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大学生「カップラーメンは、“残り汁”に白ゴハンを入れてからが本番です」

 それにしても腹が減った。

 大学入学のため、岐阜から富山に引越した。
 念願の一人暮らしを始め、2日目である。
 明日の入学式の準備をしていたら、いつの間にか昼過ぎになっていた。
 だから、腹が減っていたのだ。


 実家と違い、食事は自分で準備しなければならない。
 フルオートで料理を出してくれるカーチャンのありがたみを、初めて実感した。
 僕自身は、野菜炒めくらいしか作れない。
 さらに、冷蔵庫はほとんどカラだった。


「こういうときは、カップラーメンだッ」


 カップラーメンは、5,6個ストックしてある。
 今回セレクトしたのは、「1.5倍」のアレ。
 図体が大きく、非常に頼もしい。
 お気に入りの醤油味で、真っ向勝負だ。


 パッケージを開けるときからニタニタしてしまう。
 ただ、はさみを使って開けるのは邪道。
 容器全体を覆う透明のフィルムに指を押し付け、ズラすように力を入れる。
 「ぱりっ」と音を出してフィルムは破れる

 フタを開けると、麺の上に、スープやトッピングの袋が乗っている。
 最近は、カップラーメンからの注文が多い。


「お湯を注いだあとフタの上に置き、温めてください」
「必ず召し上がる直前にお入れください」


 といった具合で、細かいのだ。
 きっと作り手のアツイい思いが込められているので指示どおりにする。


 湯を入れるときは、細心の注意が必要である。
 スープの濃さに関わってくるからだ。



 電気ポットの「給湯」ボタンを押すのだが、一気に入れようとすると「ここまで湯を入れるんだぜ」の線を越えてしまうことがある。
 僕は濃いめが好きなので、序盤は「ダバ~~」と一気に湯を注ぎ、終盤は「チョロチョロ」とボタンちょい押しで調整する。


 出来上がりを待つ間に、コップに水を入れたり、箸を準備したりする。


 3分たったら、フタをベリリっと全部はがす。
 いつもどおり、フタには水滴がたくさんついていた。
 残りの調味料を入れ、ゴミは、はがしたフタの上に置く。
 かき混ぜたら、完成だ。

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 まずはスープからいただこう。
 大きめのカップを両手で持ち上げる。
 カップが口につく寸前のところで、醤油の香ばしいかおりが鼻孔から抜けていく。
 そのかおりを堪能しながらスープをずずずっと飲む。


 注文通りの醤油味だ。


 スープ表面には、大小のアブラが浮いている。
 コンタクトレンズのようで、芸術作品のようだ。



 具は、ネギ、コーン、チャーシュー、以上。
 シンプルなのがいい。
 意図していないのに、彼らは中央に集まっていた。



 まずは具より麺を味わいたい。
 具をどかし、麺のカタマリを箸で持ち上げる。
 重量をずしりと感じるほど、麺が箸に絡みついていた。



 一気にすすり、口の中が満たされたら噛み切る。
 口中は麺であふれている。幸福な状況だ。


 まだ麺が口に含まれている状態でスープをすする。
 麺がスープにより再び味つけされる。至福な状況だ。


 麺の賞味が落ち着いたら、よけていたチャーシューを箸でつまんだ。
 布みたいに薄いが、店で食べるラーメンのチャーシューと比較するのはナンセンス。
 これは別物であり、違ったうまさがある。

 麺量は多いはずだが、2分で食べきってしまった。
 もっと食べたい。


 だからカップを炊飯器のそばまで持っていき、しゃもじですくった白いご飯を残ったスープに入れる。
 しゃもじの上では塊だったご飯は、スープの中で解放され散り散りになる。
 純白の米粒は茶色の醤油スープをまとい、一粒一粒が強化される。


 これをスプーンですくって食べると、いくらでも入る。
 スープがなくなるまで、ご飯をおかわりし続けた。

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