シャンパングラスで日本酒を①

現代を生きるこんな女がいる。フィクションかノンフィクションかは秘密。


 他人の為に生きる毎日なんてつまらない。つまらないと思われそうな人生なんて歩みたくない。私は私の思うまま、誰にも囚われずに理想を貫いて人生を全うしたい。例えるならば、私はシャンパングラスで日本酒を飲みたいのだ。きっとこれは、普通の人生が幸せだと思っているあなたには、到底理解できない例えかもしれないけれど。

 気がつけば今年で三十五歳になる。二十代は自分でいうのもアレだが、凄く満喫したと思う。社会人になってお金と自由を手に入れて、美味しい話題のお店にもたくさん行ったし、夏は海で冬はスノーボードとありがちな遊びもたくさんしたし、年に一度、友人達と休みを合わせて海外旅行にも行った。週末は朝までカラオケやクラブに出向いたし多くの恋をしたか、していないかは、あまり覚えていないけれど、とにかく楽しかったことだけは断言出来る。
勤め先の上司がよく
「三十代はあっという間だよ。もう全然、呼吸をしているだけで過ぎて行くから、結婚をして子供を産んで幸せになるのが一番いいよ。今のうちにちゃんと良い男を捕まえておいたほうがいいよ。」と言っていた。
 あの頃の私はまだ二十代後半で、体力も精神力も自信もあり、週末となれば都心の飲み屋街へ繰り出し、商社マンや代理店営業マンと出会い、美味しいお酒を奢ってもらったり、話題のレストランへ連れて行ってもらったりと、正直そこそこモテていたほうだと思っていた。中には
「モテる女と声をかけやすい女は別物だ。前者には必ず恋人と余裕があるが、後者はあくまでも単発的な面白さとそれなりのビジュアルがあるだけ。」なんてつまらない事を言う人もいたけれど、私からしたらどちらも同じで、声をかけられない女のやっかみだと思っていた。
 どこで飲んでいても必ず男性に声をかけられるのに、それをモテないというなんて、なんて悲観的で可哀想な人間なのだろうとすら思っていた。
 それでも、心のどこかでは、その違いを理解して納得していたことも事実だ。友人の中には、恋人が途切れない子や、決して男性に媚を売ることはないのに、必ず誰かの本命になれる子もいた。その子と私との違いについては、深くは考えなかった。だってそれは、彼女にとっての幸せと私にとっての幸せは別物だし、私はワイングラスでワインを飲むなんて普通の事じゃなく、シャンパングラスで日本酒を飲むような刺激的な事がしたかったから、付き合う相手は見合う男をしっかりと選びたい。

つづく

#コラム #小説 #短編小説 #フィクション #ノンフィクション #合コン #出会い #恋愛 #アラサー #SNS #シャンパングラスで日本酒を

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?