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【#21】隣の席は、邪眼を持つ女!?

平成。

それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。

主人公・半蔵はんぞうは、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?

この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。

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1993年(平成5年)4月9日【金】
半蔵はんぞう 6歳  小学校(1年生)

 

4月。

僕は小学校に入学した。

 

昨日の入学式は、先生の話を聞くだけで終わってしまった。

だが、今日は学校を探検したり給食を食べたりするらしい。

楽しみである。

 

「それでは、お隣さんと自己紹介をしてくださいね~」


 

お母さんと同じくらいの年齢の先生は、笑顔で優しそうな人だ。

 

「服部です。保育園のころのあだ名は、半蔵です」

「森本 優菜ゆうなです。よろしくね、半蔵くん」

 

僕はぺこりと頭を下げた。


 

「お友達のことを知るために、質問もしてみましょう」


 

「森本さんの好きな食べ物は何ですか?」

「ふふ。もっと自然に話そうよ」

 

キンチョウしやすい僕は、どうしても丁寧な話し方になってしまう。

 

いや、それだけではない。

 

この可児小学校かにしょうがっこうには、2つの保育園と1つの幼稚園から人が集まっていた。

だが、僕が通っていた保育園は少数で、知った顔はほとんどいない。

だから、余計にキンチョウしていたのだ。

 

「お友達のことは、下の名前で呼ぶと仲良くなれますよ」


 

知り合いの人数で不利な僕は、一刻も早く友達を作る必要があった。

 

「優菜ちゃん、友達になってください」

「え?・・・・・・うん、いいよ!よろしくね!」

 

ちょっと打ち解けた僕は、さっきから気になっていたことを聞いてみる。


 

「その、左手につけているものってなぁに?」

「これは、ギブスっていうの。小学校に入るちょっと前にケガしちゃってね・・・・・・」

 

優菜ちゃんは左腕に白い何かをつけていた。

どう見ても、飛影・・である。

 

冨樫義博『幽遊白書 完全版』
9巻p144-145

(この子、『邪王炎殺黒龍波』が使えるんだ。スゲー!)

 

「重いもの持つとき、言ってよ!手伝うから」

「ありがとう!半蔵くんってやさしいんだね」


 

もしかしたらお礼に『邪眼の力』について教えてもらえるかもしれない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

学校探検が終わると、あっという間に1時間目終了のチャイムが鳴った。

 

「半蔵、次の休み時間は長休みだな!」

【※】
 2時間目と3時間目の間の、長めの休み時間のこと。外に行って、遊ぶことができる。
 地域によっては、「20分休み」などという。

 

幸運なことに、イイケンも同じクラスだった。

幸か不幸か、天光寺も同じクラスである。

 

「20分もあるらしいぞ!何する?」

「サッカー!」

Jリーグ後述※が始まるからな!男子集めてやろうぜ!!」


『キーワードで見る!平成カルチャー30年史』p27
2019年4月14日/三栄書房



 


僕たちは他のクラスの大栄だいえい保育園の仲間にも声をかけながらグラウンドに向かう。


「ところで半蔵は、どこのチームのファンになるんだ?」

 

エっ?

歩きながら、イイケンに聞かれる。

テレビで『東京ヴェルディ』とか『清水エスパルス』とか、いろいろ聞いたが、名前の意味はよくわからない。

 

「か、考え中かな」

「オレは、名古屋グランパスだな。一番近いし」

【※】
  名古屋市や豊田市をホームとするプロサッカークラブ。正式名称は名古屋グランパスエイトである。
 岐阜県民は、岐阜にプロチームがなかったため、名古屋グランパスを応援していた。

 

ナゴヤもグランパスも意味はわからないが、「そうだね」と言っておいた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「4時間目が終わったら、給食です。最初のうちは、6年生が手伝いに来てくれますよ」

 

先生がそう説明すると、ちょうどチャイムが鳴った。

 

僕は給食当番ではない。

ドラゴンボールのナフキンを敷いて、待機する。

優菜ちゃんのナフキンは、ちびまる子ちゃんのタマネギ野郎だった。

 

「失礼します!」


 

元気な声が教室に響き渡る。

6年生だ。

 

「お手伝いしに来ました!」

 

大きい・・・・・・。

エプロンに身を包んだ、男女3人ずつの6年生だ。

テキパキと動き、手本を示しながら給食当番に、やり方を教えてくれる。

 

「大きいおかずは、ココ。小さいおかずは、ココ」


 

6年生の補助もあり、あっという間に配り終わった。

メニューは、

 

カレー
白いご飯
|チューリップの唐揚げ《※》
フルーツヨーグルト
牛乳


 だった。


【※チューリップの唐揚げ】
 手羽に切れ目を入れて骨を1本抜き、肉をひっくり返してチューリップの花のような形状にまとめ、唐揚げにしたもの。

 給食の初日は、何かと時間がかかるので“配膳しやすいもの”が献立として組まれる。
 チューリップの唐揚げは、「一人一個」なので非常に配りやすいのだ。(逆に、「野菜炒め」などは量を分配しなければならないので、時間がかかる)

 また、単純にチューリップの唐揚げは、おいしのも魅力である。(作り方は、こちらの外部サイトへ)

 

 

「手を合わせてくださいッ」

「「「はいっ」」」


 

「いただきますッ」

「「「いただきますっ」」」

 

給食中は、机を向かい合わせて座る。

緊張が解けてきた僕は、優菜ちゃんにもたくさん質問することができた。

 

 「ねぇねえ、クリキントン大統領って知ってる?」

「ふふ。クリントン大統領でしょ」

 

優菜ちゃんから質問されることもあった。

 

「半蔵くんは、家で何してるの?」

「人間生活」

 

 

 

給食を終えると、その日はもう下校だ。

 

「半蔵くん、またね」

 

優菜ちゃんにバイバイを言い、下駄箱に向かう。

 

(学校って楽しいじゃん)

保育園より大きいし、友達もいっぱいできそうだ。

 

(つづく)


解説【Jリーグが始まる!】

 
 1993年5月15日、Jリーグが開幕した。

『昭和50年男 2020 November vol.7』p10
2020年10月11日/クレタ

 

 リーグは10チームでスタート。
 記念すべき第一試合目は、ヴェルディ川崎横浜マリノス。


 プロ化以前は、読売クラブと日産自動車として対戦し、なおかつ日本代表選手を多く輩出していた両チーム。その激突は、ファンが胸を躍らせる黄金カードであった。
(この組み合わせを開幕戦に設定したのは、Jリーグ事務局の意図的なもの)



『Sports Graphic Number 845.845 追憶の90’s』p47
2013年4月4日/文藝春秋


  個人的にはヴェルディを応援していた。三浦知良ラモス瑠偉といった子どもでも知っている選手がいたからだ。ちなみに、この時の監督は松木安太郎である。

 試合もスリリングな展開で見ごたえのあるものだった。
 前半19分にヴェルディが先制するも、48分にマリノスが追いつく。59分にはマリノスが逆転し、2対1で勝利を収める。

『昭和50年男 2020 May vol.4』p67
2020年4月11日/クレタ





 得点は、すべて外国人選手によるものだった。

   会場は国立競技場で、観客数は59626人。視聴率32.4%を記録。



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見出し画像『幽遊白書 完全版』(冨樫義博)5巻p84です。

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