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尾道のいちじくはプチプチねっとりまん丸だけじゃないんです

こんにちは、尾道市地域おこし協力隊の池上です。
(尾道市ってどんなところ?協力隊ってなにをしているの?という方は先にこちらの記事をご覧ください♪)

わたしの任務のなかに、市全域のPRとふるさと納税の返礼品探しがあるのですが、そのおかげで尾道市の事業者さんや生産者さんのところに行く機会が最近増えてきました(嬉しい...)。

そこで、皆さんにもわたしが見聞きした「ものづくりの上流部のお話」をおすそ分けしたいな~と思い、noteとInstagramでご紹介することにしました。

今回は、広島県が生産量全国1位の「いちじく(蓬莱柿 ほうらいし)」の生産現場と加工現場をご紹介していきます!

1. 尾道のいちじくは何がちがうの?

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東京で生まれ育った私にとって、いちじくと言えば、スーパーでチャック袋にぴっちり入った、プチプチねっとりな甘いドライフルーツ。

ときどきタルトケーキの上に、ふぐ刺しよろしく綺麗に重ねて乗っかっているあの子。というイメージの方も多いのではないでしょうか。

実は世界を見るといちじくの品種はかなりの数あるようで、白色や黒色、生食できるもの、できないものなど見た目も味も多種多様だそうです。

ちょっとマニアックな話ですが、農林水産省のデータによると、全国のいちじくのほとんどが「桝井(ますい)ドーフィン」という品種(上の写真右)。ドライフルーツやケーキに使われている大半がこの品種です。

一方で、広島県のいちじくは「蓬莱柿(ほうらいし)」と呼ばれる種類。ドーフィンに比べて柔らかく、1日ほどしか日持ちしませんが、より甘いのが特徴だそうです。

そして、この蓬莱柿という品種のいちじくは、広島県が全国1位の生産量を誇ります。日持ちしないので基本的に関東圏へは出回らず、関東圏の人たちはまずお目にかかれない「希少な」いちじくなのです。

2. いちじく農家さん訪問

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この特別ないちじく(蓬莱柿)の産地の1つが、尾道市の浦崎町(うらさきちょう)です。

浦崎町の農家さんのところへお邪魔すると、成人男性より少し背丈が高いいちじく(蓬莱柿)の木が出迎えてくれました(※収穫がしやすいようにひとの手でその高さにキープしているそうです)。

いちじく(蓬莱柿)の収穫期は8月~10月。今回訪問したのは、収穫期がはじまる1週間ほど前だったので、写真のようにいちじくはまだ緑色。

収穫するときは、太陽が出ると暑さで実が柔らかくなってしまうので、日の出前の朝4時頃から作業をスタート。日持ちしないので、収穫後はすぐに冷房の効いた部屋に持っていき、そこで選別作業をして、冷蔵機能のついた車で農協に運びます。

また、雨の日の前日には、いちじくが雨を吸って腐ってしまわないようトレーを改造したお手製の「傘」を1つ1つにかけていくのだとか。

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聞くだけで「なんと手間のかかる...。」と思ってしまうのですが、いちじくは虫が付きにくい植物なので、他の果実と比べると育てやすいのだそう。

驚いたのは、近くの川からミドリガメが地面に落ちたいちじくを食べに来るということ。鳥を想像していたら…まさかの亀。

しかもお掃除をしてくれているようなものなので、農家さんにとって嬉しい来客なのだそうです(いろいろと驚き)。

3. いちじくの加工者さん①尾道造酢さん

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遡ること約400年以上前。豊臣秀吉が朝鮮から、大阪・堺に連れてきた酢造りの職人を、温暖な気候と豊かな水源がある尾道に招き入れたことで、尾道でのお酢づくりがはじまりました。

なんと創業1582年(約440年前)という尾道造酢さんに、いちじく(蓬莱柿)を使ったお酢づくりの現場を知るべく訪問させていただきました。

農家さんが手間ひまかけて育てあげたいちじくですが、どれだけ大事に取り扱っても、自然のものである以上、すべてを生食用には卸せません。

尾道造酢さんは、運んでいるうちに少し形が崩れてしまったりして、生食用で卸せなくなったいちじくをお酢の原料として使っています。

わたしが物欲しそうに見て回っているのに気づいたのか、「飲んでみますか?」と工場長(優しい...)。

蔵のなかにずらっと並んだ樽の1つに専用の取り出し口(上の写真に写っているパイプのようなもの)をつけて、いちじく酢をふるまってくださいました。

ゴクリ。飲んだ瞬間、喉元でお酢特有のツンとした刺激を感じたあとに、いちじくの香りと甘みが口のなかに広がります。フルーツ感のあるお酢で、聞くと酢の物用のお酢にもブレンドして使っているのだとか。

いちじく酢は完成してすぐに瓶詰めされるのではなく、つくってから約半年蔵で寝かします。そうすることで、より深みのある味になるのだそうです。

尾道造酢さんは、いちじくに限らずさまざまな地元の素材を使ってお酢づくりをされていますが、つくるときはできるだけ無駄が出ないように材料として使い切っていらっしゃいます。

まさにお酢づくりを通して、地域で育てたものを地域で使い切る循環をつくり出しているのです。

4. いちじくの加工者さん②JA女性部さん

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市街地よりも少し東にあるJA直売所「ええじゃん尾道」の一角に、いちじく(蓬莱柿)を贅沢につかったジャムづくりをしている作業所があります。

JA女性部さんでジャムづくりがはじまったのは何十年も前のこと。屋外での作業からスタートし、全国の作業所回りまでする熱心さで試行錯誤を重ね、いまでは専用の機械を備えた部屋でジャムづくりをしています。

近隣にある専門業者さんにいちじくを急速冷凍して運んでもらい、新鮮ないちじくを贅沢につかったジャムをつくっています。いちじくが新鮮だと、色もきれいな赤色に仕上がるのだとか。

希少ないちじくを一度に何十キロも使うジャムづくりは圧巻で、煮詰めるときも、浮かんでくる種を手作業で丁寧にすくい上げながら炊き上げていきます。瓶詰めするところまで、すべてひとの手でつくられていました。

5. まとめ

尾道でも地域によっては、いちじくは買うものではなくもらうもの。そのためか、地元でも生のいちじくをスーパーで手に入れるのはなかなか困難です。

ちなみに尾道市のふるさと納税では、毎年季節限定でいちじく(蓬莱柿)をクール便で受け取れます。また、いちじく酢やジャムであれば、インターネットや広島のJAと全農の直販所で購入することができます。

ぜひ一度、お住まいの地域で手に入るいちじくと食べ比べてみてはいかがでしょうか...?

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