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「一品」を変化のテコに飛躍する

3岡村 衡一郎

 大阪本社のシャックル(重量物の吊 つり具)メーカーの大洋製器工業は、愉快なイノベーションカンパニーになりつつある。社員発案で作成されたポスター(下)で、自社商品の真ん中に社長の顔があるバージョン(左)、社長がシャックルを握り社内メッセージを発するバージョン(右)とあって、トップ自らがつくったなら興ざめだが、そうではないところに活力を感じる。


 社長が掲げるメッセージ は「おもろい会社をつくろう」で、社員は自社商品を通じて世の中を明るくしようと試みる。ポスターに掲載される商品には意味がある。

 一つはお客さまの要望に耳を傾けて開発したベストセラーで、もう一つはお客さまの作業現場が勝てる現場になれるように思いをこめてつくった作業性重視の小さくても強度のあるフックだ。
ポスターには、これらのストーリーを増やしていこう、お客さまの現場の作業性向上につなげる商品を形にしていこう、という思いが込められている。

 以前は社長を面白く活用しようとする社員はいなかったし、上司の意見中心に会社が回っていた。代理店経由での納品のため積極的に現場に出向くことも少なく自社商品との距離があきつつあった。かつての自分たちのように、やんちゃする若手も減っていた。

 の状況を変えたのが、社長をはじめ6人のユニットリーダーで構成した「7人の侍」であり、変化の象徴が今回のポスターである。

 7人の侍は、自社の歴史、お客さまの支持のバロメーターである販売データーを読み込んで、商品をつくった先達の取り組みを振り返った。
そして、4万アイテムの中から、支持内容をふまえながら自分たちの発信したいことを加味した商品をいくつか抜き出した。そしてN倍に伸ばす実践を、商社的な体質からメーカーに、おもろい会社になる変化のプロセスとして実践に移した。N倍ストレッチを変化につながる前向きになる仕組みとして動かしていった。

 営業数値を上げるだけならほかの4万アイテムの中から進めればいい。しかしお客さまの使用現場に責任を持ち、分かったことを改良につなげなければ選んだ商品はN倍にならない。どうして長年支持されているのか。
現場で適切な使われ方をしているのか。もっとどんな工夫が必要なのか。
「お客さまを考える」がお題目ではなく、商品を通じた実践でみて考えて変える力を培う実践そのものなのだ。

 社長の掲げる「おもろい会社」のゴールは、「面白いことをやっている会社だ」とお客さまに言われる状態であり「お客さまの仕事へインパクトを与えることが面白い」と感じる仕事に充実感を感じる社員が増えている会社だ。

 バージョン5のポスターで打ち出される近未来のイメージに、今の彼らなら数年以内にたどり着けるだろう。

なぜなら、伸ばす過程で商品を通じ習慣が身につき深まっているからだ。

宜しくお願いします。
オカムラコウイチロウ

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