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そのサッカーを疑え!

スポーツライター杉山茂樹が月4回程度発行する有料記事
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#サッカー

相手ボールに30年以上前から4-4-2で対峙した欧州と「そこ」にいることの意義さえ語られなかった日本

相手ボールに30年以上前から4-4-2で対峙した欧州と「そこ」にいることの意義さえ語られなかった日本

 サッカーで主役と言えば誰を指すだろうか。選手か監督か。たまたサポーターか。両GKが美技を連発すれば、その存在感はいやが上にも高まる。主審もVAR時代を迎えた現在では主役に見える時がある。しかしフアン・マヌエル・リージョはインタビューした際に、上記には存在しない要素を口にした。

 ボール。ゲームの中心にいるのはボールで、サッカーはそのボールに対して反応するゲームだ、と。サッカーにはマイボールと相

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森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

「前からプレスを掛けに行けば後ろにスペースは生まれるわけですから……」。「理に適った現実的な作戦だと思います」と、テレビ解説者は、5バックで守りを固める戦法を否定するどころかむしろ肯定する。森保一監督の表現を借りれば「臨機応変」、「賢く、したたかな戦い方」となるが、日本人の指導者の間ではどうやらこの森保的な思考法がスタンダードとして浸透しているようである。

 たとえば、つい2〜3シーズン前まで1

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人材流出著しいJリーグが目指すべき道は。サッカーはある条件が整えば低レベルでも面白い

人材流出著しいJリーグが目指すべき道は。サッカーはある条件が整えば低レベルでも面白い

 天皇杯決勝。今季のJ1リーグ9位チーム(川崎)対17位(柏)チームの対戦と聞けば、心はあまり踊らない。トーナメントの頂上決戦には好カードを期待する。理想は1位対2位。せいぜい5位以内同士の戦いであってほしいと考える。だが11月に行われたルヴァンカップ決勝も7位(福岡)と9位(川崎)の対戦となったように、それこそが国内のカップ戦“あるある”なのだ。

 決勝進出を果たした下位チームのサポーターにと

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日本によいサッカースタジアムが必要な理由。ピッチに描かれるデザインを見逃すな

日本によいサッカースタジアムが必要な理由。ピッチに描かれるデザインを見逃すな

 アウェー戦をテレビ観戦できなかったシリア戦。これがもしラグビーだったら、ここまでの騒ぎになっていただろうか。ラグビーは番狂わせの少ない、実力差がスコアに直結しやすいスポーツだ。ラグビーの日本代表がサッカーで言うシリアレベルの国に敗れる心配はないだろう。その心配が少なからずあるのがサッカーだ。運が試合結果に及ぼす影響は3割。弱者を相手にした場合でも、観戦にはそれなりのドキドキ感がつきまとう。

 

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絶対に負けそうもない“無風区”を戦う日本代表と森保監督に求められる姿勢

絶対に負けそうもない“無風区”を戦う日本代表と森保監督に求められる姿勢

 2026年W杯までたっぷり2年半あるというのに、日本代表は半ば完成された状態にある。1トップを任すことができる選手が現れれば、いつでもW杯本大会に臨める状態にある。

 選手はザクザクいる。日本サッカー史上、選手層は最も厚い。一方で来年1月に開催されるアジアカップは、ベンチ入りのメンバーがコロナ禍以前の23人に戻るので、選考は難航しそうである。

 最悪でもベスト4は行けるとされる中、どんなメン

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サッカーのデータに決定的に不足する2つの要素。半世紀も前から研究されている事象はなぜ表に出ないのか

サッカーのデータに決定的に不足する2つの要素。半世紀も前から研究されている事象はなぜ表に出ないのか

 サッカーは主観のスポーツである。選手の善し悪しを示す確かな個人データは得点数ぐらいだ。監督が変われば確実にスタメンは変わる。その産物として他の競技より選手の移籍、監督交代が多く発生する。

 とはいえデータの総量は増えている。ボール支配率、選手の走行距離、図入りで示される布陣などは2002年日韓共催W杯前後から徐々に浸透。パスの数とその成功率、ロングボールの頻度やクロスの数、実際のフォーメーショ

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感覚的なスポーツであるサッカーと難解な日本語の親和性

感覚的なスポーツであるサッカーと難解な日本語の親和性

 日本語は難しさにおいて、世界でも指折りの言語として知られる。音読みと訓読みがあることの厄介さに加え、語彙の多さも習得が難しい要因だとされる。一方、サッカーはデータの類が決定的に少ない感覚的なスポーツだ。指導者に問われているのは伝える力で、高い表現力が不可欠になる。言葉はおのずと重要なウエイトを占めることになる。

 サッカーと難解な日本語と相性がいいと考えるのが自然だ。外国人の指導者より日本の指

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サッカーにおける守備とは。久保建英に見てみたい守備をしないという選択

サッカーにおける守備とは。久保建英に見てみたい守備をしないという選択

 先のパラグアイ戦後、森保監督はかなり回りくどい言い回しで、久保建英の守備について不満を口にした。

 そんなに言いたくないのなら口にしなければいいのにと思ったが、言いにくいことをあえて口にしたために、スムーズに話せなかったと解釈することもできる。どうしても言っておきたかったことだったのかもしれない。

 この試合、久保は後半の頭から堂安律に代わり4-2-3-1の3の右で途中出場した。このポジショ

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