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小説 すずめの戸締まり

新海誠 2022年

・あらすじ
九州の静かな港町で叔母と暮らす17歳の少女・鈴芽。ある日の登校中、美しい青年とすれ違った鈴芽は、「扉を探しているんだ」という彼を追って山中の廃墟へと辿りつく。しかしそこにあったのは、崩壊から取り残されたようにぽつんと佇む古ぼけた白い扉だけ。何かに引き寄せられるように、鈴芽はその扉に手を伸ばすが……。過去と現在と未来を繋ぐ、鈴芽の”戸締まり”の物語が始まる。新海誠監督が自ら執筆した原作小説。(後ろのあらすじより引用)

・感想
先日、「君の名は」を読んでから、最新作を読みたいと思っていました。また、映画も今公開されているので見たいと思っていました。12月に入り、テストが終わって休みになり、時間がたっぷりできたので。映画を友達と一緒に見ようという話になりました。そして、その少し前、本屋に行ったとき、文庫版も売っていたので購入。映画を見た後に読むことにしました。

フィクションの話なのに、絵も物凄く綺麗で、話の内容もリアリティーのある話だったので、現実の世界と錯覚してしまうほどでした。

新海監督の作品は、災害を題材にした作品が多いイメージでした。「君の名は」は彗星、「天気の子」は大雨などの異常気象。そして今作は、地震です。映画を見た後に、調べたのですがこれらの作品には11年前の東日本大震災を経験して、あの日以来、新海監督自身にずっと残り続けてきた想いが反映されているそうです。この映画を見る時まで、そういった想いがあることを一切知らなかったので、とても驚きましたし、そして強く共感しました。

災害は何の前触れもなく急に発生し、大切な人や物を一瞬にして奪います。この作品では、震災で母を亡くした女子高生が描かれていますが、その時にどこにいたかというので、明暗を分けることになってしまいました。それによって、彼女はしばらくの間、独り身になり、その先の人生にまで影響が及んでいます。自分の身にも、これから降りかかるかもしれない。大切な人や物を失うことは、自分の半身を失うのと同じこと(もしかしたら、それ以上かもしれない。)と感じました。普段、何気なく当たり前に過ごせていることは、奇跡で、ものすごくありがたいことではないかと考える作品でした。

3.11当時、私は5歳でした。あの時の記憶はもう薄ぼんやりとしたものになってしまっています。しかし、世の中には故郷を失い、大切な人を失い、苦しみや悲しみを、今もずっと引きずっている人が多くいるという事実を忘れてはならないことだと強く感じました。

・書籍情報
この作品は2022年8月25日、角川文庫より刊行されました。

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