上に、ユニクロのヒートテックとタイツと毛糸のパンツを履いて出かける。

途中、カフェで尿意を催し慌ててトイレに駆け込み、スカートなので手探りで一気に引き下ろして用を足したら、なんだかだんだんお尻があったかくなってくる。

どうしたことかと見たら一枚脱ぎ忘れてた。

これが34歳になったばかりの年明けのことかと思うと情けなさで涙が出そうになる。

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文フリに初めて参加した日

文フリに初めて参加した日

11月24日(日)文学フリマ。

寝坊。13時ごろ到着した流通センターは駅の構内から異様な熱気に包まれていて、ああ、こんなにも『表現したい』人が世の中には溢れているのだなあ、と改めて驚く。

プロの集まる場にはない熱気だ。

プロの人っていうのは、たとえやる気とか、愛があっても、何かのオブラートに包んで、そっと脇に取って置いているような雰囲気の人が多い。

「いえいえ、私はそんなもの持ち合わせてい

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「モダン・ラブ」でアン・ハサウェイ演じる躁鬱病の女性がリアルすぎて辛い

「モダン・ラブ」でアン・ハサウェイ演じる躁鬱病の女性がリアルすぎて辛い

今話題のアマプラオリジナル「モダン・ラブーNYの街角で」を見る。

30分×8話、単純な「男女が出会ってくっつくまで」の旧式的なラブ・ストーリーではなく、さまざまな形の愛情を描いたオムニバスで、1話1話が大変に濃い。

性別、年齢、立場、様々な事を超えて「愛」って成り立つんだなあ、人生って可能性の宝庫だなあ、と胸を打たれるお話ばかりなのだけど、特に私が心えぐられたのが第3話のアン・ハサウェイ演じる

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愛の適量

愛の適量

少し前のことだけど、編集者・エッセイストである太田明日香さんと京都でお会いした。

太田さんの家族に関するエッセイ「愛と家事」、"これは全部私のことか!”と思うほど激しく共感しながら読んだので、お会いできて嬉しい。

「愛と家事」というタイトルだけど、正確には「母と私と家族」みたいな内容だ(と、私は思った)。

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困りごとと悩みごとの違い

困りごとと悩みごとの違い

「困りごとと悩みごとっていうのは違うんだよ」と、カウンセラーの友人が言う。
「あのね、困りごとっていうのは主題が明確で、本人も自分が何に困ってるのか、はっきりしてる状態。でも悩みごとってのはさ、

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子は親が人生でやり残したことを補完するために存在する(のか)

たまに実家に帰ると母の料理センスのなさに愕然とする。なぜチャーハンに生ハムを入れるのだ。ふつうベーコンだろ。あとパクチーは汁物でもないのに生のまま加えるな。パッサパサになるやろ。ミニトマトをすでに煮終えた味噌汁に入れるな。入れるんなら煮る前からやろ。なんていうか全ての料理においてタイミングがずれてる。

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自死について

このマガジンの更新をしなければ・・・と思いつつ、今月はなんだかずっと動けなかった。人に何かを言うことが、書くことが、いいことなのかどうかわからなくて、書こうと思ってはぼんやりすることが多かった。

なぜかと言うと、知り合いを亡くしたからだ。彼女は親しい友人・・・と言うわけではなかったけど、顔も知っていたし、あるコミュニティの中で関わりがあって、たまに「どうしているかな」と思い出すぐらいの関係性だっ

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人間関係に無責任でいられることの大切さ/霊感コンプレックス

人間関係に無責任でいられることの大切さ/霊感コンプレックス

人間関係に無責任でいられることの大切さ遠くに見える富士山は、火の中で燃える炭のように赤い。山全体の木が震える音が聞こえて、ずっとかけっぱなしのラジオの声がざらざらと乱れる。

少しの肌寒さを感じる。もう直ぐ夜が来る。作陶に夢中になっていると、時間の継ぎ目がなくなって、今自分が一日のうちのどこにいるのかわからなくなる。

山梨の増穂の陶芸工房に、長いこと通っている。今も来ている。大芸術家、池田満寿男

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