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大西羊
2021年7月8日 09:41
その日も十時四十五分に待ち合わせていた。僕が駅につくと、彼女は身体を壁にもたせかけてうつむいていた。ゆっくり近づくと彼女は顔をあげた。僕は言葉なしに、にこりとした。彼女もにこりとした。駅にはさめざめとした人の往来があった。 とくに予定はなかった。今日はどうしようか、ということになった。 いつものように僕の家でゆっくりしようか。 それともどこか特別なところへ出かけてもいい。ここは駅で、少し行